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迷走する嘉田知事

〜RD最終処分場問題B〜
メディアによる徹底追求

青山貞一

2008年5月24日




 以下は、平成20年5月20日に開催された知事会見の一部である。

 内容は、一億円近くの合計調査費と委員会費をかけ、RD最終処分場検討委員会を15回開き、最終的に委員会で第一候補として推薦されたA2案ではなく、第二候補のD案を嘉田知事が採択したことについて質問するメディア各社への嘉田知事の回答である。主な質疑について示している。 

 出典:滋賀県の知事会見Web。


◆2008年5月20日の知事会見

[毎日新聞]
   4日前に地元で意見交換会されてそのあとの4日後に、委員会で方針を出されたわけですけれども、それについて、決めていたわけではなくというような言い方がありましたけれども、普通に考えれば地元の方でなくても、それは本当に決めてなかったのかというと、にわかには信じられませんし、実際に聞こえてくる声としては、あれはガス抜きだったのではないかという指摘もあります。

   だとすれば、知事が今までおっしゃっていたステップにしたいと、意見を聞くのはステップにしたいと言ってきて、委員会で出されたというのであれば、その経過をご説明ください。どういう形で決定のプロセスになったのか、実際、県の委員会でもプロセスが見えないという声が出ていました。

    もう一つ付け加えるならば、知事は見える県政とおっしゃってるわけで、見える県政と言うのであれば、これが見えなければ、まったく、こういうところが一番重要な部分だと思うんで、先ずはそこをお聞かせください。


【嘉田知事】
    5月11日にご説明させていただいた、まあ30分ほどの全体の説明させていただきましたけれども、そこにおいては、私が就任段階でマニフェストでお約束させていただいたことですね、社会的紛争、特に県政に対する不信が高まっているところでの不信を払拭したい、それから地元の皆さんの安全性を確保したいというところでの、マニフェストの説明をさせていただき、そのマニフェストの中で、事業展開をさせてもらった訳です。

    そのことについても18年の10月に3つの方針を出させていただきました。

    一つは、排出した事業者の責任でございます。あるいは、RDエンジニアリング社の責任ですね、これは社会的に十分に問わないといけないと。

    それから、二つ目が、県の行政対応そのものに問題がなかったかということで、行政対応の検証委員会を作る、そして、3つ目が、まさに安全性を確保するためにどのような対策をとるべきかという、対策工に関する委員会と、その3つの方針のなかで、平成18年の12月以降、委員会などを作り対応をとってきたわけです。

    そして、行政対応の評価委員会では、平成20年の2月25日に報告書をいただきました。この報告書のなかで、大きく二つ課題を挙げていただいております。

    一つは、再発防止ということです。その、再発防止に対して、どのように県が対応するかということで、人的増強なり、あるいは、マニュアル化ということも実質、平成20年度から動き始めております。また、責任体制ということでは、県としてどう責任をお見せするかということも、今検討してもらっております。

    それと、もう一つ対策工でございますけれども、対策工につきましては、15回、まさに大変熱心に議論をいただき、専門部会が7回ということです。その中でA2案が8名、D案が7名、E案が1名というその報告をいただいたわけです。推奨する案ですね。その推奨案の中身について11日にご説明をさせていただきました。

    そのなかで私自身は、地元の皆さんの委員の方4名がA2案を推奨なさっておられる。そして、1名がD案、そして1名がE案という、そういうなかで、A2案についての懸念も、11日にお示しさせていただきました。

    それから、A2案の利点というのはもちろんございます。全てをたとえ13年あるいはそれ以上の年数がかかっても、全ての有害物とみなされるものを摘出するという意味では、大変徹底した案だと思いますが、その具体的なプロセスにおける懸念、二次被害がないかどうか、そして、排出先がどうなのか、長時間かかるというようなところの懸念を表明させていただきました。

    それでも、地元では特にA2案とそれとE案ですね、に対するご要望が多いといういことも、伺いました。その上で、これは知事としての責任でございますけれども、ある方針を示さないと、これはもう一つ制度的な問題でございますが、国の特措法が利用できないと、で、特措法は平成24年が終わりですから24年までに一応の目途が立つということを考えますと、この1、2カ月がぎりぎりであると、時間がぎりぎりであると申し上げたのは、そういうことです。

    もちろん、国の補助を当てにせずに全て県単でということならば、この後どれだけ時間をかけてもいいのかもしれないのですが、私は今の県の状況の中で、先ずは国からの補助が得られるような仕組みを提案することが、知事としての責任だと思いますので、総合的に判断をして、先ずは遮水壁をし、そして内部浄化をするというところでのD案を提案させていただいたわけです。

    しかし、繰り返しになりますが、有害物として何をどう撤去していくのかということについては、これから実施計画を作っていきます。そして地元の皆さんの一番心配しているところは何なのか、ダイオキシンの、まあ残されている焼却炉の問題などもあります。

 どのようにそれを実質撤去していくのか、あるいは土壌の中に残されている有害物をどう撤去していくのかということについては、D案の中にもはっきり書かせていただいておりますけれども、有害物撤去プラスその場での浄化、プラス遮水壁というその仕組みについて説明させていただいて、地元の合意を得させていただきたいと。

  大変長くなりましたけれども、そういう意味でここ2年あまり、本当に考え悩み抜き、また、委員会で随分とみなさん、活発な議論いただきました、それを全て包括した上での5月15日の基本方針でございます。


[毎日新聞]
    追加でよろしいですか。今ご説明わかりましたけれども、普通に考えると、住民の方たちに、言うのが先というふうに思うのが普通じゃないかなと思うんですけれども。

    それと4日前に聞かれて、その4日前の段階では決めてなくて、ほんとに忌憚なく聞かれて決められたということであれば、その4日間に何があったのかと。知事がどのように考えられたのか、あるいは事務方がどういうふうに意見を具申されて、そこに至ったのかという説明が必要だと思います。

    私の言う説明というのは、そこに至るまでの経緯はわかるんですけれども、その4日間に何があったのかということの説明であって、決定のプロセスが見えないと申し上げるので、そこをもう一度お伺いしたいですが。


【嘉田知事】
    はい、それこそ2年も3年も考えてきたことでございますので、その総合的な判断をする時には、まさに清水の舞台から飛び降りるようなことでございますので、それは私自身の過去の資料を見ながら、また今知事としての責任をきちんと表明しなければいけないという決断でございます。

    そういう意味で、その4日間に何らかの働きかけがあったということではなく、これまでの2年以上にわたる、また委員会でも申し上げましたけれども、30年以上日本各地の公害問題の現場を見てきた中で、安全を確保する特に水質汚染、地下水汚染に関する不安を払拭しながら安全を確保するための手法、そして県の政策に対する不信、その払拭をしていくための決断の、自らの決断の時間でございました。

    そういう意味で特別にどなたかからの呼びかけとか、あるいは働きかけということではなく、私自身の決断でございます。


[毎日新聞]
    最後にします。いずれにしても、4日前に住民の方たちと会われているのに、そこでは意見を言われなくて、その4日後に議会に言われているという事実は、非常に重いと思うんですけれど。

    というのは、私から思うとですね、知事として登場された時にですね、県民が何を期待したかという意味でいうとですね、もったいないというフレーズとかありましたけれども、知事が訴えられてきたのは、その前の県政に対する結果責任もそうですけれど、それ以上に政策のプロセスについて、非常に知事は批判をされて、ある程度それが理解を得たのではないかと私は思っていますけれども、そう意味では今回のようなやり方というのは、結果的にその工法の中身と切り離して考えてもですね、批判された前の県政とどこが違うんでしょうか。ということが一つ。

    もう一つ、知事がそれほどおっしゃるんであれば、ソイルセメントの遮水壁については、いろんな意見がありますよね、専門家の中にも、学識者の中にも。果たしてそれはほんとに40メートルの深さの中でできるのか、ほんとに劣化しないでできるのかという問題があります。

    問題がある中で、そこまで総合的に判断して決断されるというのであれば、その職を賭してでも、これに責任を持たれる、その遮水壁について色々疑念あると思うんだけれども、自分はそこまで確信できるんだというお気持ちがあられるのか、それとそれに対するデータというかそういう科学的なものをきっちりお示しになることができるのか、今後ですね、そのへんをお聞きします。


【嘉田知事】
    先ず前半でございますけれども、今回これから地元に行かせていただいて、そしてきちんと地元としての要望、これは有害物はそれこそ一粒たりとも、置いておいて欲しくないという、その感覚的なあるいは、常道的な要望というのはしっかりと受けさせていただき、その常道的な要望を受けさせていただきながら、行政としての判断、特に公的な税金を入れるというところの判断はやはり、社会に示さないといけない、私はそのプロセスがまさに見える県政だと思っております。

    これから、地元に行かしていただく時も、まさに、地元の批判も含めてですね、見せさせて、見えるようにさせていただくことが、私自身の信念だと思っております。

    新幹線の新駅の時もそうでしたけれども、地元のいわば、要望というものを十分に受け止めながら、それがどこまで実現可能かということも含めてですね、県全体としてのバランスなり、あるいは、県民の皆さんに説明するということのプロセスこれは今まさに、始まっているわけですから、全力でそのような方向で進めさしていただいております。

    それをどう評価くださるかは、まさに皆さんご自身の評価になると思います。私自身は、全力で見える県政のプロセス作りについて、あたらしていただいております。

    それから、二点目のソイルセメントの安全性でございますけれども、これは、それぞれの土壌の酸性度などによって変わるということも、その専門家からご指摘いただいておりますので、安全性が確保できる設計をしてくださいというのが、こちらからの要望として、いわば仕様条件として出させていただくものだと思っております。

    そういう意味で、これから具体的な実施設計に入っていく時に、どれくらいの割合で混合しなければいけないのかということも議論させていただきながら、遮水壁の安全性についての情報も公開して、実施設計を実質的に作っていきたいと思っております。


[読売新聞]
    RDの関係ですけれども、知事は工法についてご決断をされたということで、非常に重い決断だったとは思うんですが。

    特措法の問題ですとか、特措法の期限の問題ですとか、RDの問題が喫緊の課題であるというのは、おそらく知事選、知事が就任されたときから、そうであったんだろうし、それをご認識されていたからこそ、マニフェストで書かれていたかと思うんですが。

    ただ、5月11日、就任して、知事もうすぐ2年迎えられようとされてますけれども、マニフェストについてご説明されてですね、1週間前の会見で対策委員会ついても特に法的根拠はないとおっしゃっていましたけれども、RD委員会を肝いりで作られて、1年余り議論されて、5月11日にあえてマニフェストのご説明をされて、これからさらに具体のところは実施計画をつくっていくとおっしゃっていて就任から2年ぐらい経ってその状況なんですけれども、対応がですね、2年かかったということについて、適切だったのか、言い換えれば遅いというふうに認識はされていらっしゃらないのか、そのへんをどのようにお考えなんでしょうか。


【嘉田知事】
    遅いか早いかも皆さんが評価なさることだと思いますけれども、就任直後基本方針、そして対策委員会、検証委員会を設置をして、それぞれ10回以上の検討会議をして報告書をいただきというプロセスで担当課もずいぶん一所懸命やっていただいたと思いますので、そしてこれからですね、できるだけ速やかに次の段階に移るということでは、私自身も一所懸命やらしていただきましたし、担当課も対応をとってきたと思っております。


[読売新聞]
    対策工法についてなんですけれども、住民の方が全量撤去を望まれるのは、ある意味当然かと思うんですが、知事が全量撤去を選択しないご説明は周辺環境、生活環境に支障がでると、だからこそ全量撤去を選択しないんだとおっしゃっていますけれども、そういったご説明の仕方が、ある意味また住民から反発を招くというようなお考えはないんでしょうか。


【嘉田知事】
    反発を招いていることも、その直接の意見伺っております。

    しかし、ほんとに生活環境なり、住民の皆さんの命、健康を心配する立場からしますと、これからあそこに、有害物を除いたとしてですね、濃度の濃い有害物を、ダイオキシンなりあるいは一部の鉛汚染の土壌なども除いたとして、それで、あそこでいわば現場浄化ですね、現地浄化をするという手法と、それを全て運び出すという手法を考えると、やはり私は二次被害の懸念が大変大きいわけです、そのことは5月11日に申し上げたとおりです。

    それに対して住民のみなさんから反発がおありだということも、伺っております。

    しかし、今まで例えば全量撤去を決めたのは、青森、岩手、また豊島などですが、かなり住宅地からも離れていてまた、問題も輻輳しているところでの全量撤去と今回のRDとは、条件も違います。ここで責任を持ってですね、13年かけて全量撤去ですと言うことは、逆に無責任になると私自身が判断した、それが大変重たい判断でございます。

    そういう意味で、一時色々な批判をいただいても、これが地元の皆さんの安全を担保する知事としての決断だと言うことを申し上げたいわけでございます。


[読売新聞]
    何度も申し訳ないんですが、全量撤去について、知事もこの前の県議会でご説明されてらっしゃいましたけれども、いわゆるA2案はできないけれども、他の約400億の撤去については技術的には可能だというスタンスをとっていらっしゃるわけですね。

    ただその一方で、遮水壁を設置する工法をやりますとおっしゃっているわけですね。

    当然住民の方は全量撤去を求めてらっしゃるわけですけれども、おそらく何らかの理由で、県サイドとして全量撤去を選択できない状況にあるんであれば、先ず住民の方に謝罪をするお考えないのかということと、いわゆる、全量撤去で生活環境に支障がありますよというご説明が、言い方大変失礼で申し訳ないんですが、あなたたちのためにもそれがいいんだよというような言い方に聞こえてですね、ある意味上から目線というか、そういったような感じを住民の方が受けてもしょうがないという気もするんですが、そのことについて、大変失礼で申し訳ないんですが、お考えをいただけますか。


【嘉田知事】
    ちょっと追加になりますが、全量撤去が極めて難しいもう一つの理由は、これは安定型廃棄物処分場であって、全てが全部不法投棄ではないということで、県が県費を入れる前の段階で、いわば措置命令をかけるという法的プロセスがございます。

    その措置命令をいわば安定型処分場として、許可したところまで含めて出すというのは、これは法的にも逆に住民訴訟の対象にもなるような、法的課題がございます。

 ここのところが、最初に申しあげました平成18年の事業者責任、あるいは排出者責任に関わる大変大事な法的プロセスです。

    つまり、県が代執行する前に、措置命令をかけるというプロセスが法的にあります。その法的プロセスのところで、全量撤去は極めて難しくなるだろうという判断もあるわけです。

    それから、二点目ですが、住民目線ではなく上の目線だということでございますけれども、まあ住民の皆さんの意見というのも大変多様でございますので、そういうサイレントな部分も含めた形で、私はここは一旦悪役になっても、全量撤去という方針をとれないというのが、知事としての責任でございます。


[読売新聞]
    最後にしますが、今の全量撤去のご説明ですけれども、ある意味制度論のことをおっしゃっているわけであって、それはもうとっくに制度的にそうだということは、就任されたときからだったんじゃないかなと。

  多分住民の方の立場にたてば、何を今更、制度の説明をして、全量撤去はだめだというふうに説明をするんだというところで、逆にその不信感なり、そういったことがより高まっていくんじゃないかという感じを受けるんですが、その点はどうなんでしょうか。


【嘉田知事】
    それは、この間の会見でも、13回目の委員会の時に必要な限度での対策という、その必要な限度というところの資料が、出すのが一部意図的に隠していたんじゃないのかというご質問がありましたけれども、全量撤去というのも、選択肢の中にはあると。

    しかし制度的には極めて難しいというのは、かなりわかっていたわけでございますけれども、そこは特措法使わず全て県単でやるということならば、可能性はあったわけですから、そういう意味でこれは、連立方程式を解くようなものでございます。

  それも、2次3次ではなく、8次9次10次くらいの連立方程式を解くようなものでございますから、個別のx要素y要素だけで、結論がでない、そういう意味で知事としては、連立方程式を解くその結論が、D案を基本にして有害物を撤去し浄化できる内部、現場浄化という仕組みを全力で作っていくというそういう方向でございます。


つづく