←エントランスへはここをクリック   

公共工事の諸問題

その11(4)
建設業者過剰供給構造の改革
~『建設産業政策2007』を読んで~


阿部 賢一

2007年11月10日


6) 官公需施策、共同企業体制度その他の中小建設業対策についての見直し
平成9年末の「行政改革委員会」最終意見(平成9年12月12日)において、「当面は、官公需施策について、官公需法の趣旨を再徹底するため、同法の運用面での改善を図るべきであること、中小企業者の受注機会の増大の名の下に行過ぎた施策がとられないように要請すべきである」としている。

公取研究会報告書(平成15年11月18日)では、中小企業等の受注機会拡大・地域振興のための発注方法等と競争性の確保について以下の提言を行っている。------[図-17]

[図-17] 公正取引委員会
「公共調達と競争政策に関する研究会報告書」(平成15年11月18日)


3 中小企業の受注機会拡大・地域振興のための発注方法等と競争性の確保
                             ----(24~27p)
(1)競争性の確保の必要性
ア 中小企業に関する国等の契約については、いわゆる官公需法に基づいて、中小企業の「受注の機会」を確保するための各種の施策が講じられている。
また、毎年、中小企業者向け契約目標が、各省等が算出した契約見込額をベースに設定されている。平成15年度については、官公需契約の総発注量に占める中小企業者の割合は45.3%となっているが、これは中小企業者向け目標額と官公需総予算額から算出されたものであり、また、契約目標は、政府全体としての努力目標となっている。なお、同法は、地方公共団体についても、「国の施策に準じて、中小企業者の受注の機会を確保するために必要な施策を講じるよう努めなければならない」としている。
中小企業に関する施策を進めるに当たっても、中小企業の健全な成長・育成を図っていく上で競争性の確保の視点は重要である。仮に発注者において、受注の「機会」の確保にとどまらず、「結果」の確保まで配慮した運用が行われる場合には、中小企業の競争的な体質を弱め、中小企業の健全な成長・育成を阻害しかねないものと考えられる。
イ また、地方公共団体において講じられている地域振興のための施策を進めるに当たっても、考え方は同様であり、地元企業の健全な成長・育成と地域経済の活性化を図っていく上で、競争性を確保していくことは不可欠である。

(2)中小企業の受注機会拡大・地域振興のための個別の方策と競争性の確保
以下では、中小企業の受注機会拡大・地域振興のための各種の方策について、競争性の確保の観点から、地域要件の設定、共同企業体、分割発注、ランク制等を取り上げ、これらについて個別に検討を進めていく。なお、公共調達における個々の競争入札においては、こうした各種の方策が複数講じられていることから、全体としての競争への影響についても考えていくことが必要である。
また、平成13年から施行されている入札契約適正化法は、入札・契約の適正化のための原則の一つとして透明性の確保を掲げているが、事業者間の競争を確保するためには、発注者サイドにおいて講じられる各種の方策についての情報が公開され、透明性が確保されていることが極めて大切である。

ア 地域要件の設定
(ア) 地方公共団体等においては、競争入札を行うに当たり、事業者の競争参加資格として、地域要件が設定されることが多い。地域要件の設定により地元の業者に発注することは、例えば公共工事について、将来における当該施設の維持・管理を適切に行うとの観点から合理性を有する場合もあると考えられるが、これによって入札参加業者が固定化したり、十分な入札参加業者が確保されないなど、入札の競争性が失われる場合には、入札制度の趣旨に反するのみならず、入札談合を誘発・助長するおそれが強い。
また、多数の地方公共団体が地域要件を設けている中で、特定の自治体だけがそれを廃止した場合、当該入札の自治体には周辺の自治体の事業者が参加できるのに、当該自治体の事業者は周辺自治体の入札には参加できないという状況が生じることから、地方公共団体側に個別に自主的な取組を期待することは困難な面がある。


(イ) したがって、競争性を確保していく観点からは、引き続き、地方公共団体に対して、地域要件の設定により、過度に競争性を低下させるような運用にならないよう求めていくとともに、地域要件の具体的な在り方についての基本的な考え方を国として明確にし、各地方公共団体に周知していく必要がある。
また、地方公共団体等においては、地方自治法施行令(第167条の5の2)において、契約の性質又は目的により、当該入札を「適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるとき」に限って、地域要件の設定が認められていることに留意するとともに、透明性を確保する観点から、地域要件を設定する場合には、同施行令を満たしていることを説明する必要がある。

イ 共同企業体
(ア) 公共工事等においては、例えば特定の建設工事について、共同企業体が結成されることがある。共同企業体の結成は、地域の実情に詳しい地元企業が加わることで地域独特の手法を反映させたり、大規模工事におけるリスク分散を図ることにより効率的で経済的な工事ができるなど、合理的な場合もあると考えられるが、受注機会の配分として機能しているとの指摘があり、また、談合が誘発されかねないといった問題がある。

(イ) 競争性を確保していく観点からは、事業者が、上記のような地元企業の有利性や大規模工事のリスク分散等の観点から、自主的に他の事業者と共同企業体を組織すること自体は何ら問題を生じるものではないとしても、発注者サイドにおいて、共同企業体の結成を発注の条件としてこれを事業者に義務付け、事業者の自主的な事業活動に関与することは適当ではないと考えられ、こうした義務付けは廃止していくことが適当と考えられる。

(ウ) なお、現在の公共工事においては、過去の同種・同規模の工事の施工実績を有することが入札参加資格とされている場合があり、中小企業がこの要件を満たし、将来の参加資格を得るためには共同企業体に参加して実績を積む必要があるとの指摘がある。このため、共同企業体の義務付けを廃止するに当たっては、他の発注機関や民間部門の施工実績を評価する、対象案件と同種・同規模の工事の施工実績がない場合でも過去の施工実績を適切に評価するなど、発注者において、適正に入札参加資格を設定し、将来の入札参加企業が限定されないようにすることが必要である。

 * 国土交通省は、「入札契約適正化の徹底のための当面の方策について(平成15 年度)」において、入札契約の競争性・透明性の向上等の一つとして、特定建設工事共同企業体と単独の建設業者の双方に入札参加を認める混合入札の促進を掲げている。-------10p

ウ 分割発注、ランク制
(ア) 分割発注については、中小企業の受注機会の確保や調達案件の規模の適正化等を勘案して行われることがあるが、行き過ぎた運用が行われる場合には、公共調達が非効率となり、競争性が確保されないこととなることから、発注者は、分割発注を行う場合には、その理由を公表することが望まれる。分割発注の理由について透明性が確保されることによって、過度の分割発注が抑止されるものと考えられる。

(イ) また、ランク制についても、行き過ぎた運用が行われる場合には、事業者の棲み分けを促し、競争を制限する効果を持つことから、競争性を確保していくためには、事業者が固定化しないよう、同一ランクにおける十分な事業者数の確保に配慮するとともに、ランクを統合していくといった見直しを不断に行っていく必要がある。
*一部の地方公共団体においては、競争促進等の観点から、ランク数の削減(三重県等)、ランク制の廃止(横須賀市等)等の取組が行われている。-----11p

エ 地方公共団体による公共調達における地元業者の下請使用や地元産品の利用の要請
近時、地方公共団体の中には、地元経済の活性化等を目的として、公共工事の受注業者との契約において、地元業者を下請業者として使用することや、地元産品を利用することに努力する旨の規定を設ける事例がみられる。こうした活動が、一般的な要請の範囲を超え、事業者に対してこれを義務付ける場合には、事業者の自由な事業活動を制限するおそれがあることから、好ましくないものと考えられる。

(注)下線追加は筆者。


中小企業対策として、国においては、官公需法に基づく中小企業の受注機会確保の施策を行ってきたが、地方公共団体発注者ではそれに加えてさまざまな公的規制・公的保護を長年にわたって行ってきた。
その項目をまとめると、公取委員会報告の提言項目を含めると以下の通りである。
1. 官公需法に基づく受注機会の確保
2. 地域要件の設定
3. 共同企業体制度
4. 分割発注・ランク制
5. 地方公共団体による公共調達における地元業者の下請使用や地元産品の利用の要請
6. 契約時に支払われる前払金(契約額の4割を限度)
7. 工事履行保証制度


それぞれの項目についての分析と提言を以下詳述する。

1. 官公需法に基づく受注機会の確保
官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)は昭和41年(1966年)6月30日施行されている。全文7条から成る法律である。数度の改正を経ているが基本的には変わっておらず、施行から41年を経ている。
中小企業者の定義であるが、製造業、建設業、運輸業については、資本の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人となっている。(法第2条(1))

国等の契約に当たっては、「予算の適正な使用に留意しつつ、中小企業者の受注の機会の増大を図るように努めなければならない。」(法第3条)と規定されている。
そのため、国は毎年度「中小企業者に関する国等の契約方針」を閣議決定しなければならない。(第4条)
そして、前年度の「中小企業者向け契約実績」も公表されている。
政府は、2007年度の中小企業向け官公需契約目標を、総予算額8兆4560億円の50.1%にあたる4兆2406億円とする契約方針を閣議決定した。官公需総予算額に占める契約目標比率が半数を超えるのは初めてで、目標額は、前年度実績に比べて1254億円上回り、3.0%増となる。
このうち建設工事は、前年度実績比5.1%増の1兆8199億円、役務は1.0%増の1兆1962億円。国が5.3%増の2兆5936億円、公庫などが0.4%減の1兆6469億円の内訳。
平成18年度の「中小企業者向け契約実績」は、官公需総実績額8兆6559円、中小企業者向け契約実績額4兆1152億円、契約比率47.5%であった。

官公需法についての行政改革委員会最終意見(平成9年12月12日)は次のとおりである。----[図-18]
[図-18] 行政改革委員会最終意見(抜粋)
「中小向け額/官公需総額」の目標比率は、最近10 年間以上、39.8~39.9%の水準で固定されているとともに、同一資格等級区分内の者による競争の確保、分離・分割発注の推進等の施策が掲げられている。このため、これまでの長きに亘る同法の運用の中で、実質的には、同法は、国等に対して無理に中小企業者に発注させる根拠として機能している。加えて、同法は、地方公共団体について、国の施策に準じて施策を講じるよう努めなければならないとしていることから、地方公共団体における地元中小業者優遇の口実として機能している。契約方針においては、地方公共団体に対し、中小企業者の受注機会の増大のための措置を講ずるように要請しているが、それが、行き過ぎた分離・分割発注を促し、さらに行き過ぎた地域要件等を課すことにつながり、公共工事の効率的な執行を妨げる結果となっている。このような地域要件の行き過ぎは本来望ましいものではなく、過度の地域要件は避けるべきものである。
なお、官公需施策には、中小企業者であることによって競争に参加できない不利を是正するという基本的考え方がある。この考え方は、官公需法のみならず同法の根拠である中小企業基本法にまで立ち返るものであるが、上述のような弊害が顕在化している現状に鑑みると、こうした中小企業政策の基本的考え方が過度に浸透することにより、かえって中小企業者の健全な発展を阻害している疑いがある


公取「公共調達と競争政策に関する研究会」(第4回)(平成15年7月31日)議事録には、官公需法施行年度から平成14年度に至る「官公需の年度別目標、実績額の推移表」が参考資料として添付されている。
それによれば、初年度の目標額比率が26.8%、それに対する実績額比率が25.9%。年度を経るごとに両方の比率が高まっている。平成8年度以降は、実績額比率が目標額比率をわずかではあるが追い越す傾向が続いている。そして、平成18年度の国等の目標額比率は、47.9%、実績額比率は47.5%、平成19年度の目標額比率がわずかではあるが、ついに50%を超えた。

公取研究会の同日の官公需法についての議論要約を読むと問題点がはっきりしている。-----[図-19]
[図-19](官公需法の制度趣旨)
○閣議決定で示されている中小企業者向け契約目標は、各省等が算出した契約見込額をベースに設定したものである。平成15年度については、官公需契約の総発注量に占める中小企業者の割合は45.3%となっているが、これは中小企業者向け目標額と官公需総予算額から算出されたものであって、「初めに比率ありき」ではない。
また、契約目標は、政府全体としての努力目標であり、法的拘束力を有するものではない。米国では比率を法律で設定している。
なお、官公需法第7条に地方公共団体への訓示規定があるものの、官公需法は国等の機関を対象としたものであり、地方公共団体は本法の対象外である。
○官公需法については制度の趣旨と実際の運用がかい離しているという議論があるが、そもそも官公需法は、中小企業者の「受注の機会」の確保と同時に種々の支援を実施して技術力のある中小企業者を育成することを目的とした制度なのか、それとも、事実上中小企業者の「受注」を確保するための措置を講じることを目的とした制度なのか、制度の趣旨そのものがよく分からない。
○制度の趣旨は中小企業者に「受注の機会」を与えることである。


官公需法では、中小企業としての建設業は資本金3億円以下、常時使用する従業員300人以下と規定されている。そのため、この上限を超えないように企業経営することが、官公需法の適用を受けるための条件となる。
しかも、官公需総額の半分を占めるにいたっていることは、企業規模発展意欲を阻害することにもなる。
ほどほどのところで、官公需法の恩恵を受けようと考えるのは当然の成り行きである。
しかも、資本金3億円以下、従業員300人以下といえども、地方においてはナンバーワンの大企業であったり、毎年、十数億円規模以上の売上げを挙げることも可能である。
中小企業は一般論としてはたしかに弱者である。だからといって、官公需法のような公的規制・公的保護の既得権益をいつまでも与える必要はない。弱者であることを大合唱することによって、優遇措置をいつまでも受けるべきではない。

中小企業の「製造業、建設業、運輸業」という漠然としたくくりの中で、期限もなく官公需法を運用する必要もない。製造業であれば、新分野・新製品を開発・展開する企業への優遇措置というのであればまだ理解は可能である。
建設業、運輸業は、すでに成熟業界であり、むしろ過剰供給状態で淘汰が必要である。業者の過剰供給状態は、ダンピング受注の大きな原因ともなっている。
官公需法第7条には、地方公共団体への訓示規定があるものの、官公需法は国等の機関を対象としたものであり、地方公共団体は本法の対象外である。しかし、国の官公需法に便乗して地方公共団体も、「右へ倣え」で官公需法同様の中小企業優遇措置の運用を続けてきた。

上述の「意見」や「議論」にあるとおり、官公需法自体が本来の趣旨と実際の運用が年を重ねるごとに形骸化してきた。中小企業の保護・育成ということで、「受注機会の確保」がいつのまにか「契約目標額の確保」に変質している。毎年政府が発表する「中小企業者に関する国等の契約の方針」を読むと、官僚の無味乾燥な作文をもっともらしく「閣議決定」というお墨付きを与えることで正当化しているつもりだろうが、内容はまったく矛盾だらけで抽象的なものの繰り返しである。

しかしながら、中小企業問題は、きわめて政治的な地雷的問題であるため、「触らぬ神に祟りなし」状態で、誰も改革の口火を切る者がいない。政治家・行政・中小企業団体の癒着と「談合」がいまだに続いている。
国も地方公共団体も、官公需法及びそれに準じた運用を行うために、公共工事を無理やり分割発注しているのが実態である。なぜ、分割入札・発注をするのかの説明責任も果たしていない。

諸外国には、官公需法の如き目標額比率を掲げるような中小企業者受注対策はない。----[図-19]

[図-19] 米国とEUの中小企業対策
米国

米国連邦調達規則(Federal Acquisition Regulation: FAR)は一定規模以上の企業(大企業)を除いた上での「完全かつ公開の競争(Part 6 Full and Open Competition)」を認めているが、この場合でも、資格要件を満たす中小企業はすべて競争に参加できる。
地元業者優先のための施策に関しては、連邦レベルの規定はない。州の公共調達においては自州内の企業を優先する法令等を設けている例がみられる。
例えば、ワシントンD.C.においては、地元企業の入札価格について、3%のボーナスが認められ、他の地域の競争者の入札価格との比較をする際の優遇措置が設けられている。
(公取研究会報告書----18p)

EU
EU指令においては、地元業者優先等についての規定はない。加盟国においては、ドイツでは入札参加者の地域限定が禁止されているほか、フランスにおいては、地元業者の優先を違法とする判例が多く存在する。
中小企業対策に関しては、EU指令上の規定はない。加盟国においては、ドイツで分離発注による中小企業の利益考慮の規定がある。また、フランスにおいては、一定の場合に手工業者等の中小企業に対する優先措置が存在する。
(公取研究会報告書----20p)


米国においては、中小企業関係法律としてSmall Business Act(SBA)がある。上述の中小企業とはSBAに定義されている企業のことであり、連邦政府及び州政府の公共調達入札に参加できる。
連邦調達規則FARには、[Part 19 Small Business Programs]がある。
さらに49CFR26(Code of Federal Regulation Title 49 Part-26)に基づいて、連邦政府資金で行われる工事には、発注者は入札に当たり一定の割合(例えば5%、7%、10%等)をDisadvantaged Business Enterprise(DBE)に下請させる義務を負わせている。実例を挙げれば、カリフォルニア州道路局(CALTRANS)の入札案内特別条件(Specific Condition)として明記されている。
しかし、我が国のように、発注者自身が中小企業向けに目標額比率を定めたり、契約したりするような官公需の目標額比率を閣議決定するような極端ともいえるような中小企業優遇措置などはない。

EU加盟諸国においては、EU公共調達法令(EU Public Procurement Legislation)*に基づいて国内法を整備し公共調達を行わなければならない。地元業者優先等の公的規制はない。

* Directive 2004/18/EC of the European Parliament and of the Council of 31 March 2004 on the coordination of procedures for the award of public works contracts, public supply contracts and public service contracts

米国及びEUにおいては、公共工事入札の「コスト性」「効率性」「競争性」「国際競争力」等を重視する。
そこには、国内向きの政治的な思惑など入る余地はない。

「官公需法」は施行からすでに41年目、既得権益化しており、賞味期限切れで公共工事効率性の障害となっている。速やかに「官公需法」廃止に向けての具体的な「工程表」を提示すべき段階である。

2. 地域要件の設定
地方公共団体等における競争入札にあたり、入札者の競争参加資格として、地元建設業者を必須条件とするような事例が多い。このことで、入札参加者が固定化し、入札の「競争性」が失われ、官製・業者間の談合を誘発して落札額の高止まりが多く見られる。発注者は入札参加者の広域化をはかり、入札の「競争性」を高めるべきである。

3. 共同企業体制度
我が国における「共同企業体」には、その目的によって「特定建設共同企業体(特定JV)」と「経常建設共同企業体(経常JV)」に分けられる。
「特定JV」は、発注される工事ごとに結成される。土木工事では一般的には2社から3社で結成される。高層ビルなどの建築工事などではより多数の企業で結成されることもある。
公共工事の場合、入札に際して、建設業者はそれぞれパートナーを選んで発注機関に対してJVの結成を届け出る。各社の出資比率は、2社による場合は最低30%、3社による場合は最低20%。最も出資比率の多い企業が幹事会社(スポンサー)となり、工事受注・施工の際に主導的な立場となる。

「経常JV」とは、企業規模の小さい建設業者がJVを組織する場合である。単体では受注できない規模の大きな工事を受注することが可能になり、受注機会の拡大につながり、利益の向上に寄与するとされている。
経常JVは単体企業と同様の組織と見なされ、発注機関の入札参加資格審査申請時に申請を行うことで、一定期間単体企業同様の有資格建設業者として登録される。

海外におけるジョイントベンチャーやコンソーシアムが日本に導入されると、換骨堕胎されていつのまにか「日本型共同企業体(JV)」になってしまった。

昭和62年(1987年)、中建審は、「共同企業体のあり方」を答申して、共同企業体について「特定型」と通年の「経常型」とする原則的な考えを示した。
国及び地方公共団体にはその実施要綱・運用基準・取扱規程などが定められている。

既述の通り、国土交通省では、『入札契約適正化の徹底のための当面の方策について(平成15年度)』(平成15年4月15日)において、大規模工事等においてそれまで行ってきた「共同企業体」方式による入札から、単独業者でも応札できる「混合入札」方式の導入・促進の方向を示した。-------[図-20]

[図-20] 入札契約適正化の徹底のための当面の方策について
混合入札の促進
 原則として特定建設工事共同企業体による競争を行っている技術的難易度の高い大規模工事等について「単体発注の原則」を踏まえ、全ての工事における有資格業者の単体参加の実現に向けて、単体参加のできる対象工事の範囲の拡大を進める。
出典:http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/00/000415_.html


我が国における公共工事発注の特徴として、公共事業発注者が「共同企業体」結成を入札の必要条件とする場合が多い。すなわち、全国展開の大手ゼネコンと地元企業との「共同企業体」による入札を要求する。

「共同企業体」における「特定JV」の本来の目的は、大規模工事において、入札に参加する業者がそれぞれ得意分野を担当したり、経験の少ない技術分野を一緒に施工することで実績を積み重ねたり、規模の大きさに伴うリスク分散を図ること、工区を分化して早期完成を図ることなどである。

「共同企業体=特定JV」が「入札条件」として設定されるのが、我が国地方公共団体における入札の特徴である。入札者側が自主的に共同体を結成することは自由であるが、発注者側がこれを義務付けることは、官製・業者間談合の誘因となるので廃止すべきである。

「共同企業体」本来の目的は、ほぼ同等の企業規模・技術力・経営力のある業者同士で結成され、リスクを分散・分担するものであり、大手ゼネコンと地元企業の「共同企業体」などというのは、まったく我が国独特の制度である。地元業者が「共同企業体」にこだわるのも、たとえ、「共同企業体」のスポンサーでなくても、「共同企業体」組成メンバーであることによる企業としての高い評点・評価を地元業者は求めているからである。
そして、地元業者が「下請」を拒否して、元請の「共同企業体」メンバーにこだわるもの、元請の方が利益を確保するのに有利であるとの認識があるからであろう。さらに経営事項審査制度も大きく影響を及ぼしている。

しかし、実態はどう見ても「下請」である。世間では当然そう見ているのに、当事者だけが「共同企業体」メンバーだといっているのは、まさに滑稽である。

名古屋の地下鉄談合などにおける入札「特定JV」のメンバー構成を見ると、本来ならば充分単独で入札できる実力のあるそれぞれの業者が三社で「特定JV」を構成している。その入札が「談合」であると摘発される結果となっている*。入札グループ全部が三社による「特定JV」ということは、発注者側の入札条件であるに違いない。
そこには、建設業者みんなで工事を分け合うという発注者・建設業者の暗黙の了解が反映されている。
* 『公共工事の諸問題』その10 「談合がなくならない現実」
http://eritokyo.jp/independent/abeken-col1023.html

「経常JV」の場合は、上述の通り、単独では受注が出来ない規模の工事の受注を目指すことである。
その目的は、それなりに理解できるが、通常は、通年「経常JV」である。すでに成熟化した建設業界のなかでは、むしろ、生き残りをかけて各社が熾烈な競争、その結果としての「ダンピング入札」多発の現状では、この「経常JV」も自然消滅の運命にある。

「共同企業体」結成の条件として、過去の同種・同規模の工事の施工実績を有することが入札参加資格とされている場合があり、中小企業がこの要件を満たし、将来の参加資格を得るためには共同企業体に参加して実績を積む必要があるとの指摘がある。
すでに「官公需法」施行から41年目、そんな言い訳をする時限はとっくに過ぎている。
「共同企業体」は本来の、業者間における自主的な結成に任せて、発注者が入札条件から削除する方向への道筋を示す時期である。
その際に、上記1.で紹介した米国における49CFR26のような制度(元請が契約額の一定割合を小企業に下請することを義務付ける)を参考にするも良いと考える。

4. 分割発注・ランク制
1) 分割発注

分割発注は、上述2.~3.項に詳述したように、中小企業の受注機会の確保という名目で、中小企業の契約実績比率を達成するために、次第に行過ぎた運用(過度の分割発注)へとエスカレートして現在に至っている。
当初は調達案件の適正化等を勘案して行うという方針であった。しかし、「調達案件の適正化」とはどうゆうことかもしっかりと議論されずに、政治的な圧力が加わり、公共事業の景気対策・雇用対策・中小企業対策・地域活性化(地域バラマキ)への対応に堕してしまった。
なぜ「分割発注」するのか、その理由についての説明責任も果たされないまま、公共工事の「非効率」を促した。

平成11年、鹿児島市は、下水道工事(シールドトンネル、延長800m)を11工区に分割し、それぞれの工区を地元企業へ発注した。しかし、そのすべてを、全国展開のゼネコンが一括下請したことが発覚、建設省から異例の是正申し入れをうけるなどという、極端な事例*も発生した。
* 日経コンストラクション誌、平成11年(1999年)9月10日号

このような無茶苦茶な中小企業対策がおこなわれるのも、地元の景気対策・雇用対策・中小企業対策・地域活性化(地域バラマキ)という大義名分が先に立ち、公共工事発注に、首長、発注担当部局、業者、議会、政治家等などの思惑や癒着が複雑に絡むからである。地元有力者による公共工事の私物化以外の何物でもない。
工事の発注案件規模の適正化、分割についてのプロセスの透明性が強く求められて久しいが、いまだこれらについての情報は公開されていない。発注者は、分割発注についての説明責任を果たすべきである。

2) ランク制
ランク制は経営事項審査制度とリンクするものであるが、公共事業の景気対策・雇用対策・中小企業対策・地域活性化(地域バラマキ)で増えてしまった建設業者をA~E段階に評点により区分することにより、入札を同一規模・実力の建設業者の競争に付すという入札競争の「平等性」が強調されている。しかし、その運用が長期化するに従って過剰になった建設業者の棲み分けを促している。その結果、同一ランク内への固定化などによる入札の「競争性」を失わせることにもなっている。
これを改善するため、最近では、ランク数を三段階に削減する県や、廃止する自治体(横須賀市)などがでているが、まだ全国的普及への広がりはない。

国や都道府県などでは、ランク数を三段階に統合するなど削減する方向へ、市町村についてはランク制を全廃する方向への道筋をつけ、ランク制に安住する建設業者の選別化を進めるとともに、入札の「競争性」の範囲を拡大すべきである。発注者は、ランク制の削減や全廃が過剰な建設業者の淘汰へとつながるような政策を進めるべきである。

5. 地方公共団体による公共調達における地元業者の下請使用や地元産品の利用の要請
地元へ出来るだけカネを落とすという大義名分で、地方公共団体では公共工事の受注者との契約において、地元業者を下請業者として使用することや、地元産品を利用することに努力する旨の規定を設ける事例が多い。
地域不況とそれに伴う過疎化で、このような規定は、いつのまにか義務化への圧力となり、受注者に事業活動の選択肢を狭めさせ、公共工事コストの増加を押し上げる。

建設物価調査によれば、コンクリート工事に用いる骨材やレディミックスドコンクリート(生コン)などで地域による価格差が大きいのも、このような規定の影響が見られる。

コスト削減と「競争性」の発揮は企業の経営能力であり、受注者の下請や資材の利用については、他地域からの持込みがコスト削減になるのであれば、むしろそれを歓迎すべきである。
ここにも、公共事業の景気対策・雇用対策・中小企業対策・地域活性化(地域バラマキ)が露呈している。

6. 工事代金の支払方法
我が国の公共工事請負者は工事着手時に契約額の4割を限度として前払金を請求し、工事完成時に残りの6割を受け取る(工事が長期化する場合、金額が多い場合、中間払もある)のが一般的である。

契約時に40%の前払金がもらえるということが、ダンピング受注の大きな要因であることは、業界関係者の常識である。なにもしないうちに40%もの前払金が手に入る受注者は、それを企業の運転資金として大いに期待するのも当然である。
このような受注者優遇策は他の先進諸国に例をまったく見ない。
諸外国では、前払金は10%(大型工事の場合、仮設準備工事完了時点でさらに10%)、あとは、工事費内訳(明細)書のもとづく毎月の出来高払、その際、5%の留保金が発注者に差し引かれる、というのが一般的である。

我が国では、会計法に基づく予定価格の「総額」主義で、支払いが上述の通り、二回若しくは三回といういたって簡単なものである。

しかし、数度にわたる海外調査を経て、平成17年(2005年)3月、国土交通省は新しい積算方式「ユニットプライス型積算方式の解説(以下、『解説』という)」*を公表した。従来からの「予定価格」の「積み上げ積算方式」から「ユニットプライス型積算方式」へ移行する方針を決定し、平成16年12月から舗装工事の一部を対称に試行を開始した。
*国交省国土技術政策総合研究所総合技術研究センター建設システム課
 http://www.nilim.go.jp/lab/pbg/unit/kaisetsu.htm

平成17年度から試行件数を増やして現在に至っているが、まだ「試行段階」にとどまっており、すべての工事には適用されるには至っていない。地方公共団体においては国土交通省の「試行段階」を見守っている状況にある。

国でも、地方公共団体でも、最近、にわかに工事費内訳(明細)書の提出を求める事例が増えている。これは、公共工事の激減に伴う「ダンピング入札」の調査として求めているものであり、諸外国のように工事契約書類とはなっていない。

工事代金の支払いについては、前払金は10%(大型工事の場合、仮設準備工事完了時点でさらに10%)、あとは、工事費内訳(明細)書のもとづく毎月の出来高払、その際、5%の留保金を発注者が差し引く、という、世界の常識を我が国でも制度化すべきである。

7) 工事履行保証制度
a. 履行保証

平成8年(1996年)3月、国土交通省(旧建設省)は工事完成保証人の廃止に向けて通達を出した。
これは、「公共工事に関する入札・契約制度の改革について」(平成5年12月21日 中央建設業審議会建議)
にもとづく措置である。

さらに、国土交通省は、各都道府県知事宛に、「地方公共団体の公共工事に係る入札・契約手続及びその運用の改善の推進について」(平 成9年12月10日付)を出して、工事完成保証人制度の廃止と新たな履行保証体系への移行を促した*。------[図-21]
[図-21] 工事完成保証人制度の廃止
公共工事の履行保証については、早急に、工事完成保証人制度を廃止し、金銭的保証を中心とする新たな履行保証体系へ移行すること。
 なお、履行保証措置を免除する(いわゆる無保証とする)ことについては、請負者が債務不履行に陥る可能性や債務不履行時の影響等を勘案し、慎重に検討すること。


これらにより、工事完成保証人制度は国及び地方公共団体で廃止され、すべて金銭保証に移行した。
「工事完成保証人」は、もし受注者が倒産などで工事を完成できなかった際に、発注者側からの追加的支払なしで「工事完成保証人」が代わりにその工事を完成させることを約束する。同クラスの同業者が工事完成保証人になるという慣習があり、入札で同時に指名された業者がなることが多い。入札の競争相手が「工事完成保証人」になるということで、談合を誘発し、談合組織が「工事完成保証人」にならないことで談合破りを防止するシステムとしても大いに機能したといわれている。

「工事完成保証人」制度は、まったく不合理な制度であり、廃止されるのが当然である。筆者は海外工事の経験から、すでにそのことを入札改革提言の当初から指摘してきた。それがつい十年前まで平然と行われていたことの方が異常としかいいようがない。国及び地方公共団体発注者のこのような都合がいつまでも続いてきたことに、公共工事入札制度改革の遅れを象徴するものである。

b. 入札ボンド
入札ボンドについて、公取報告書は次のように述べている。-------[図-22]

入札ボンド制度の導入
ア 米国において導入されている入札ボンド制度は、ボンドを引き受ける保証会社等の市場関係者の判断が受注者選定に反映されるため、より的確な企業の経営状況の評価が可能であるほか、不良・不適格業者の排除に有効と考えられる。
イ 一般競争入札の推進に当たっては、企業の経営状況を適切に評価し、競争参加資格を満たす業者を適切に選定することが必要であることから、今後、我が国においても入札ボンド制度の導入について検討していくことが必要であると考えられる。


国土交通省は、「中央建設業審議会報告、入札契約適正化指針等を踏まえ、一般競争方式の拡大と総合評価方式の拡充に伴う条件整備の一環として、入札ボンド制度の導入を図る*」として、平成18年10月下旬以降公告の直轄工事(東北及び近畿)において、先行的導入を図った。平成19年度以降については、順次拡大していく方針である。
* 入札ボンド制度の導入について(平成18年9月8日)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010908_4_.html

入札ボンドの導入により、不良不適格業者排除、過大な入札参加抑制、著しい低価格での受注、いわゆるダンピング(過度な安値受注)抑止を図ることを意図している。

入札ボンドは金融機関が発注者に対して発行する入札参加企業の履行能力(主として財務面)を保証する詔書である。このため、金融機関による建設業者の財務面での審査がおこなわれ、与信枠の制約による入札抑止、財務能力を超える入札抑止などの効果が期待されている。

国土交通省では、平成19年度は7億2千万円以上の全工事、農林省では平成19年度2億円以上の工事についてモデルケースとして数件実施の予定である。
都道府県及び政令指定都市では、平成18年度に宮城県が3件実施、埼玉県が5億円以上の1件について実施した。今年度から、岩手県、兵庫県、京都市などが導入を開始する。

国土交通省は2007年10月16日、「市町村などにおける総合評価方式等導入支援事業」の募集要項を発表した。
同事業は、総合評価方式や入札ボンドの導入促進を目的とした調査の一環であり、市町村の発注予定工事からモデル事業を選定する。100団体程度を募集する。随時募集し、先着順で募集数に達した時点で締め切る。

今後、入札ボンド制度は、一般競争方式の拡大、総合評価方式の拡充などにより、大型工事から一般工事へとその適用が拡大する方向にある。これにより、建設業者の淘汰が進み、過剰供給状態を脱することが出来るか注目していきたい。

おわりに
「建設産業政策2007」を一読しての第一印象は、具体的な「工程表」のない極めて抽象的なものであることに失望した。建設産業政策の方向として、五つのC(Compliance, Challenge, Competition, Collaboration, Career Development)などと、英語を使って新しがっているが、この五つのCに格別新味はない。

そして省庁縦割り行政の影響であろうか、今後の公共事業の目指すべき方向をVFMという言葉だけで、入札制度改革、建設業界の過剰供給構造問題(淘汰)に踏み込んだ分析・政策などはどこを読んでも読み取れない。

東京オリンピック以後の不況で始まった「均衡ある国土開発」というスローガンを掲げての地方のための公共工事による景気対策・雇用対策・中小企業対策・地域活性化(地域バラマキ)という枠組みは、国及び地方公共団体の借金の巨大化ですでに限界を超えている。国から地方交付金等でばら撒かれる公共工事による地域の活性化などは、その場限りのもので地方の将来展望が開けるものではない。
公共工事についてのこれまでの「考え方」「政策」の全面的な転換が求められている。

我が国における建設業者に対する公的規制・公的保護が一向に撤廃に進まない原因は、「均衡ある発展」政策で、全国至るところで建設業者数が多くなりすぎたこと、それによる「政治」への圧力とそれに便乗する「官僚」との癒着である。
その象徴的なものとして、昭和41年(1966年)施行された官公需法などは、すでに40年も経ているのに、当初の「受注機会の確保」がいつのまにか契約実績額増大に変身している。官公需総額に占める中小向実績額比率が初年度の25.9%から倍増して、平成18年度には47.5%、平成19年度の契約目標額比率がわずかではあるが、ついに50%を超えた。

それに加えて「地域要件」「共同企業体」「分割発注」「ランク制」「地域業者・資材の使用」等々、再三にわたりその改善・廃止が提言されながら、いまだにしぶとく生き残っていて、公共工事の効率化を妨げている。

本論で紹介した公取研究会報告書や財務省研究会(Ⅱ)報告では、公共工事の「効率性」「競争性」を強く求めている。この二つのキーワードに対する国土交通省や地方公共団体の動きはきわめて遅く、不祥事の多発でようやく改善に乗り出すという後手後手の対応に終始してきた。
昨年から頻発しているダンピング受注は、我が国の成熟産業となった建設産業の公的規制・公的保護の枠組にその原因があるのであり、それらの撤廃への道筋を示すことが求められる

我が国の入札制度改革が遅れている原因は、国は会計法、地方公共団体は地方自治法、特殊法人等については、国に準ずる枠組みで行われていることにある。
しかも、国でも、統一された規則などはなく、各省個別の規則等によって公共調達が行われている。

このため、国は、平成12年成立の「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入札契約適正化法)、平成17年成立の「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(公共工事品確法)などによって、何とか辻褄合わせをして、入札改革制度の改革に、そろりそろりと取り掛かっているというのがこれまでの経緯である。
戦前とほとんど変わらない古色蒼然たるという枕詞がいつも付く「会計法」「地方自治法」というダブルスタンダードの抜本的改正なくして、国及び地方公共団体の本格的な入札制度改革は進まない。
省庁縦割り行政の弊害が入札制度改革にも大きく影響を及ぼしている。

米国では本論で紹介した米国連邦調達規則(Federal Acquisition Regulation: FAR)、49CFR26(Code of Federal Regulation Title 49 Part-26)、これらに基づいて各州の公共調達規則がある。EU加盟諸国においては、EU公共調達法令にもとづいて、公共調達に関する法律が整備されている。英国をはじめ、フランス、ドイツ、イタリアなどには、国、地方公共団体を通じて、公共調達について規律する基本法がある。

「建設業界」(2007年8月号)の「窓」では、「建設業界が当面する最大の課題は、過剰供給構造の是正だ。建設投資がピーク時の6割に落ち込み、とくに公共投資にいたっては、4割の水準にまで激減している中で、建設業者数は一時の六十万社から減少したものの、依然として五十二万を数え、需要に比べ供給量の多い状態が続いている。このため受注競争の激化による極端な安値受注、下請価格の低落化などが社会問題化している」としている。この過剰供給構造をどのように打開するかがいま求められる建設産業政策である。

それは、本論で述べたとおり、数多くの公的規制・公的保護の撤廃による公共工事の「効率性」「競争性」追求以外にはない。
公共調達に関する我が国のダブルスタンダードを解消し、会計法・地方自治法を解体して、全国統一の公共調達の基本法をつくることである。
そして、何度も繰返すが、公共事業による景気対策・雇用対策・中小企業対策・地域活性化(地域バラマキ)という枠組を解体することである。

(完)