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大気汚染とPM2.5
青山貞一・鷹取敦・池田こみち
環境総合研究所(東京都目黒区)
掲載月日:2013年1月31月
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁


 大気汚染には粒子状物質とガス状物質があり、今回特に問題となっているPM2.5は、粒径が小さな粒子状物質です。肺胞の奧まで入るので呼吸器への影響が大きいと言われています。

 PM2.5の規制については、私も証人に立った東京大気汚染公害裁判の和解条項に原告側から大気汚染の指定物質とするよう要望が出され出され、その後、国が指定物質さらに規制対象物質にしたいきさつがあります。米国ではカリフォルニア州などが相当前から指定物質にしていましたが、日本ではSPM(浮遊粒子状物質)しか規制対象物質にしていませんでした。

 その後、2009年に基準が初めて設定され現行では環境省告示として、SPMと微小粒子状物質(PM2.5) の規制基準を定めています。


出典:Wikipedia

 粒子状の大気汚染物質の種類

■SPM(Suspended Particulate Matter、浮遊粒子状物質)
大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径(空気動力学径、以下同)が10μm以下のもの。粒子径10μmで100%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。PM6.5 - 7.0に相当する。大気汚染の指標として日本などで用いられる。

PM10
大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が概ね10μm以下のもの。粒子径10μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。大気汚染の指標として世界の多くの地域で用いられる。

■PM2.5(微小粒子状物質)
日本では訳語として「微小粒子状物質」の語が充てられるが、日本以外では相当する単語はなく専らPM2.5と呼ぶ。大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が概ね2.5μm以下のもの。粒子径2.5μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。PM10と比べて小さなものが多いため、健康への悪影響が大きいと考えられている。1990年代後半から採用され始め[6]、世界の多くの地域でPM10とともに大気汚染の指標とされている。

■PM0.1
日本では訳語として「超微小粒子」などと呼ばれる。PM2.5よりもさらに一桁以上小さい、粒子径が概ね0.1μm以下(ナノメートルの大きさ)の微粒子を指す。PM2.5と比べて健康影響が大きいとされるが、研究途上にある。

出典:Wikipedia


出典:Wikipedia

 次に、大気汚染の発生源には工場、事業所、発電所などの固定発生源と自動車、飛行機、船舶などの移動発生源があります。東京などは70%以上が自動車など移動発生源、残りが固定発生源ですが、中国では北京が半々ではないかと類推しています。

 移動発生源の場合、PM2.5やSPMは、大部分が直噴ディーゼル車などディぜール車が排出します。ガソリン車はほとんど排出しませんが、中国の場合、古い型式の車が多そうです。また車検もまともに行われていない可能性があります。

 また自動車の場合、Webに掲載したように渋滞があると、一気に大気汚染が悪化します。ディール車では非渋滞時の5−6倍も高くなることもあります。中国もモータリゼーションが進み、大都市では渋滞が頻発している可能性があるはずです。

 最後に、日本への影響ですが、冬場は偏西風に加え対流圏以下でも北北西から北西の風が多く吹くので、日本に到達する可能性が高くなります。私達の自動車排ガスだけを対象とした簡易のシミュレーション(1時間値)では、

http://eritokyo.jp/independent/aoyama-china_airpollusion_toJapan1.html

にあるように、中国から発せされた大気汚染は、九州で何と中国の発生源近くの大気汚染濃度(赤色)の25分の1、また比較的高い大気汚染濃度(黄色)の5分の1の濃度が推計された。もちろん、実際にはNOxのようなガス状の大気汚染とSPM、PM2.5のような粒子状大気汚染とでは、拡散の仕方が異なりますが、おおよその目安はつかめるはずです。

■健康への影響

 人間が呼吸を通して微粒子を吸い込んだ時、鼻、喉、気管、肺など呼吸器に沈着することで健康への影響を引き起こす[8]。粒子径が小さいほど、肺の奥まで達する可能性が高い。

 粒子径以外に粒子の形状や個人の呼吸の速度などにもよるが、概ね5μm以下のものは肺胞にまで達する可能性があるとされる。

 ただし、1μmでは吸入量の1 - 2割が肺胞まで達するのみで残りは呼吸により再び排出される(Soderholm、1989年)。

 20nm (0.02μm)付近が肺胞への沈着が最も多く50%程度とされ、これ以下ではむしろ肺胞よりも上気道への沈着の方が多くなるとされる。

 疫学的には、呼吸器罹患率や死亡率の増加、肺機能の低下、重い症状としては肺の毛細血管への刺激や呼吸困難、肺気腫などが知られている。また一般的に3μm以下のものは健康への影響を及ぼすとの報告がある[8]。ラットにおける実験では、ディーゼル排気微粒子が免疫機能へ影響を及ぼしアレルギーを憎悪させるという報告がある。

 黄砂においてもアレルギーを悪化させるという実験報告があるほか、中国、台湾、韓国では黄砂の飛来時に呼吸器疾患や心疾患、アレルギーが増加したとの論文報告が複数ある[19]。また、PM0.1のような超微小粒子のレベルになると肺以外への影響も懸念されるような血液への移行があるという報告もあるが、研究途上である。

 最も古い疫学的研究としてアメリカにおける二酸化硫黄と粒子状物質の健康影響に関する研究(1974年)等がある。1980年には「一般の大気環境の濃度範囲の粒子状物質や二酸化硫黄が健康な人に死亡を引き起こすような証拠はない」と結論付ける論文が発表されて議論となった事があるが、すでにこの時期には汚染の濃度が低下しつつあり急速な健康影響が生じなくなっていた(長期的な暴露による影響に主題が移っていった)のではないかという考察がある。その後1980年代後半から研究報告が増え、Pope, Schwartzらをはじめとして都市部で日常的に観測される濃度での死亡率との関連性を肯定する報告、長期的な暴露に関する報告が複数発表された。

 (Dockeryら、1993年、Popeら、1995年)をまとめた(新田、2009年)の報告によれば、「ハーバード6都市研究」と呼ばれるコホート研究の結果、PM2.5の濃度と、全死亡および心疾患・肺疾患による死亡の相対リスクとの間で、有意な関連性が認められている。

 また(Popeら、1995年、2002年、Krewskiら、2000年)をまとめた(新田、2009年)の報告によれば、アメリカがん学会の研究を利用しアメリカの50都市30万人を対象に1989年までの7年間(追跡調査では1998年まで)行われた解析調査で、PM2.5の濃度と、全死亡および心疾患・肺疾患・肺癌による死亡との間で、有意な関連性が認められている。アメリカではこれらの研究が明らかになったことを契機にPM2.5の環境基準が設定されるに至った。日本でもSPM濃度と肺癌による死亡との関連性を示唆する研究報告がある。

 各種研究をまとめたWHO(2005年)によれば、PM10が10μg/m3増加した時の1日当たり死亡率は、呼吸器疾患によるものが1.3%(95%CI値 0.5-2.0%)、心血管疾患によるものが0.9%(同 0.5-1.3%)、全死因で0.6%(同 0.4-1.8%)、それぞれ上昇する。またアメリカがん学会の調査を利用したPopeらの研究("ACS CPS II", 1979?1983)によれば同じくPM10が10μg/m3増加した時の長期的な死亡率は、心肺疾患で6%(95%CI値 2-10%)、全死因で4%(同 1-8%)、それぞれ上昇する。

 定量的な推計報告の主な例として、1990年において大気浄化法による規制がなかった場合と比較して年間184,000人が助かったとの推計(アメリカ環境保護庁、1997年)、PM10への短期暴露により8,100人が死亡しているとの推計(イギリス保健省・大気汚染健康影響委員会、1998年)、ディーゼル排気による発癌を被る人は年間5,000人余りとする推計(日本、岩井・内山、2001年)などがある。

出典:Wikipedia


大気汚染に係る環境基準

1 大気汚染に係る環境基準

二酸化いおう
(SO2) 1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ、1時間値が0.1ppm以下であること。(48.5.16告示) 溶液導電率法又は紫外線蛍光法

一酸化炭素
(CO) 1時間値の1日平均値が10ppm 以下であり、かつ、1時間値の8時間平均値が20ppm 以下であること。(48.5.8告示) 非分散型赤外分析計を用いる方法

浮遊粒子状物質
(SPM) 1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下であること。(48. 5.8告示) 濾過捕集による重量濃度測定方法又はこの方法によって測定された重量濃度と直線的な関係を有する量が得られる光散乱法、圧電天びん法若しくはベータ線吸収法

二酸化窒素
(NO2) 1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること。(53. 7.11告示) ザルツマン試薬を用いる吸光光度法又はオゾンを用いる化学発光法

光化学オキシダント
(OX) 1時間値が0.06ppm以下であること 。(48.5.8告示) 中性ヨウ化カリウム溶液を用いる吸光光度法若しくは電量法、紫外線吸収法又はエチレンを用いる化学発光法

2 有害大気汚染物質(ベンゼン等)に係る環境基準

物質 環境上の条件 測定方法
ベンゼン 1年平均値が0.003mg/m3以下であること。(H9.2.4告示) キャニスター又は捕集管により採取した試料をガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法を標準法とする。また、当該物質に関し、標準法と同等以上の性能を有使用可能とする。
トリクロロエチレン 1年平均値が0.2mg/m3以下であること。(H9.2.4告示)
テトラクロロエチレン 1年平均値が0.2mg/m3以下であること。(H9.2.4告示)
ジクロロメタン 1年平均値が0.15mg/m3以下であること。(H13.4.20告示)

3 ダイオキシン類に係る環境基準

物質 環境上の条件 測定方法
ダイオキシン類 1年平均値が0.6pg-TEQ/m3以下であること。(H11.12.27告示) ポリウレタンフォームを装着した採取筒をろ紙後段に取り付けたエアサンプラーにより採取した試料を高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法。

4 微小粒子状物質に係る環境基準

物質 環境上の条件 測定方法
微小粒子状物質 1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること。(H21.9.9告示) 微小粒子状物質による大気の汚染の状況を的確に把握することができると認められる場所において、濾過捕集による質量濃度測定方法又はこの方法によって測定された質量濃度と等価な値が得られると認められる自動測定機による方法

出典:環境省