第3回 アマルフィ海岸自治体の持続可能性基礎調査 2013-6 A Survey on Sustainability of Costiera Amalfitana Comune 初夏のアマルフィ海岸を行く 7日目 アマルフィ海岸とは 青山貞一・池田こみち 2013年6月14日 独立系メディア E-wave Tokyo 無断転載禁 |
2013年アマルフィ海岸現地視察調査報告<125本 全体メニュー> アマルフィ海岸の位置 アマルフィの紋章 イタリア国旗 ここで、先に行く前にアマルフィ海岸そしてアマルフィ公国についておさらいをしておきましょう! ◆アマルフィ海岸とは 〜なぜ、私達はアマルフィ海岸にこだわるのか?〜 |
アマルフィ海岸は、ヴィエトリ・スル・マーレからアマルフィを抜け、ポジターノへ到るまでの一帯を言います。世界一美しい海岸と言われ、1997年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。 土地の名前の由来はヘラクレスが愛したニュンペーの名に由来しています。ヘラクレスはそのニュンペーと仲睦まじく暮らしていましたが、ある日突然、彼女が死んでしまいます。それを嘆いたヘラクレスはこの世でもっとも美しい土地に彼女を葬り、街を切り開いて彼女の名を付けた、とされています。 アマルフィ海岸は30kmに及び海岸線には斜面に張り付くように小さな町が点在しています。降り注ぐ太陽と白い町並みがまぶしい高級リゾート地もあります。町の中心には千年の歴史をほこる大聖堂、アマルフィ大聖堂があります。 それを取り囲むように地中海都市特有の坂道と狭い路地が複雑に入り組んで、まるで迷宮のようでし。アマルフィ海岸の生活する人々は、中世から変わらぬ生活を続け、レモンを畑で育て、坂の下まで人の手と足で大切に運ばれます。またアマルフィ海岸には多数の漁港があり、地中海のすばらしい海の恵みによっても持続的な営みを続けています。 参考:Wikipedia アマルフィ市役所にある古代アマルフィ海洋共和国の紋章 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 窯業のまちヴィエトリ・スル・マーレの陶磁器のお店にて 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 アマルフィ海岸は、その自然の美しさ、主要なリゾート観光地として世界的に知られている世界遺産でし。そのアマルフィ海岸は世界的な高級リゾート地、また垂涎の的となっている観光地としてだけでなく、9世紀には急峻な断崖絶壁の地にまちや農地を造成し、沿岸には要所に地中海の漁業拠点を構築してきました。 その後、アマルフィ海岸の小さなまちは、海洋共和国(都市国家)を形成し、ひとつひとつは小さいもののキラリと光る独自性と多様性をもった都市国家による共和国を形成してきたのです。 さらにアマルフィ海岸やソレント半島を魅力あるものとしているのは、同地域が歴史的にイスラム文化の影響を強く受けてきたことに由来しています。 イスラム文化がイタリア文化とうまく融合することにより、教会、修道院から生活するひとびとの建築、また要塞から道路、橋などの建造物に至るまで秀逸な構造、色彩を含む文化を醸成してきたと言ってよいでしょう。それらがラッテリー山脈がティラニア海に面する海岸の特異な地形と組み合わさり、世界一美しい海岸となっているのです。 アマルフィ大聖堂 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8 アマルフィ海岸にある自治体(コムーネ)は、生活と生産に結び付いた独自の伝統工芸や食文化を持っています。レモンやオリーブを使った食材やリキュールなどのお酒、チェターラのアンチョビの缶詰と青魚、そしてヴィエトリ・スル・マーレの手描きの陶器、ソレントの寄せ木細工などの伝統工芸品を生み出しています。 東日本大震災後、日本ではリアス式海岸をもつ岩手県などにおいて新たな街づくりが模索されています。また今世紀に入り、持続可能な社会づくりが国民的な課題となっています。 イタリアは周知のようにチェルノブイリ原発事故の後、脱原発を国民が選択したが、アマルフィ海岸のコムーネは9世紀から、まさに地道で質素なそれでいて世界に通ずる持続可能なまちを継続していると言えると思います。 それら、ひとつひとつは小さいまちであっても、それぞれがキラリとひかる独自性と多様性を持ち、それにかつての海洋共和国、都市国家の誇りと伝統をもったコムーネを地域主権自治として貫徹していると思えます。 これは実にすばらしいことです。安易に国の補助金や交付金に頼らず、慎ましやかに虚勢を張らずコムーネを経営しているのです。いくら道路や橋が立派でも、世界から人は集まらず地域は活性化しないことは日本社会が世界に先駆け検証しています。 ミノーリのコムーネの役場にて 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 地中海漁業のまちチェターラの地域海上事務所にて 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 アマルフィ海岸に点在するそれぞれの地域は決して経済的には豊かとは言えません。しかし、人々の暮らしぶりは実に生き生きしていて「豊かさといこい、そしてやすらぎ」が感じられます。 それも地域の人々がその地域ならではの歴史・文化、アイデンティティを大切にし、誇りを持って暮らしているからこそではないかと思われます。アマルフィ海岸の諸コムーネではナポリやローマでは得られない人々の営みを肌で感じることができ、また、訪れる人に優しい地域なのです。 私たちは過去、世界中の多くの国々を歩いてきましたが、これほどあらゆる観点で魅力ある稀有で秀逸な地域は、アマルフィ海岸をおいて他に世界に存在しないのではないかと思っています。 私たちは「成長の限界」で世界的に有名なローマクラブ(The Club of Rome)に10年近く在籍していましたが、仮にローマが滅びたとしても、アマルフィ海岸のコムーネは過去がそうであったようにこれからも持続すると確信しています。 そんな小さくてもきらりと光るまち、それらの小さなまちの有機的な結びつき、そんなまちづくりが今、日本はじめ欧米の先進諸国で求められているのではないでしょうか? 秀逸なトラモンティの農村風景 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 トラモンティのニャンです 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 つづく |