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第3回 アマルフィ海岸自治体の持続可能性基礎調査 2013-6
A Survey on Sustainability of Costiera Amalfitana Comune

初夏のアマルフィ海岸を行く
 7日目

チェターラの”コラトゥーラ”

    青山貞一・池田こみち  2013年6月14日
 独立系メディア E-wave Tokyo  無断転載禁


 2013年アマルフィ海岸現地視察調査報告<125本 全体メニュー>


     
アマルフィ海岸の位置  チェターラの紋章 イタリア国旗

◆チェトーラの魚醤の一種コラトゥーラ

 このチェターラでは、カタクチイワシ(アンチョビ)の内臓を発酵させて加工した魚醤の一種、コラトゥーラ(・ディ・アリーチ)が生産され南イタリアだけでなく、イタリア全土、さらに日本を含め多くの国々に輸出されています。

◆カタクチイワシ(片口鰯、 Engraulis japonicus )

 ニシン目カタクチイワシ科に分類される魚の一種。いわゆるイワシの一種で、人類の利用のみならず食物連鎖の上でも重要な魚です。マイワシ、ウルメイワシと同じくイワシの一種ですが、カタクチイワシは目が頭部の前方に寄っていて、口が頭部の下面にあり、目の後ろまで大きく開くことが特徴です。和名も「口が頭の片側に寄っている」ことに由来しています。また、他の2種よりも体が前後に細長くなっています。分類上でも、マイワシとウルメイワシはニシン科(Clupeidae)だが、カタクチイワシはカタクチイワシ科(Engraulidae)です。


カタクチイワシ(片口鰯)の成魚

出典:Wikipedia

 この地名を冠したコラトゥーラ・ディ・アリーチ・ディ・チェターラ (it:Colatura di alici di Cetara) は特産品としてイタリア各地で売られています。

 このコラトゥーラは、古代ローマ時代にも広く使われた調味料であるガルムの流れを汲むものであるとされています。

 ガルムの製法はローマ帝国崩壊後、廃れてしまい、チェターラで生産されるコラトゥーラはヨーロッパに残った珍しい魚醤となっています。

◆ガルム(garum)

 ガルムは、古代ローマの魚醤です。当時のローマにおいて主な調味料として使われていました。

 ガルムは魚の内臓を細切れにし、塩水に漬けて発酵させて作ります。完成品はまろやかで繊細な風味となりますが、発酵中はひどい臭いがするため、ガルム生産者は近所から苦情が来ないよう都市の郊外で生産したとされています。等級によってガルムはローマ庶民の日常の食品ともなり、富裕層向けの高級品ともなりました。
 
 最高級のガルムはキャビアほどではないものの、高級な香水と同程度の価格で取引されていたといいます。古代ローマのレシピを編纂したアピキウスに掲載されている料理のほとんどにはガルムが使われています。同書には腐敗したガルムを美味しくするテクニックまでもが記載されているそうです。


ガルムの瓶のモザイク画(ポンペイ)

 なお、ワイン(東ローマ帝国ではワインとガルムを混ぜたものをオエノガルム oenogarum と呼んだ)、酢、コショウ、油などと混ぜ、茹でた子牛肉、ムール貝の蒸し物、はては洋ナシと蜂蜜のスフレのような料理にまで使っています。

 ガルムを水で薄めたヒュドロガルム (hydrogarum) はローマ軍団に供給されていたそうです。大プリニウスの『博物誌』によれば、蜂蜜酒のような色にまで薄めたものをそのまま飲料として飲んだといいます。古代ローマではこれが万病に効く薬とされていて、犬による咬傷、赤痢や潰瘍にまで効くとされていまし。さらに化粧品の材料としても使われ、脱毛やそばかすの除去にも使われていました。ガルムは慢性的な下痢や便秘にも効くと考えられていました。

出典:Wikipeida

 チェターラはアマルフィ海岸にあって他の観光地と異なり、まちがいなく現役の漁村であ漁港があり、漁師の村と言えます。

 チェターラの海はローマの昔から「いわし漁」が大変盛んでした。何と、チェターラの漁師たちがもつ漁業の漁法のノウハウを取り入れたいとして、北アフリカ一帯の植民地は18世紀末から19世紀にかけ何とチェターラの漁師たちを招聘して漁を行っていたのです。

 当時フランスの植民地だったアルジェリアやモロッコでは、青魚の保存を行っていましたが、チェターラの漁師の漁法に魅了されるほどチェターラの漁や漁師は地中海の沿岸諸地域で有名だったのです。

 20世紀の中頃に20以上あった片口イワシ用の船は、現在ではわずか2艘になっています。

 上述した古代ローマの人々がこよなく愛した”ガルム”は、アピチョから作られ、黄金のソースと呼ばれていました。 下は現在、コラトゥーラをつくり世界に販売しているDelfino社の公式Webからです。

◆妥協を許さない独自の伝統製法 Delfino社のコラトゥーラ

 アンチョビのろ過液、幻の調味料、Delfino社のコラトゥーラは1950年、南イタリアのアマルフィー海岸を臨むチェターラという街でパスクアーレ・バッティスタ氏の手によって生み出されました。

 毎年3月から7月にかけてティレニア海と地中海で水揚げされたカタクチイワシの頭と内臓を手作業で全て取り除き、樽の中で塩と一緒に約5か月間寝かせます。

 その後、丁寧に不純物を取り除き、濃い飴色に変化したコラトゥーラが完成します。この製造期間中に化学物質や添加物は一切加えられません。

 競合商品が生産性を考慮して発酵工程を短縮する傾向にある中で、Delfino社はひとつの樽から年間200本しかとれないこの製法にこだわり、今日までこの塩漬け方法と厳密な圧搾・ろ過技術を貫いております。

出典:http://www.colatura.jp/about

 このチェターラの片口鰯の魚醤ソースは、とりわけパスタによく合うようです。

 とくにペペロンチーノ のパスタに数滴たらし、まぶすだけで、格段に風味、味わいがよくなります。実際、チェターラにあるリストランテでこのパスタが楽しめます。

 私達は、2011年3月、最初にチェターラを訪れた際、下の写真にありますリストランテでこのパスタを頂きました。値段も値段でしたが、あまりのおいしさに絶句しました!


パスタを食べたチェターラのリストランテ(左側の家)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2011年3月


レストランの外壁にあったチェターラの海岸の絵
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2011年3月

 下の写真は私達が入ったリストランテの看板です。


This photo of Acquapazza is courtesy of TripAdvisor


This photo of Acquapazza is courtesy of TripAdvisor

 下はチェターラのリストランテでパスタを待つ池田です。それにしても、このリストランテでいただいたパスタは絶品でした。


チェターラのリストランテでパスタを待つ池田
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2011年3月

 下はこの店のパスタです。


This photo of Acquapazza is courtesy of TripAdvisor

 下はパスタそれに右奥に「コラトゥーラ・ディ・アリーチ・ディ・チェターラ」があります。ただし、これはリストランテでのパスタではなくWikipediaに掲載されていたものです。


パスタと「コラトゥーラ・ディ・アリーチ・ディ・チェターラ」
出典:vikipedia


つづく