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長野県の審議会事情(12)
〜大詰めを迎える、浅川ダム実質審議〜


青山貞一

2008年3月2日



 昨年の夏から秋にかけ、第一回目、第二回目ともに青山、梶山両委員が重要案件があり、同委員会を欠席せざるを得なかった。

 その間、おそらく長野県公共事業評価監視委員会として、本来、最も重要な審議議題であるべき、「脱ダム」宣言の原点となった長野市の浅川水系のダム問題が、なぜか長野県土木部の一方的な言い分により、検討委員会で審議する案件から除外された。

 青山と梶山委員は、その後、第三回、第四回に出席し、長野県土木部が浅川ダムを検討委員会の審議案件から除外した経緯につき委員会で徹底的に事務局である県土木部に質問し、多くの回答をえた。

 その結果、県土木部が本委員会に案件としてかけない最大の理由としていた「一端、浅川ダム事業は中止したので、浅川水系の河川整備計画を策定し、有識者の意見を聞き、公聴会を開催し、穴あきダムを国土交通省に認可申請した」といういわば「言い訳」が揺らぐことになった。

 この経緯については、長野県の審議会事情(11)〜公共事業評価委、浅川水系を実質審議〜を参照のこと。

 第四回目の委員会で積み残しとなっていた梶山正三委員から長野県に向けられた「穴あきダム」に関する質問のための第5回目の公共事業評価監視委員会が2008年2月19日、県庁そばの会議室で開催された。

 青山は2月19日よりEUに海外出張のため、第5回委員会は欠席となった。以下は第5回目の委員会を伝える朝日新聞の記事である。

「脱ダム」宣言後も浅川の事業
中止手続きせず 県対応めぐり一時紛糾 公共事業委

2008年2月20日 朝日新聞

 田中康夫前知事の「脱ダム」宣言により旧ダム計画が中止された浅川(長野市)の治水対策で、県は、19日に同市内で開催された県公共事業評価監視委員会(福田志乃委員長)で、脱ダム宣言後も正式に中止の手続きをしていなかったことを明らかにした。同委員会は、県のこの対応をめぐって一時紛糾した。

 県の資料によると、脱ダム宣言後の01年度から07年度まで浅川ダムの事業費はゼロだが、県は国に事業中止を通知せず、継続扱いが続いている。同委員会は事業開始後10年たっても完成しない「ムダな公共事業」をチェックするのが役目だが、県は治水専用の現在の「穴あきダム」計画を旧ダム計画とは異なる「新規事業」だとして、委員会の審議対象ではないと主張している。

 委員の保母武彦・島根大名誉教授は「前の計画とはまったく別の新規事業と言うが、なぜ国への予算要求が続いているのか」と質問。県側は「(脱ダム宣言以前に)国からの補助金で土地まで買ったという実態がある。ダムをやめると国に明確にした場合、補助金を返さねばならず、ダムに代わる案ができるまでは予算上、ゼロ要求を続けた。」と釈明した。

 これに対し、保母氏ら複数の委員が「今の計画は新規事業とはいえず、委員会に諮らないのはおかしい」と改めて主張した。県は「あくまで予算上の話。前の計画は実質的に中止されている」と応じ、一時紛糾した。

 次回は3月14日で、委員会の権限や責任強化を求める意見書がまとめられる予定。(伊藤景子)

 なお、以下は第四回の長野県公共事業評価監視委員会において長野県の事務局が浅川水系でいわゆる「穴あきダム」を委員会にかけず、国土交通省に認可申請したことに対する青山の発言要旨である。

....前略

○青山委員

私が前回の委員会でも申し上げましたが、ダム事業についての行政手続とか、計画確定手続とか、今、言われた法律の運用がどうなっているかについて、この間、その道に詳しい方々に聞いてみました。

 その一部を私のブログにまとめました。このブログは、私が県の公共事業評価監視委員になってからずっと連載しているものです。その7回目で、ダム問題を15年ほど現場で調査している友人から所見をもらった内容を掲載しています。

 その結果分かったこととして、どうも長野県の浅川ダム事業は、県が委員会に説明した中止したから河川整備計画を策定し国土交通省に認可申請したという下りのうち、中止したからという部分がどうも事実ではないことがあります。

 この間、多面的に調べたり、情報を得たり、国土交通省の友達に聞いたり、土木の専門家に聞き、またブログを見た方から寄せられた情報をもとに総括すると、やはり浅川ダムは一端中止していない。

 長野県や国土交通省自身がダム事業に関する適正手続をそれなり踏んいるかどうか、手続を逸脱していないかをつぶさにみたところ、どうも逸脱していると推察できる例が幾つか散見できたのです。

 これは国が直轄でやっているダムでも見えてきた。ところが、それは普通の人に話しても、まずわからないことです。

 浅川ダム事案の流れ方が非常に複雑でわかりにくいが、どうも不自然で、場合によっては国土交通省自身も長野県がおこなってきた手続き逸脱を容認している可能性があります。

 前回、私が帰るときにテレビ局の記者の方からの取材に対応し話した内容、つまり、長野県行政の裁量でこういうことをやってしまっているように思えてなりません。

 そして問題の核心は、このような手続きの逸脱をはたして長野県が知事であれ、副知事であれ、土木部であれ、その裁量で勝手にできるのかにあります。すなわち、この公共事業評価監視委員会の役割との関連で、この委員会にまったくかけず、諮問せず、穴あきダム事業を勝手に国に許可申請できるのかです。

私は浅川ダムをとめるとか・とめないとかという問題以前に、この公共事業評価監視委員会の役割が、先ほどの4つの道路、住宅などの個別事業についての評価監視結果のとりまとめとはよいとして、やはり長野県の委員会では、浅川水系に係わる事業をしっかりと、議論していく、浅川水系に関する事業が本来、行政手続的にも、あと長野県なり全国的に注目を浴びたものですから、それについて議論なり審議して行くべきと思うんです。

 次に、具体的に浅川ダム事業そのものが「とまっているか・とまっていないか」について青山なりの推察結果をお話しします。

 私がこの1カ月調べたところでは、どう見ても「とまっていない」と思えます。前回の委員会でも、事務局から「とまっていない」という、という話しがありました。どなたかちょっと議事録にもあったと思いますけれども、とまっていないというのがあるはずです。

 それは予算面で見ると、この間、長野県はゼロ予算を続けていおり、その後、財務省からダム関連の補助金が出たことからもはっきりしています。

 田中康夫知事時代の穴あきダム関連の朝日と読売の新聞記事を私の資料の中につけてあります。田中さんは、ずっとダムによらない治水ということを言って出てきて、その中でいろいろな案を考えた。

 しかし、一番可能性があると思える案を国土交通省に土木部の担当者が持っていくと、国土交通省はいい返事をしない。その結果、長野県に持ち帰ってくる。

 田中知事時代に「穴あきダム」に近いことも検討したけれども、「穴あきダム」では、少なくともダムによらないと田中知事が言っている以上、それを出すわけにいかない。という中で、最終的に河道内のため池案などを検討している最中、で田中さんが長野県知事選挙で落選し、知事をやめたわけです。

 ということは、浅川水系の河川整備計画の中で田中さんは一つのディシジョン(Decision)はしていないと見れる。いえることは、上記の経緯の中で田中さんが採用しなかった代替案のうちの一つが穴あきダムということになるのです。

 この公共事業評価監視委員会で私たちが委員になる前から委員となっていた岡本先生や梶山弁護士がいらしたときの平成15年時点での委員会で、浅川ダムを中止した。実際、県の配付資料にも書いてあります。

 しかし実質的には行政手続なり、国庫補助の流れの中で浅川ダム事業は中止していなかったのです。その上で浅川水系の河川整備計画の大きな枠の中で代替案の一つの案として、村井さんがそをやっていくということを言い出したと思うんです。それというのは「穴あきダム」のことです。

 「穴あきダム」は確かに田中さんが検討した代替案のうちの、ワン・ノブ・ゼムではあった。ですから、前回も代替案という名前が事務局から出ました。

もし、それが事実であるならば、県が私たちに説明されてきました、「中止したので、そのあとに河川整備計画、河川法のその中で、有識者による委員会を立ち上げ、その中で今回の申請に至った。だから浅川水系の穴あきダム事業は本委員会に諮問しない」というのは、公共事業評価委員会設置の根拠となっている実施要綱に書かれている諸点から判断しても、おかしいと思います。

 昨年夏に県が国土交通省に認可申請し、すぐに国土交通省が認可した河川整備計画との関連で言えば、これは個別事業としての浅川穴あきダム事業の細かい話、設計とかではありません。そもそも提出した河川整備計画はきわめてラフなものですから、仮に国から認可を得たと言って、それで事業がすぐに進むものではないでしょう。

 たとえば「県の裁量でやってしまったんだし、政権が変わったんだから、もうお前たちは余計なことは言うな」というなら、それはそれでいいんです。しかし、県はそういう言い方をしていない。

 となると、どう見ても常識的にみて、また手続き的に見て、この委員会に少なくとも一回は諮問し、私たち委員が審議をして答申をもらうべきです。
 
 さらに認可申請したダム事業の目的が従来の利水と治水から治水1本になっている。しかし、本当に治水を考えるなら、浅川水系における「穴あきダム」がかなり上流にあり、ダムの下流で合流先の信濃川に至るまでに支流がいっぱいあることを考慮しなければなりません。

 長野県は、穴あきダムをそれらの支流にも同じようなことをやるのでしょうか。県が本気で浅川水系に穴あきダムをやるならば、それとを含めて検討すべきであり、私たちもそれを含めて審議すべきです。

 この意味でも公共事業評価監視委員会に一切問わないで、浅川水系で従来の浅川ダム計画とまったく同じ位置に穴あきダムを新規に計画化するというのは、おかしいと言いますか、合点がいかない。

いずれにしても昨年の夏の段階で本委員会の多くの委員は、県土木部の言う平成15年に旧公共事業評価監視委員会で一端中止決定した浅川ダムを、昨年の冬から春にかけ、県土木部が河川整備計画をつくって、その中で有識者に話をし、あとづけであれ県民に公聴会を開き、第一回目の公共事業評価監視委員会の開催前に国に認可申請したことの妥当性や正当性に疑問をもちつつも、委員長が提案した「審議はせず、提言をだす」案を基本的に承諾したと思います。

 でも、事実はどうもそうじゃないことが見えてきたのです。そうなると、議論を蒸し返すのではなくて、私たち委員自身が間違った判断の上に、浅川ダム関連の案件を審議しないとうのではいないと思います。

 ただ残された時間的問題から、委員会として提言を出すのは構わないと思いますが、私たち委員が上記について共通認識がどこまで持てるかということが最大のポイントだと思います。以上です。

○福田委員長

重要なご指摘をいただきました。ほかにご意見はいかがですか。

 後略