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ウクライナのゼレンスキー
大統領とは (2)
(Volodymyr Zelensky)

解説:池田こみち


独立系メディア E-wave Tokyo 2022年2月7日
 

ウォロディミル・ゼレンスキー
Володимир Олександрович Зеленський Владимир Александрович Зеленский
Source:Wikimedia Commons President.gov.ua, CC 表示 4.0, リンクによる

本文

■ゼレンスキー大統領自らのリスクに直結する内憂外患

 まず、ウクライナ国民の50%以上がNATOへの加盟を「支持」しているというウクライナ国連大使の発言*5があることや、ウクライナの調査機関、社会学グループ「レイティング」の12月の世論調査では、54%の回答者がミンスク合意の見直しを求め、21%が協議から離脱すべきだと答えた*5、と報じられていることからも、現状では、ウクライナの国内融和・統一をミンスク合意をベースに行うことが極めて困難な状況となっていることは間違いない。

*5 2022年2月5日 日経新聞 ウクライナ国連大使、NATO加盟は「国民の総意」
*6 2022年2月4日 日経新聞 モスクワ=石川陽平記者
  ウクライナで深まる内憂外患、広がる政権への失望

 ウクライナ西部地域は、ゼレンスキーの優柔不断的な政策に業を煮やしていると思われる。なんと言っても、15から17%と数字的には低いとはいえ、支持率でゼレンスキーに次ぐ第二位が反ロ・親欧米路線の急先鋒である前大統領のポロシェンコである。

 その一方で、東部地域のロシアに隣接するドネツク州やルガンスク州は親ロシア派が主流となっており、ロシアとの融和、地域の独立を模索している立場から、ゼレンスキーが大統領就任当初の演説で「東部地域の和解や融合を推進する」、「ミンスク合意の履行に努める」等と公言したにもかかわらず、まったくその後の進展がないことから、ゼレンスキーの二枚舌というか二股膏薬的な言動にいらだちを隠せない。

 なんと言ってもウクライナ全体で、100万人以上のウクライナ人がロシアに出稼ぎに行き、エネルギーばかりでなく物価上昇に伴う生活の困窮が著しく、経済面においても大きくロシアに依存せざるを得ないことは事実であり、声高に反ロを叫んでも実際のところ手詰まりであるのは目に見えている。

 また、中道派のウクライナ人にとっては、大統領に就任して三年が経過してもこれと言った具体的な国内統一の政策打ち出せないばかりか、新型コロナウィルスの拡大等に伴う経済の低迷も相まって、不満が渦巻いている。国内経済は一握りの新興財閥(例えば、ゼレンスキーの宿敵である野党親ロ派党首のメドベドチュクなど)に大きく依存していたことから、ゼレンスキーは就任当初、「今後は一握りの新興財閥ではなく4000万の国民のために国をつくるのだ。*4」などときれい事を並べていたからだ。

 ウクライナの人々は、まさに国としてのアイデンティティ、拠り所を見失って右往左往しているというのが実態ではないだろうか。

 ゼレンスキー大統領が所属するウクライナ議会第一党「国民の僕」の公式Webサイトのトップには;

人民政党「国民の僕」
  https://sluga-narodu.com/

 我々は、システムに挑戦しました! 私たちは、変化する準備ができていて、古い政策の一部ではなく、その分野で成果を上げている、質的に新しい人々を求めています! 最初の仕事は、汚職の国をきれいにすることです。

 と記載されており、党のイデオロギーとしては;

●ウクライナの中道政治

 ウクライナの中道政治は、異なるグループ間の妥協点を見つけ、政治的、民族的、言語的理由による政治的分裂を避け、左右の過激主義を拒否し、平和、制度、投資、インフラ、民主主義という発展の主要分野に焦点を当てるというウクライナの政治イデオロギーである。

と明記されている。

 これは、①ビッグテント、②ポピュリズム、③直接民主主義、④腐敗防止、⑤親EU主義であり、政治的立ち位置は中道と明示しているが、きれい事に終始していて具体性に欠けているように見える。

 支持率も下がり続けていることもあって、足下の基盤の弱さを見透かされたのか、西側から欧米諸国、東からロシア、さらに中国、周辺では北側の隣接国ベラルーシ、戦闘機を購入したトルコなどからあれこれ言われてややパニック状態のようにも見える。まるでゼレンスキー大統領やウクライナ国民の存在を無視するかのようにそれぞれの立場を優位にするための情報発信や行動でウクライナを翻弄しているかのようでもある。

 就任当初は、国民的人気を博し、発言のひとつひとつに大きな期待が寄せられたが、結局行き詰まり・政治手腕の限界が目に見えてきているため、国内の安定が危うくなっている。ここは、自らが国民をどちらに引っ張っていこうとしているのか、どこに向かうのか、議会・国民との間でしっかり議論し、政権を立て直すことが第一なのではないだろうか。

 国内が不安定な状況では、また、世界のあちこちで危機を創り出す「カラー革命」を仕掛けられて国民が分断され国が再び混乱するのは目に見えている。コメディアンの大統領が国を悲劇に導いたのでは洒落にならない。