筆者を含む日本のアマチュア無線家らは、現在、国(総務省、旧郵政省)を相手取り、新たなIT機器(通称、PLC)の導入が短波帯の電波環境にもたらす甚大な影響について行政訴訟(異議申し立て)を行っている。
※ PLCについて
※ 行政訴訟、異議申し立ての概要
そして、私たちの行政訴訟に類似した行政訴訟が米国でも起こされている。
米国には郵政省に類する連邦組織はなく委員会、すなわち連邦通信委員会(FCC)が行政訴訟の被告となっている。一方、原告は短波帯の電波を使用している米国のアマチュア無線連盟(ARRL)である。
残念ながら、日本のアマチュア無線連盟(JARL)は国相手に訴訟を起こすどころか、早々と国(総務省、旧郵政省)による省令改正によるPLCという新たなIT機器の導入に賛成の意思を表明してしまった。
結果として私たちアマチュア無線家ら115名が国相手に行政訴訟や電波監理審議会への異議申し立てをすることになっている。
ところでこの春、ワシントンDCにある The US Court of Appeals for the
District of Columbia Circuit で判決がでました。判決は、FCCが連邦行政手続法(APA)に違反している、という明快なものだ。
判決では、FCCが新たなIT機器(BPL)を制度的に社会に導入するに際し、本来、利害関係者であるARRL(原告)の意見を十分に聞かなかったとし、(行政)手続上の瑕疵、過失をもとに原告側勝訴を言い渡している。
※ ARRL(NPO)のWebにおける報告
※判決文
もちろん、単に意見を聞かなかっただけでなく実体法(電波法)との関連で法改正によるBPLの社会への導入が甚大な影響、被害をもたらす可能性があるという原告の主張がその前提にある。
主文のなかで、FCCは連邦行政手続法(APA)の要件である利害関係者に告示を行い意見をもらう(the
notice and comment requirements )ことを十分していない(fail to satisfy)と述べている。
日本の行政手続法(1993年、平成5年11月12日法律第88号)では、この法を利用する大部分が事業者、業者で、たとえば建築確認申請が建築基準法の期日以内におりていないので早くおろせなど、国民、市民、NPOなどが活用することが少ないのが特徴だ。
これに対し米国の行政手続法(APA)は、私が生まれた1946年(昭和21年)に制定され、その後、国家環境政策法などの環境法はじめ、多くの手続法に法理を提供してきた。
米国の環境団体、NGO、さらにはハーバード大学ロースクール出身者らで組織している環境訴訟NPO、天然資源防衛委員会(NRDC)の弁護士は、APAを根拠に多くの環境関連訴訟を提起し、多くの成果をあげている。
私たちはあくまで電波行政のもととなっている電波法(実体法)との関連で行政訴訟を起こしていますが、日本の行政手続法を根拠に行政訴訟がどう起こせるかどうか別途検討してみたい。
<日本の行政手続法>
第1章 総 則
(目的等)
第1条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
《改正》平17法0732
処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。
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