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イスラエルが攻撃を
突如止めた2つの訳

青山貞一 

掲載日:2009年1月20日
独立系メディア「今日のコラム」特集:ガザ問題

 イスラエル軍による激しい攻撃が続いていたガザ地区で、2009年1月19日、イスラエル政府が「一方的に停戦」に踏み切った。

 この間、ガザ地区でイスラエル軍により殺傷されたガザ地区に居住する人々は、推定で死者が1300人、うち子供が410人、女性が108人、負傷者が5320人、重傷者が500人にも及んでいる。

 イスラエル政府は突然一方的に停戦した理由を初期の目的、成果を上げたからなどと言明している。仮にハマスの攻撃能力や武器輸出力を低下させるために、世界各国が中止する中、白昼堂々と1300人ものひとびとが無差別に大量殺戮されたのは筆舌に尽くしがたい暴挙である。

 ところで、日本の大メディアは、イスラエルが突然「一方的に停戦した」、しかもイスラエル政府はその理由を初期の目的、成果を上げたなどと垂れ流しているが、イスラエルが停戦した本当の理由は何か?

 イスラエルが今回のハマス攻撃を理由としたガザ地区攻撃を、かなり前から計画していたことはすでに多くの識者が指摘しているが、イスラエルがガザ地区を2008年末に急に攻撃開始し、2009年1月19日に止めたのは間違いなく次の二つの理由によっていると思える。

(1)オバマ政権担当1月20日

 最初の理由は、イスラエル政府、イスラエル軍を徹底的に支援してきた米国のブッシュ政権が2009年1月20日に終演することと関係している。

 筆者は12月30日に書いた論考の中で、「永年、イスラエルの後ろ盾となってきたブッシュ政権が終焉する前に、イスラエルが今回の攻撃(侵略)をしかけてきた可能性が高い」と書いた。

◆青山貞一:ブッシュ政権末期のイスラエル侵略行為

 まさにイスラエルはブッシュ政権が終焉する前に、ブッシュ政権が了承する中で最後の賭にでたのである。

 案の定、ブッシュ政権は国連安保理事会などで、イスラエル停戦決議を安保理事会参加国で唯一棄権している。またライス国務長官は絶えずイスラエルの立場をを擁護する姿勢をとってきた。

 イスラエルは、2009年1月20日にオバマ新政権が誕生することを見越して、1月19日に一方的に停止したのである。

(2)イスラエルの総選挙(2月10日)

 イスラエルがわざわざ停戦協定を破ってガザ地区に空爆を開始したもう一つの理由は、イスラエル内の「バラクとリブニの政争」であると考えられている。

 国際政治の専門家田中宇氏によれば、イスラエルの国防大臣のバラクは好戦派で、労働党の党首であり外務大臣のリブニは戦争を抑止したい外交派であるカディマの党首である。

◆田中宇:ガザ・中東大戦争の瀬戸際

 イスラエルは2月10日に総選挙があるが、好戦派のバラクの労働党は劣勢だったが、ガザ地区攻撃によって、多くのリブニ支持者がバラク支持に回ったと指摘されている。

 結局、イスラエルの各種国際法に違反すると思えるガザ地区への無差別殺戮は、米国ブッシュ政権とイスラエル世界の2つの「ならず者国家」の密接に連携したものであることは明らかである。

 ブッシュ政権は最後の最後まで、世界の「ならず者国家」国家(政権)であったと言わざるを得ない。