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東北シリーズ(2)
「街並み景観づくり100年運動」
山形県金山町 その1


阿部 賢一

2007年9月9日


1. はじめに
2007年6月15日朝、友人と二人で酒田を出発し、鳥海山麓の旧八幡町から国道344号で真室川町を経由して、金山町役場を訪問。金山町中心市街地を散策後、中心街の一角「蔵史館」の向かい側、そば処「早々」で昼食。
午後、市街地から約4kmにある「大美輪の美林」を訪れた。そこから金山川を遡り神室ダムまでドライブして休憩。引き返して「グリーンバレー神室」の長期滞在型リゾートホテル「シェーネスハイム金山」(金山町とJR東日本の出資の第三セクター、JR東日本が経営)に宿泊。

翌16日は、グリーンバレーの「遊学の森」から左に沢筋を下り、こんどは中田春木川を上流へ、「共生のむら杉沢」で「暮らし考房」を主宰する栗田和則・キエ子夫妻を訪ねた。栗田ご夫妻が創り出した山里の味、イタヤカエデの樹液100%の自然飲料『楓露(ふうろ)』を御馳走になった。
他のグループがご夫妻を訪れたのを期に「暮らし考房」を辞して、国道13号経由主寝坂トンネルを越えて秋田県側に入り、国道108号で鳥海山北面をドライブ、法体の滝を訪れ、仁賀保経由で酒田に戻った。
二日間で鳥海山をぐるっと一周した。

2. 金山町について
金山町は、新庄市、真室川町と接する山形県最北端の町であり、秋田県との県境に位置する面積161.79km2、約65%が山林という典型的な農業と山林で生きる中山間地域。人口約7,000人(平成18年4月現在)の小さな自治体である。
金山町には観光客を魅惑するような奇観や景観、文化・歴史遺産などの観光資源はない。古くから開けた天然の温泉もない。東北の奥深い山村の一つとしてどこにでもある森や山里の町である。


出典:ヤフー地図

神室山地の主峰、神室山(1,365m)に囲まれ、秋田県との県境に位置する金山町は、冬季積雪2mを越える豪雪の山里である。

神室山は栗駒国定公園の西側に位置する。古くから、霊験あらたな信仰の山として知られ、その登拝に際しては、殺生禁断・精進潔斎、女人禁制等の厳しい戒めが課せられた。八方八口の登山口が神室山に拓かれ、西の鳥海山に対して、東の御山といわれ、修業のため訪れる修験道者と、五殻豊饒を祈念する農民の巡礼は絶えることなく、数多くあった宿坊は、神室山の繁栄とともに賑わいをみせたという歴史がある。(『増訂 最上郡史』)
出典:霊山神室に山紫水明を求めて。
http://www.sanson.or.jp/mura/mura2/frame1.html


神室山地の主峰:神室山
出典:http://marugo.bg.cat-v.ne.jp/image/s09201.jpg

現在、この緑と水の神室山系から金山町の中心を流れ下る金山川の上流部に神室ダムがある。
これは、山形県が昭和55年から事業に着手、平成5年に完成した多目的ダム(洪水調節、農地防災、不特定用水、河川維持用水、上水道用水)である。重力式コンクリートダム(堤高:60.6m、堤頂長:257m)である。


出典:山形県HP

山形県HPの「神室ダム」の説明では、「沿川の洪水調節、流水の正常な機能の維持、新庄市・金山町・真室川町の上水道用水の確保を目的として建設された」という。しかし、こんな緑豊かな山地で斜面の崩落状況も見られないようなところに「洪水調節」などが必要であるのだろうか。「流水の正常な機能の維持」という目的も意味不明。ダムはむしろ「流水の正常な機能を阻害」していると考えるのが「正常」である。上水道用として新庄市、金山町、真室川町の水源というのもはなはだ疑問だ。これらの地域は、ダムを建設して水需要に応えなければならないような規模の人口や環境ではない。

神室ダムを訪れた日、ダム直下に公園(古代広場)があり、誰もいない東屋やコンクリート製の恐竜や遊具がさびしさを印象付けた。ダム管理事務所の展示室も閉まっていた。ダムの奥へ遊歩道が続き、神室山への登山道、大滝コースである。

金山町の中心街の「大堰」と「めがね堰」には豊富な水量が流れていた。しかも、流れは相当に急である。「大堰」には鯉が放流されている。「大堰」で写真と撮っていると、近付いてきた老婆が、「堰の流れが急流なので鯉の肌が荒れている」といっていた。


金山町役場裏の大堰 下流から上流を見る。
奥は金山公園 撮影:2007/6/15


金山町役場裏の大堰 上流から下流を見る
撮影:2007/6/15

金山町にはもう一つ、農業かんがい用の桝沢ダムがある。事業者は農水省東北農政局。
重力式コンクリートダムで、堤高65.8m、堤頂長194.8m。2006年8月に完成した。ダムの規模は「神室ダム」と大差ない。水源となる背後の森林も狭く深くない。昭和46年から米の生産調整(削減)を続けてきた一方で、何でいまさらこんなダムを昨年完成させる必要があったのだろうか。
さらに、もうひとつ、追って述べる「共生のむら杉沢」の中田春木川上流にはダム計画があり調査が行われたが、建設中止となった。
全国いたるところダム建設の一端がこの金山町にもあらわれている。


金山町役場前の中心街「金山形住宅」 2007/6/15


郵便ポストも「金山住宅型」 撮影:2007/6/15


金山杉をふんだんに使った「きごころ橋」
金山川に掛る歩道橋 平成16年(2004)11月完成
撮影:2007/6/15

(つづく)