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長野県の審議会事情(9)
〜先祖返りの「廃棄物新条例案」〜


青山貞一

2008年2月9日



 2008年2月7日、池田さんと一緒に県議会4階で開催された平成19年度最後の長野県環境審議会にでかけてきた。

 今回は年度最後の審議会、案件としては以下に示すように、@長野県地球温暖化防止県民計画、A第四次長野県水質保全総合計画、B希少野生動植物回復事業計画として植物(タデスミレ)、蝶(オオルリシジミ)、雷鳥を絶滅危惧種の観点から長野県レッドデータのより上位に含めるという3つの答申案の最終確認、それに、審議事項ではなく、報告事項として長野県産業廃棄物条例案が議題となっていた。

  (1) 長野県地球温暖化防止県民計画の改訂について(答申)
  (2) 第4次長野県水環境保全総合計画の策定について(答申)
  (3) 希少野生動植物保護回復事業計画の策定について(答申)
  (4) 廃棄物の適正な処理の確保に関する条例案について(報告)

 池田さんはここ4年以上環境審議会の委員として奮闘されてきたが、私が環境審議会委員となったのは田中康夫某が知事選で落選した後からである。

 この一年の公共事業評価監視委員会での最大課題が浅川ダム事業の復帰であるとすれば、環境審議会のそれは梶山弁護士、青山、北村上智大教授が3年かけ案を作った、かの廃棄物条例案であった。

 知事が田中康夫氏から村井仁氏に替わった後、私たちが手塩に掛けてつくってきた長野県の廃棄物条例案から

@準廃棄物としてタイヤなどを廃棄物に含める部分、
A一般廃棄物(の処理施設の協議)に係わる部分、
B発生抑制に係わる部分、
C不法投棄における排出事業者と産廃業者との連帯責任に係わる部分、
D積み替え保管規制強化に係わる部分、
E処理量5トン未満の自社処理などへの許可案件に準ずる取扱に
  係わる部分、
F廃棄物の発生抑制と処理に係わる計画の部分、
G県民協議会など県民参加に係わる部分、
H環境モニタリングに係わる部分、
I行政権県発動請求権に係わる部分、
J内部通報に係わる部分

など、目玉部分がほぼ全面的に削除され、全国各地どこにでもある産廃条例(課長談)とした案となった。上記を削ぎ落とすと、一体、後に何が残るのかと思える内容だ。

私たちが係わった廃棄物条例骨子案を
めぐり2004年5月16日に開催
された長野県民公開討論会
(長野市JAアクティホール)

 <参考>
 信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例案検討の経緯

 しかも、どういうわけか、昨年の秋から審議会に、<審議案件>としてではなく、<報告案件>として3から4回かけられた。

 さらに、私のたちの条例案では、梶山弁護士が案づくりに尽力された、いわゆる「計画協議制度」がある。

 この計画協議制度では、廃棄物処理施設を設置する場合、事業者は行政当局との事前協議の前段階で、知事から諮問を受けた第三者委員会において施設の内容、規模、立地、環境影響、財政担保などを委員との間で協議することになる。

 県民、市町村なども意見を出し委員や事業者との間で質疑ができる。そして第三者委員会での審議内容を知事に答申として返し、知事が修正などを事業者に勧告できるというものだ。

 しかし、県の条例案では、名こそ似ているものの、内容は単に「住民同意」をはずすための苦肉の策の事業計画協議制度として新条例案に盛り込まれている。また建設廃材部分についても似て非なるものとなっている。

 このように、私たちのもともとの条例案が、県自身によって見る影もなく重要部分をそぎ落とされた。

 この間、私は審議会で県との間で多くの質問を出し、また批判してきたが、条例案のどこがどう異なるかについては、長野県弁護士会からの依頼で先に詳細を2時間かけて弁護士に説明し、質疑をしており、また、最近では村井知事の野党となっている複数の会派からの依頼で青山、池田がポイントを説明してきた。

 過去4回の委員会では、廃棄物条例は上述のようにいずれも審議案件ではなく、事務局(県)からの報告事項とされたが、本審議会には梶山、北村両氏がいないので、大部分を青山が県相手に、質疑、批判、説教(笑い)してきた。

 議長も、廃棄物条例問題となると、青山が時間をとって県との間で質疑などをすることに配慮してくれたこともあり、毎回最後の1時間は新廃棄物条例案をめぐり議論をしてきた。

 ただ上述のように、一般廃棄物関連部分が100%そぎ落とされただけでなく、@からJと肝心な「計画協議制度」も、県が「住民同意」手続きを外したい一心で非常に複雑な行政手続きを新条例に入れてきたこともあり、それを中心に対応してきたことになる。

 しかし、村井知事となってから廃棄物行政も180度以前のような燃やして、埋めるだけの行政に戻っている。まさに先祖帰りである。

 現在の長野県が考えた事業計画協議制度は、結果的に廃棄物処理施設をつくるための障害を手続き的に担保するだけのものであり、その点は何度指摘しても県は修正していない。

 2月県議会にチンケな新条例案を上程するそうだが、梶山・青山・北村の案を知っているひとたちからは、まちがいなく長野県の恥と思われるであろう。

 田中県政は県議会と徹底的に対峙したことから、反田中勢力が圧倒的なる県議会議員が、田中県政が出す政策、条例案、施策に徹底的に反対し、没としてきた。これは県民にとって非常に残念なことだ。

 東国原知事や橋本知事(大阪)は、「田中流だけはやらない」と言っているが、だからといって利権やはこもの、借金をなんとも思わない議員らの言いなりになっていれば何のための新知事かということになるだろう。

 都合4年、特別職ではあれ県職員にまでなって廃棄物政策に係わった私からみれば、田中流に問題があったことは間違いないが、それ以上に長野県議会の圧倒的多くの議員が、土建的「はこもの」に執着し、累積赤字なんのそのの体質を依然として持っていることは間違いないところであり、県民にとってプラスになるとも思えない。

 それにしても、トンデモないのは、信濃毎日新聞だ、あれほど田中県政を倒すために、当時、私たちが出すさまざまな政策を、一貫して批判する記事を一面に書きまくっていたのに、今ではどうだろう?

 現在、村井県政はあらゆる政策分野で、後退につぐ後退をしている。なのに、まったくといってよいほど村井県政批判をしていない。結局、地元新聞の信濃毎日は、田中県政倒閣のための政治運動に加担していただけであり、何ら社会の木鐸としての役割は果たしていないということだ。 これが信濃新聞の姿である。

 実に嘆かわしい。実質公債比率で全国ワースト1位から3位の間を行ったり来たりしている長野県の先にあるのは夕張市化であろう!