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民主主義は「暗闇の中で

死ぬ」のではなく、現在EU

で死につつある

EUとその衛星国における最近の選挙では
非体制派候補者に
対する積極的な「排除/無視」が見られた

Democracy does not ‘die in darkness,’ it is dying in the EU right now
Recent elections inside the bloc and its satellite states have shown a
vigorous ‘othering’ of non-establishment candidate

RT War in Ukraine #7225 4 March 2025 

英語翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問)
独立系メディア E-wave Tokyo 2025年3月9日

2025年2月26日、ルーマニアのブカレストで交通違反により呼び止められ、尋問のため連行された後、検察庁にいるカリン・ジョルジェスク。© Alex Nicodim / NurPhoto via Getty Images

2025年3月4日 16:01

筆者:ドイツ出身でイスタンブールのコチ大学で教鞭をとる歴史学
   タリク・シリル・アマール氏による寄稿。ロシア、ウクライナ、東
   ヨーロッパ、第二次世界大戦の歴史、文化的な冷戦、記憶の
   政治について寄稿している。


本文

 クイズの時間です:ドイツ、モルドバ、ルーマニア(アルファベット順)に共通することは何でしょう? これらはまったく異なる国に見えますよね?

 ドイツは伝統的で、大国であり、現時点ではまだ比較的裕福な国(ウクライナの栄光のために従順に自己モルゲンタウ(モーゲンソー)化しているため、その裕福さは徐々に失われつつあるが)であり、冷戦時代の「西側」(「再統一」があるかどうかは別として)の一員である。現在、人口は8,300万人を超え、GDPは4兆5,300億ドルに相当する。ルーマニアは、人口1900万人強、GDPはドイツの10分の1以下(3438億ドル)の旧ソ連衛星国である。モルドバは、旧ソ連共和国から独立した国の中で最も小さな国で、人口240万人、GDPは165億ドルだ。

 しかし、よく見てみると、それほど違いがあるわけではない。ドイツとルーマニアはEUとNATOに加盟しており、モルドバの場合は、憲法で定められた中立性を事実上破っているにもかかわらず、EUとNATOにとって重要な戦略的資産となっている。また、3カ国とも公正でクリーンな選挙を行う上で深刻な問題を抱えている。何という偶然だろうか。いや、偶然ではない。

 それぞれのケースを簡単に見てみよう。ドイツの最近の連邦議会選挙では、サラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW:連邦民主・社会主義政党)は、国会で代表権を得るための最低ラインである5%の得票率に、僅差で届かなかった。同党の得票率は公式には4.972%だった。絶対数で言えば、246万9000人近いドイツ人がBSWに投票した(いわゆる決定的な「第2票」)。わずか0.028%、つまり約1万3000票から1万4000票多く投票されていれば、この政党は5%の壁を越えられたはずである。

 もちろん、極めて僅差の結果も現実であり、正当である可能性がある。ドイツで問題となっているのは、選挙が深刻な欠陥と繰り返されるエラーによって損なわれたという証拠が着実に積み重なっていることなのだ。さらに事態を深刻にしているのは、エラーがランダムに発生しているのではなく、主にBSWの有権者に集中しているという明確なパターンがあるように見えるという事実である。

 2月23日の選挙からまだ1週間も経っていないが、すでに二つの重要な問題が明らかになっている。まず、ドイツには約23万人の在外有権者がいるが、その多くが投票に必要な書類が届くのが遅すぎたため、時には選挙後になってから書類が届くこともあり、投票できなかった。もちろん、もし投票の機会があったとしても、これらの有権者が実際にどのように投票したかはわからない。しかし、それは問題ではない。投票に参加できなかったという事実だけで、結果の正当性に深刻な疑いが生ずる。特に、追加の票がほんのわずかでも、結果を根本的に変えるのに十分であり、つまり、次の議会で数十議席を確保できる可能性がある場合、BSWの場合は特にそうだ。

 さらに憂慮すべき二つ目の問題は、ドイツ国内で実際にBSWの票が他の政党に割り当てられたという証拠がますます増えていることだ。例えば、主要都市アーヘンの場合、BSWの得票率は7.24%であったにもかかわらず、「ドイツのための連合」(Bündnis für Deutschland)という全く異なる政党(そもそも議会に議席を持つ可能性のない、はるかに小さな政党)に記録されていた。BSWの得票は誤って0%と記録された。地元のBSW有権者による抗議によって、このスキャンダルが明るみに出た。

 ドイツの主流メディアは、アーヘンで起こったことを例外として描こうとしている。しかし、現在までにドイツ全土から同様の「エラー」の報告が寄せられている。そして、このようなケースを探すプロセスはまだ始まったばかりであることを忘れてはならない。要するに、BSWにとって、正しい選挙手続きと誤った選挙手続きの違いは、実際には議会に所属するかしないかの違いに等しいと信じる十分な理由があり、それは日に日に良くなってきている。もちろん、それはBSWに投票したすべての市民が、法律で定められた適切な民主的代表権を奪われた可能性があることを意味する。

 不正行為の動機はあるのか?もちろんある。左派社会主義と右派文化・移民政策を組み合わせた新興政党であるBSWは、ウクライナの平和を要求しているため、ロシアに友好的すぎると非難されてきた。また、ドイツに新たな米国のミサイル基地を置くことや、イスラエルの犯罪にも反対を表明している。

 現在のドイツでは、これらはすべて、少なくともダーティなメディアの策略によるネオ・マッカーシズム的な中傷キャンペーンや弾圧の理由となり得る。そして、すでにそうした事態は起こっている。意図的な地元の「ミス」の波が、その厄介なツールボックスに加えられた可能性は十分にある。そして、少し異なる問題として、BSWの法的権利を今主張することは特に困難である。特に、議会に同党を加えるための選挙結果の修正は、連立政権樹立の複雑な計算を直ちに混乱させることになるからだ。BSWとその有権者は、要するに、騙された可能性が高い。そして、彼らが救済を求める場合には、再び騙される可能性もある。

 ドイツの選挙における問題のひとつが海外在住の有権者に関係しているという事実は、もちろんモルドバという国を想起させる。昨年11月、マイア・サンドゥ氏は国外での投票を大規模に不正操作した大統領選挙で辛うじて勝利した。要するに、彼女に反対票を投じる可能性が高い在外モルドバ人、特にロシア在住のモルドバ人は、事実上、投票できないようにされて選挙権を奪われた。彼女に賛成票を投じる可能性が高い西欧在住のモルドバ人は、そのような問題に直面することはなかった。

 この卑劣な策略が決め手となった。この策略がなければサンドゥは敗北し、左派のライバル候補アレクサンドル・ストヤノグロが勝利していたであろう。サンドゥ候補を支持した西側諸国では、もちろん、この結果は「民主主義」の勝利、EU支持の選択、そして「ロシアの干渉」の敗北として歓迎された。いつものことだが、どちらが衝撃的なのか決めるのは難しい。オーウェル流の現実の逆転か、それとも西側がロシアという大きな悪党を操っているというフロイト流の投影か。

 いずれにしても、この投影はルーマニアでも行われている。実際、現時点では、ルーマニアの不正選挙疑惑は最も悪質なものである。昨年11月に始まった長い物語の要点は単純だ。反体制派の新顔であるカリン・ジョルジェスク氏が大統領選挙で勝利する可能性が高い。しかし、彼は極右のポピュリストとして非難されており、そして-ドラムロールか※-何らかの形でロシアと共謀していると非難されている。

※注)トラムロール;敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはか   りごと。 また、苦しまぎれに考え出した手立て。 苦肉の謀はかりごと。

 その結果は驚くようなものではなかったが、事態が極端に悪化したかについてはまた別である。まず、ジョルジェスク氏が当選目前になった選挙で、憲法裁判所がその権限を乱用して選挙全体を無効にした。その口実は、ルーマニアの治安当局がでっちあげた偽の証拠書類であったが、今では欧米の主流メディアでさえ、その証拠書類がとんでもなく粗雑なものであることを認めている。

 予想通り、投票権に対するこの露骨な攻撃により、世論調査によると、ルーマニア国民のジョルジェスク氏への支持はむしろ強まり、弱まることはなかった。次回の選挙は5月に予定されており、ジョルジェスク氏が依然として有力候補であるため、当局はさらに無骨な弾圧を加えた。今度は、ジョルジェスク氏は、立候補の意志を新たにしたものの、登録に向かう途中で一時的に劇的に拘束され、その後、6つの重大な犯罪容疑をかけられた。ソーシャルメディアへのアクセスは制限され、彼のチームや仲間は捜索や告発を受け、もちろんメディアからの攻撃も受けている。選挙に立候補する権利を剥奪される可能性もある。

 ジョルジェスク氏の支持者たちは大規模なデモを実施しており、同氏自身もワシントンのトランプ政権にルーマニアの「ディープ・ステート(深層国家)」との闘いにおける支援を求めている。トランプ大統領の実質的な右腕であるテクノロジー界の大物イーロン・マスク氏は、自身のXプラットフォームを利用してジョルジェスク氏への支持を表明した。そして、つい最近、J.D.ヴァンス米副大統領は、ジョルジェスク氏に対する最初の攻撃について欧州側に警告を発した。

 しかし、NATO戦略におけるルーマニアの重要な役割は、NATO懐疑論者で主権主義者のジョルジェスクが、ルーマニアの主流エリート層だけでなく、舞台裏でEUを依然として運営している人々にとっても、これほど大きな問題に直面した主な理由であることは間違いない。ワシントンが現在、ロシアと欧州のNATO加盟国に対するアプローチを見直している中、ジョルジェスクの運命は、今世紀最大の地政学的変化の1つにかかっている可能性がある。そして、その変化は彼にとって有利に働くかもしれない。

 モルドバにおけるマイア・サンドゥの不正な勝利は覆らない。BSWが救済措置を見出すチャンスは十分にあるはずだが、残念ながら現実はそうではない。しかし、ジョルジェスクの運は再び好転するかもしれない。すでに彼は選挙で圧倒的な支持を得ている。彼に対する汚い手口がエスカレートしているため、さらに多くの支持を得る可能性もある。また、米国が事実上、彼の味方である。

 いずれにしても確かなことは、単純なひとつの事実である。「庭(のどかな庭園/お花畑的な)」の西側諸国は、「価値」や「ルール」について延々と語っているが、実際には真の選挙など信じていない。代わりに、地政学が優勢なのである。そして悲劇的なことに、その地政学は横暴であるばかりか愚かでもある。ロシア(そしてもちろん中国、必要であればトランプ主義の米国も)との戦いに執着し、外交そのものを拒絶するこの西側諸国は、自らが抱えるわずかな民主主義さえも犠牲にして、自らの没落につながるであろう誇大妄想に身をゆだねる覚悟ができている。

本コラムで表明された声明、見解、意見は、著者の個人的な見解であり、必ずしもRTの意見を反映しているものではありません。


本稿終了