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セルゲイ・カラガノフ:

ロシアはトランプ氏の

「甘い罠」に

引っかかってはならない


西欧は「ピグミー」に導かれているかもしれないが、
アメリカ人はより賢い政治家である、と政治学者は考えている

Sergey Karaganov: Russia must not fall into Trump’s ‘honey trap’Western Europe might be led by ‘pygmies,’ but the Americans are smarter operators, the political scientist believes

RT War in Ukraine #7245 10 March 2025 

英語翻訳:池田こみち(環境総合研究所顧問)
独立系メディア E-wave Tokyo 2025年3月12日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がHSE大学世界経済・国際関係学部学部
長セルゲイ・カラガノフ氏と対談 © Sputnik / Sputnik2

2025年3月11日 20:41

本文

 ワシントンが核兵器削減の話題を再燃させている中、著名なロシア人政治学者で元クレムリン顧問のセルゲイ・カラガノフ氏は、この考えはアメリカの軍事的優位を維持しながらロシアを弱体化させるための戦略的な欺瞞であると一蹴している。モスクワの新聞『MK』のインタビューで、カラガノフ氏は、核抑止力が依然としてロシアにとって戦争に対する最善の保証であると主張し、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領の過ちを繰り返さないよう警告し、フランス大統領エマニュエル・マクロンの西欧の「核の傘」構想を嘲笑した。また、ロシアの核態勢がすでに米国の戦略転換を迫り、米国がウクライナに対する以前の強硬姿勢から静かに撤退するよう圧力をかけていることについても概説している。

 以下、カラガノフ氏が、なぜロシアは非核化を拒否すべきだと考えるのか、核兵器が究極の平等化装置であり続ける理由、そして西欧の指導者たちが現実を直視する必要がある理由について説明する。

MK:核兵器を削減するのであれば、米国の軍事戦略上、敵対国とみなされているロシアと中国だけでなく、「核保有国」のすべての国が削減すべきではないでしょうか?

セルゲイ・カラガノフ: 私は何十年も前から、アメリカの戦略家や専門家からこうした提案を耳にしてきたが、それは失笑を買うような提案だった。科学、技術、経済、軍事のあらゆる面で優位に立ち、特に海軍を中心とした強力な多目的軍事力を持ち、宇宙システムでも優位にあるアメリカが、核兵器の削減に関心を持っている。なぜなら、核兵器は他のすべての軍事分野への巨額の投資を最終的に無意味なものとし、経済面や科学技術面での優位性を相殺するからだ。また、人口面でも米国は優位にある。米国は、3ヵ国間、さらには多国間交渉に私たちを引きずり込むことで、友好的な中国との関係に亀裂を入れようとしている。

 しかし、わが国の多くの人々も、核兵器は少ないに越したことはないと考えている。これは、アメリカの戦略的思考の論理から来ている。確かに、核兵器に余剰がある必要はない。しかし、ロシアとその同盟国に対して戦争を仕掛けることなど、誰も考えないようにする、つまり、大規模な戦争を回避するのに十分な数の核兵器は必要だ。

 歴史のある時点で、私たちは核抑止力の多くの機能を忘れてしまった。核抑止力は、核攻撃を防ぐだけでなく、あらゆる戦争を防ぐために存在する。

 それは、あらゆる敵対者の人口統計学的、経済的、軍事技術的な優位性をすべて相殺する。

 私たちは、武力紛争の初期段階で核抑止力を行使しなかったことで、ウクライナで起きたような事態を招いた。

 しかし、有能な専門家集団の介入のおかげで、核抑止能力を復活させ、ドクトリンを変更し、十分とは言えないまでも、いわゆる核抑止のエスカレーションの(激化させる)の階段を登り始めたのだ。


MK:核ドクトリンの変更の背景には何があるのか?

セルゲイ・カラガノフ:昨年の夏のはじめ、核抑止力への依存を高める必要があるという議論があり、その後、私たちは核ドクトリンを変更し、核抑止力のエスカレーションの段階を数段階引き上げた。これにより、敵対国は、私たちが核兵器を使用する意思があることを確信した。戦争の継続は、アメリカ人に対して、経済的およびその他の優位性を活用できない結果をもたらすという脅威をもたらし始めた。

 彼らは不名誉な敗北か、同盟国や海外基地への核攻撃のどちらかに直面することになる。

 当初、彼らは「ロシアは核兵器を使用することはないだろう」と考えていたため、ウクライナ人が最後の一人となるまで、そしてロシアが疲弊するまで戦争を続けることができる、と言っていた。その後、ロシアからのシグナルを受け取った後、彼らはそのことについて話すのをやめ、第三次世界大戦を回避する必要性、エスカレーションを止める必要性を話し始めた。これは、米国のバイデン政権末期のことだったが、結局は戦争の継続を押し付け、その責任を次の政権に転嫁しようとした。我々もトランプもその罠には引っかからなかった。彼はただ、負け戦から抜け出すためにバトンを引き継いだだけだ。

 核抑止メカニズムをもっと早くに起動させていれば、もっと早くに勝利を収めることができたのに、残念だ。


MK:つまり、状況はバイデン氏の下で変化したということか?

セルゲイ・カラガノフ:そうだ、彼らは戦争に勝てないことを理解した。私たちは経済的・軍事技術的な潜在能力を回復しつつあるが、人口動態的にも経済的にも依然として深刻な後れを取っている。だからこそ、私たちは核抑止力を強調してきたのだ。核抑止力は、戦争を未然に防ぎ、起こりにくくし、侵略者にとってそのコストを法外なものにするはずである。

 例えば、現在広く開発が進められている生物兵器、宇宙兵器、あるいは長距離ミサイルや無人機など、特定の種類の兵器の制限について話し合うことは可能だ。これらは、ますます通常の人間の生活を脅かすことになるだろう。ミサイルや無人機を可能にした科学技術革命は、人々を大きな危険にさらすことになった。また、これらはテロリストによっても使用される可能性がある。

 しかし、核兵器はどのような状況下でも削減することはできない。アメリカ的なイデオロギーの枠組みの中で育ち、あらゆる軍縮を支持する人々も数多くおり、彼らはトランプの言葉を額面通りに受け取るだろう。しかし、それは欺瞞であり、ハニートラップなのだ。愚かなミハイル・ゴルバチョフ(ソ連の指導者)に対して、レーガンが仕掛けた罠を繰り返そうとしているのだ。個人的には良い人だったが。そして、アメリカの敵対者たち、そして将来的にはパートナーとなることを願っている人々が、彼らの提案に肯定的な反応はないということを理解してくれることを願っている。


MK:ヨーロッパ人は核戦争を恐れているのか?

セルゲイ・カラガノフ:1960年代初頭以降の比較的平和な時代(局地的な周辺紛争はあったものの)の不幸な結果のひとつは、核戦争に対する恐怖の喪失である。 アメリカはつい最近まで、核は恐ろしいものではないと宣伝していた。西ヨーロッパでは、「(核保有国の)核への寄生」、つまり戦争に対する実存的な恐怖の欠如が最も深く根付いている。

 西ヨーロッパをできるだけ遠くに、できるだけ速く追い払うために、核抑止力を使う必要がある。あるいは、彼らを完全に打ち負かすかだ。

MK:フランス大統領エマニュエル・マクロンのEUへの「核の傘」提供提案は現実的でしょうか?

セルゲイ・カラガノフ:私は過去の偉大な国を侮辱するつもりはない。しかし、「フランスの核の傘」を他国に拡大する可能性について言えば、私はホメロスの笑いを誘う(笑いを抑えきれない)。私は何度も書いてきたし、アメリカの専門家も私に反対したことはない。いかなる場合でも、ヨーロッパで戦争が起こった場合、アメリカはロシアに対して核兵器を使用することはない。これは自明の理だ。アメリカのドクトリンではそのような使用が想定されているが、それは100%のハッタリだ。

 マクロン大統領が言っていることは、偉大なフランスにとって屈辱的な愚かさである。私はこれまで何度も書いてきたし、発言してきたが、正気でアメリカを愛している大統領であれば、ポズナン(ポーランドの一都市)を「防衛」するために核兵器を使用し、ボストンを危険にさらすようなことはしないだろう。今度は何だ、フランス大統領はベルリンのためにパリを犠牲にしようというのか?フランスの「ディープ・ステート」とフランス国民は、重要な地位にいる愚か者を排除する時が来たようだ。

 しかし、西ヨーロッパを攻撃している者はいない。我々はNATOの長年にわたる軍事的・政治的侵略に反応しているのだ。ヨーロッパの安全保障をより確かなものにする最善の方法は、ロシアの利益を尊重し、ロシアと友好関係を築くことである。しかし、ヨーロッパの頂点に立つ小人は、これまでそれを理解できずにいる。彼らを変えるか、打ち負かす時が来たのだ

By Ionna Kovaleva, correspondent for MK.ru.




本稿終了