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迷走する嘉田知事

〜RD最終処分場問題@〜

青山貞一

2008年5月18日



 嘉田由紀子氏が滋賀県知事になった際、新幹線の栗東駅設置問題が大きくクローズアップされたが、実は滋賀県にはその他にも多くのハコモノ建設に係わる問題があった。

 淀川水系上流でのダム建設問題、ゴミ焼却(溶融)炉建設問題である。さらに全国的に見ても大規模な産業廃棄物最終処分場問題があった。

 このうち、通称「RD最終処分場問題」と言われる産業廃棄物の最終処分場問題では、平成18年12月から平成20年3月まで都合15回にわたって、滋賀県が「RD最終処分場問題対策委員会」を開催してきた。RD最終処分場は、「アール・ディエンジニアリング」最終処分場の略称である。

 滋賀県が長年抱え込んできた産業廃棄物最終処分場を巡る問題でる。高濃度の硫化水素ガスが検出されたことでも全国に名高い「栗東の産廃埋立処分場問題」であり、最終処分場の周辺住民が10年近くも県に対応を訴えてきにもかかわらず、滋賀県がなかなか動かなかった問題である。

 嘉田新知事の公約には、県としてこの問題の解決に向け着手することも含まれていた。

 以下は嘉田知事のマニフェストにおけるRD最終処分場問題への対応に関連する部分である。



出典:嘉田由紀子マニフェスト

 そのため、 一昨年暮れ(平成18年12月)に「RD最終処分場問題対策委員会」が立ち上げられた。

 ※委員会の開催状況

 この委員会は地域住民の代表者が5名、学識経験者が12名さらに処分場がある栗東市の職員1名、計18名で構成されている。

 同委員会には、嘉田知事からのたっての依頼で、筆者の同僚で株式会社環境総合研究所副所長、池田こみち氏、またゴミ弁連会長の弁護士で理学博士でもある梶山正三氏も参加した。

 同委員会では、RD最終処分場及び最終処分場から周辺住宅地に及ぶ環境汚染そして最終処分場に違法に埋めたてられたドラム缶問題などにつき、具体的対応をどうするかについて調査、検討を行ってきた。

 対策調査会における検討の結果は、委員会報告(答申)としてとりまとめられ、平成20年4月9日に知事に提出された。


滋賀県RD最終処分場問題対策委員会の開催風景。
出典:滋賀県


 出典:滋賀県

 同委員会では、RD最終処分場問題を解決するための具体的対策案として、7つの対策工案について議論が重ねられ、今年4月、対策委員会としての案が嘉田知事に答申された。

 対策委員会の推奨意見として出された案は、8人の委員が賛成した廃棄物を「全量撤去する」A2案であったが、7人の委員が賛成する「水を遮る壁をつくり、土で覆って有害物を掘削除去する」D案なども併記された。

 以下は、8人の委員が賛同したA2案。


出典:滋賀県

 以下は、7人の委員が賛同したD案。



出典:滋賀県

 その他、E案などもあったが、上記の2案が全体の大勢を占めた。
 
 地元から5名の委員が入った委員会で最終的に多数の委員が賛成した「全量撤去する」(通称A2)案を嘉田知事が採択するものと思われた。

 だが、嘉田知事は、なぜか対策委員会で推奨案として出された全量撤去のA2案について、廃棄物を運搬する車両の騒音や排気ガス、廃棄物を掘り起こす際の悪臭といった環境問題、また240億円にのぼる多額の財源の確保が困難なことなど経済的観点から同案を選ばず、D案を基本として、今後具体的に対応すると議会で説明した。

 下の記事は、それを伝える琵琶湖テレビの報道。

RD問題 県は委員会と異なる案
http://www.bbc-tv.co.jp/houdou/news/news_week_detile.php?no=11877

栗東市のRD最終処分場問題で、県の嘉田知事は15日、対策委員会が推奨した全量撤去のA2案とは異なるD案を基本に、実施計画案を策定する方針を示しま した。これは、県議会の環境・農水常任委員会で嘉田知事が説明したものです。

この中で嘉田知事は、基本方針に基づいて検討した結果「D案を基本に実施することが適切かつ妥当」とし、対策委員会が推奨案として提出した「廃棄物を全量撤去する」A2案とは異なる、「有害物を掘削除去する」D案を基本に、実施計画案を策定するとしました。

 RD最終処分場問題については、平成18年、地元住民や専門家らでつくる対策委員会が設置され、7つの対策工案から今後の対策 について議論が重ねられました。そして先月、対策委員会としての案が嘉田知事に答申されました。

 対策委員会の推奨意見として出された案は、8人の委員が賛成した廃棄物を全量撤去するA2案でした。しかし委員会での意見も分かれたため、答申には次に賛成の多かった、今回県が選択したD案なども併記されていま した。

 県ではその後、どの案で実施計画案を策定するのか検討してきましたが、嘉田知事は、水を遮る壁をつくり、土で覆って、有害物を掘削除去するD案を選んだことを説明しました。一方、対策委員会で推奨案として出された全量撤去のA2案については、廃棄物を運搬する車両の騒音や排気ガス、廃棄物を掘り起こす際の悪臭といった環境問題、また240億円という多額の財源の確保が困難なことなど経済的な問題があり、選ばなかったことを説明しました。

 以下は、嘉田知事が委員会採決により最終的に第一の対策案とされた「全量撤去」のA−2案ではなく、D2案を採用するのではないかという疑心暗鬼から報道各社が執拗に、知事に迫っている会見の状況である。

http://www3.ocn.ne.jp/~kankyo99/gyousei.htm#tijikaiken

 ではなぜ、嘉田知事は、一票とはいえ、委員会で多数の委員が指示したA−2案を採用しなかったのか? 

 そもそもマニフェストにあるように、

 この最終処分場問題への対応では、嘉田知事は違法投棄の責任を問い、違法投棄物の除去の諸文明例を直ちに行うと言っていたはずだ。さら命令に従わない場合は、住民の健康を第一に考え、行政代執行を含めた強制的な除去処分を行う

とも、言っていた。

 そこには永年、行政としてまとみに産廃業者に対応してこなかった滋賀県の役人の思惑が、また各案への賛成状況を見ると、事務局、役人と委員との関係も見て取れる。

つづく