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大手製紙会社の古紙再生偽装@
環境省の監督責任は!?

青山貞一・池田こみち

掲載日:2008年1月23日

転載禁


 大手製紙会社による古紙再生偽装の常態化が発覚したが、さらに昨年7月、環境省に提出したグリーン購入法で定めたコピー用紙の古紙配合率引き下げ要望を取りまとめた日本製紙連合会の作業部会メンバーが、配合率偽装を認めた製紙9社の社員で構成されていたことが22日、明らかになった。

 建築確認や食品の賞味期限の偽装に揺れた日本だが、実は大手製紙業界にも再生紙偽装問題があったということは、「環境」をウリとしてきたメーカーの信頼を失墜させた。

 日本の製紙業界には、過去、ダイオキシンの垂れ流し、窒素酸化物大気汚染測定データの偽装(捏造)問題があり、また私たちが15年前、上場企業を対象に行った企業環境認識・配慮度調査でも初年度は一社以外どの会社も回答してこなかったように、環境問題に非常に後ろ向きの姿勢があることは否めない。

  環境総合研究所の企業環境認識・配慮度調査(通称エコダス)報告書
    の発表年度は以下の通り。第1回が1991年度。第2回は1993年度。

    A4判でそれぞれ約160頁(ご関心おありの方は池田こみち副所長に
    御連絡下さい。

    初年度のアンケート対象製紙会社
    中越パルプ、山陽国策パルプ、王子製紙、十條製紙、セッツ、
    本州製紙、三菱製紙、大昭和製紙、大王製紙、神崎製紙、
    レンゴー、北越製紙、東海パルプ、ウェアハウザー、スコット
    初年度の回答企業は中越パルプのみ

 さらに今回の偽装は、単なるモラルの問題ではなく、また過失というよりは意図的に行った行為である。すでに公正取引委員会も本件に関心を持ち取り組み始めているという情報がグリーン購入関連組織の関係者から来ている。

 しかし、騙して再生紙を膨大な量の偽装再生紙を国民はじめ企業、公的機関に売ってきたわけだから、単なる経済犯罪だけでなく、詐欺などで刑事告訴、告発レベルの事件であると認識すべきである。

 問題はそれにとどまらず、グリーン購入法制定、施行により環境保全型製品の調達を各省庁や自治体に義務づけてきた環境省の監督責任、さらに今や全国規模で導入されているISO14001環境マネジメントシステムの認証機関の外部監査能力にも及ぶ可能性がある。

 たとえば、私がいる武蔵工業大学環境情報学部は、日本で最初に大学としてISO14001EMSを取得し、10年近く運用してきた。目的、目標のなかに明確にグリーン購入を位置づけ四半期毎に内部監査において、その達成率を監査し、さらにISO認証機関の外部監査がその結果を一年に一度評価してきた。その目玉のひとつにエコ製品としての再生紙の利用がある。

 今回の製紙業界による偽装は、10年以上に及ぶ古紙再生=環境配慮という全国的な認識を裏切るものであるととともに、エコ製品の実証的な第三者チェックをせず、企業、事業者の自主性にまかせ、カタログに書かれた効能だけでエコマークなどをカネをとり認証してきた環境省の外郭団体のあり方も批判されてしかるべきものと思われる。

 これは単に製紙企業が所定のフォーマットに必要事項を記入し提出すれば、実質的にグリーン購入対象製品としてきた背景もある。グリーン購入ネットワークなどグリーン購入関連機関についは、それを前提にグリーン購入活動を普及させてきた。

 さらに、全国的に拡大した上記のISO14001の信頼性にも大きな影響を与える。というのもISO14001の内部監査、外部監査でもグリーン度はあくまでもメーカーのカタログや製品に示されたマーク、ラベルをペーパー上信頼し、年間膨大な量の再生紙を購入してきた(させられてきた)からである。私も大学で環境管理責任者を3年間勤めたが、従来から危惧していたことが本当になってしまった。

 結局、環境省はじめ省庁が、何の実証的チェックもないままメーカーの自主性にまかせ、カタログ値をもとにグリーン度やエコ製品に、外郭団体が登録料までとり、認定、認証、登録してきたこと自体が由々しき重大事なのである。

 この問題は、環境省やその外郭団体、財団法人日本環境協会などのあり方として、過去何度も有識者や環境行政改革フォーラムなどのNPOから指摘されてきた問題である。単なるメーカーが提出する書類審査だけで審査、しかも高額の登録料を取って認定、登録し、あたかも環境省がエコ製品としてのお墨付きを国民に与えることについてである。

 財団法人日本環境協会など関連する環境省の外郭団体は、従来、いわばお手盛りのエコ製品認証、登録への批判にまともに対応せず、他方、環境ブームに乗って膨大なエコ製品の認証、登録により巨額の手数料をメーカーなどからとってきた背景があることは否めない。

 今回、大手製紙会社による古紙再生偽装の常態化が発覚し、さらに昨年7月、環境省に提出したグリーン購入法で定めたコピー用紙の古紙配合率引き下げ要望を取りまとめた日本製紙連合会の作業部会メンバーが、配合率偽装を認めた製紙9社の社員で構成されていたことが22日、明らかになったことで、ますます環境省の監督責任、認証、登録のあり方に批判が集まるものと思われる。

 また他のエコ製品にも同様な偽装、それもメーカーぐるみでの偽装談合の有無が問われる。

再生紙偽装9社で部会構成 環境省への要望取りまとめ

2008年1月22日 21時37分

 昨年7月に環境省に提出したグリーン購入法で定めたコピー用紙の古紙配合率引き下げ要望を取りまとめた日本製紙連合会の作業部会メンバーが、配合率偽装を認めた製紙9社の社員で構成されていたことが22日、明らかになった。

 製紙連は要望書では提出の理由を「製造工程での二酸化炭素排出量は低減される」などとしていた。しかし、会社の偽装を認識していたメンバーが含まれており、「暗黙の了解」で偽装解消を狙った可能性も出てきた。

 製紙連は、国などに環境に配慮した製品の購入を義務付けたグリーン購入法の基準見直しを目指す作業部会を設置し、昨年7月に3回開いて要望を取りまとめた。メンバーは9社の計12人。

 これら9社はいずれも印刷用紙などで古紙配合率を偽装しており、うち王子製紙や日本製紙グループ本社、大王製紙、三菱製紙など7社は要望の対象の古紙100%コピー用紙を生産し、配合率を偽装していた。

(共同通信)

古紙率偽装が常態化 製紙4社長、謝罪 辞任は否定

朝日新聞 2008年01月18日21時29分

 はがき用再生紙の古紙配合率が実際より高めに偽装されていた問題で、トップが引責辞任を表明した日本製紙に続き、王子製紙など大手4社が18日、はがき以外の幅広い製品でも偽装が常態化していたことを認め、謝罪した。各社は「配合率を上げると紙質を維持できない」などと釈明しているが、顧客は長年だまされていた格好だ。

 王子製紙、三菱製紙、大王製紙、北越製紙の社長らが同日、東京都内で相次いで記者会見。4社の社長は留任し、問題の解明や再発防止に当たる意向を強調した。

 最大手の王子では、古紙配合率の偽装は94年には始まっていたという。中には、再生紙をうたいながら古紙を全く配合していない年賀はがきやコピー用紙もあった。伝票などに使われる「フォーム用紙」の一部銘柄も、公称は配合率約70%なのに約10%だった。篠田和久社長は長年の偽装について「大半はきちんとしている」と述べ、進退にかかわる問題ではないとの認識を示した。

 三菱では、00年用年賀はがきの生産から、配合率が基準値を満たさない偽装が始まったという。40%を求められる年賀はがきの実際の配合率は当初、約20%だったが、古紙の調達難や品質低下などで徐々に下がり、08年用は2.3%だった。佐藤健社長は「配合率を決めるのは工場」とし、自らは問題を把握していなかったと釈明した。

 大王の年賀はがきには、古紙はほとんど入っていないという。07年10〜12月に再生紙として販売した製品には、公称配合率100%としながら7%しかなかったコピー用紙もあった。井川意高(もとたか)社長は配合率偽装の理由について「配合率の基準を満たすのが技術的に無理でも当社だけが『できない』と言うと、受注を失うという疑心暗鬼があった」と釈明した。

 北越も、再生紙はがきの古紙配合率について「当初の96年から1〜5%だった」と明らかにした。再生紙は環境商品として定着しており、三輪正明社長は「確認をおろそかにしたまま受注する営業部門の売り上げ重視の姿勢」を偽装の原因に挙げた。

 各社は、環境に優しい製品を国などが積極的に調達するよう定めた「グリーン購入法」の対象製品のうち、配合率が基準値に満たないものの生産や販売を中止する。同法は、例えばコピー用紙には100%の古紙配合率を求めるなどしている。複写機メーカーも、基準値に満たない再生紙の官公庁への販売を見合わせているため、官公庁では今後、コピー用紙などが不足しそうだ。