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BRICS &Global South News 
新たな勢力、主権の平等、そして西欧の強要:BRICSカザン宣言の内容とは、この文書は、グローバル・ガバナンス、経済発展、国際協力に関するグループのビジョンを概説している
New centers of power, sovereign equality and Western coercion: What’s. in the BRICS Kazan Declaration. The document outlines the group’s vision for global governance, economic development, and international cooperation
RT
War on Ukraine #6143 24 October 2024

英語訳・池田こみち(環境総合研究所顧問)
E-wave Tokyo 2024年10月24日


ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2024年10月23日にロシアのカザンで
開催されたBRICS首脳の拡大会議で演説。 © Getty Images / Sergey Bobylev

本文

 
BRICS諸国は水曜日、ロシアのカザン市で開催された3日間のサミットの期間中に共同声明を承認した。この文書は、複数の世界的な危機と課題を取り上げ、より公平で公正な国際秩序を求めている。


1.新たな権力の中枢

 グループは、すべての国が国際問題について平等に発言できる多極的世界秩序の推進に対するコミットメントを再確認した。これは、宣言が国際機関における新興国および開発途上国の代表権拡大を求めていることにも反映されている。

 「我々は、より公平で公正、民主的、かつバランスの取れた多極的世界秩序への道筋となる、新たな権力、政策決定、経済成長の中心の出現に注目する」と文書には記載されており、そのようなシステムは、現在の欧米主導の国際秩序よりも発展途上国にとって有益であると付け加えている。

 BRICS諸国は、アフリカ連合や上海協力機構(SCO)などの地域組織の拡大する影響力を歓迎した。これらの組織は、加盟国間の経済協力、安全保障、文化交流を促進するための重要な基盤と見なされている。宣言ではまた、貿易紛争を解決するための世界貿易機関(WTO)の強化と、グローバル・サウス(発展途上国)の代表権拡大を目的とした国連安全保障理事会の拡大も呼びかけられた。


2.主権的平等と新たなBRICSパートナー

 グループは、すべての国は自国の発展の道を追求し、他国の干渉を受けずに内
政に関する決定を行う権利を有していることを強調した。

 「我々は、相互尊重と理解、主権的平等、連帯、民主主義、開放性、包括性、協力、合意というBRICS精神へのコミットメントを再確認する」と、グループは記した。

 グループは、南半球の諸国が、参加はしないまでも、このブロックと協力することに「大きな関心」を示していることを指摘し、BRICSパートナー国のカテゴリーを新設することを承認した。

 「我々は、BRICSのパートナーシップを新興市場および発展途上国であるEMDC諸国に拡大することが、連帯の精神と真の国際協力の強化にさらに貢献し、すべての人々の利益につながるものと強く信じている」と声明は述べている。

 現在のBRICSメンバーは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、エチオピア、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦である。サウジアラビアは、まだ加盟招待を批准していない。経済ブロックへの参加に関心を示している国は30カ国近くあり、モスクワは潜在的な拡大のためにはBRICSパートナーカテゴリーの設立が最善の選択肢であると考えている。

3.西側諸国の強圧的な措置に反対

 宣言では、あらゆる制裁および一方的で強圧的な措置は国際法に適合しないとして非難し、それらが人権に及ぼす広範囲にわたる影響を強調している。

 宣言では、「我々は、違法な制裁措置を含む、不法な一方的な強圧的な措置が世界経済、国際貿易、持続可能な開発目標の達成に及ぼす破壊的な影響について深く懸念している」と述べ、経済制裁が標的とされた国の貧困層や弱者に不均衡な影響を与えることを指摘している。

 また、同グループは「気候や環境への懸念を口実とした一方的な措置」を非難し、「意図的にグローバルな供給網や生産網を混乱させ、競争を歪める一方的な保護主義的措置」に反対している。

 「世界最大の天然資源生産国であるBRICSメンバーの役割を認識し、我々はバリューチェーン※全体にわたるBRICSメンバー間の協力強化の重要性を強調し、一方的な保護主義的措置に反対する共同行動を取ることに合意する」と宣言した。

※注)Value Chain 価値連鎖
 企業の様々な活動が最終的な付加価値にどのように貢献しているのか、その量的・質的な関係を示すツール。1985年にハーバード・ビジネススクール教授のマイケル・E・ポーターが著書『競争優位の戦略』の中で提唱したフレームワークです。企業の様々な活動が最終的な付加価値にどのように貢献しているのか、その量的・質的な関係を鳥瞰するのに便利なツールです。(野村総合研究所用語解説より)


4.現地通貨による非差別的な貿易

 「我々は、貿易障壁の最小化と非差別的なアクセスを確保することを前提とした、より迅速で低コスト、より効率的で透明性が高く、安全で包括的な国際送金手段がもたらす広範な利益を認識する」と文書には記載されている。これは、ウクライナ紛争後にロシアが欧米のSWIFT決済システムから排除されたことを指している可能性が高い。

 「我々は、BRICS諸国とその貿易相手国間の金融取引における現地通貨の利用を歓迎する」と続き、BRICSクロスボーダー決済イニシアティブの設立を呼びかけている。この文書では、BRICS新開発銀行による現地通貨建ての融資プロジェクトや、「一流の多国間開発機関」への成長も支持している。

 火曜日のサミットでの演説で、ロシアのプーチン大統領は、ドルやユーロではなく現地通貨を使用することは「今日の国際社会において、経済発展を可能な限り政治から自由な状態に保つのに役立つ」と述べた。


5.中東

 BRICS宣言では、外交、調停、包括的な対話を通じて世界的な安全保障を推進することの重要性を強調している。「すべての国の正当かつ妥当な安全保障上の懸念を尊重する必要性」を認めながらも、グループは「根本的原因への取り組みを含め、紛争防止の努力を行う必要性」を強調した。

 「私たちは、占領パレスチナ地域における状況の悪化と人道危機、特にイスラエル軍の攻撃作戦の結果としてガザ地区とヨルダン川西岸地区で発生している前例のない暴力の激化について、重大な懸念を改めて表明する」と宣言文には記されている。この宣言文では、イスラエルの作戦が「民間人の大量殺傷、強制退去、民間インフラの広範囲にわたる破壊につながっている」ことも指摘されている。

 ハマスに対しては、イスラエル人質を直ちに解放するよう、またイスラエルに対しては、軍事作戦を直ちに中止し、ガザ地区から撤退するよう呼びかけている。また、イスラエルのレバノン空爆と地上侵攻も非難し、9月にイスラエルがヒズボラの通信機器数千台を破壊したことは「テロ攻撃」であると述べている。

 この文書では、シリアにおける「違法な外国軍の駐留」を非難しており、これはシリア政府の意向に反して同国に駐留している約800名の米軍兵士を指している。また、シリアの首都にあるイラン領事館をイスラエルが空爆し、イランのモハンマド・レザ・ザーヘディ准将を含むイラン軍高官8名が死亡した事件についても非難している。


6.ウクライナ

 BRICS諸国は、ロシアとウクライナの紛争に関して中立の立場をとる政策を採用しているため、宣言ではどちらかの側を支持する立場をとることはなかった。その代わり、「すべての国家は国連憲章の目的と原則に一致した行動をとるべきである」と強調し、「対話と外交による紛争の平和的解決を目的とした調停と仲介に関する関連提案」を認めた。

 この文言は、先月ブラジル、中国、および「平和の友」グループの12カ国以上のメンバーが発表した宣言と類似しており、その宣言では紛争の「包括的かつ恒久的な解決」を求めていた。しかし、キエフはロシアに賠償金を支払わせ、ウクライナの1991年の国境を回復させ、戦争犯罪裁判にかけるためにその役人を引き渡すことを要求する、自国の平和提案以外のすべての提案を拒否している。この要求は、モスクワによって妄想として退けられている。

 クレムリン報道官のドミトリー・ペスコフ氏によると、カザン・サミット宣言ではウクライナ危機にはほとんど言及されなかった。それは、この経済ブロックにとって中心的な問題ではないからだ。「確かに、これはロシアの議題としては重要な問題だが、BRICSにとっては中心的な問題とは程遠いものだ。そして、それはBRICSの議題として想定される通りの反映のされ方だった。」とペスコフ氏は述べた。


本稿終了