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ゴミ弁連シンポジウム in 夕張市
(5)産廃処分場問題シンポ

青山貞一
25 June 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


●ゴミ弁連産廃処分場シンポジウム in 夕張市

 2010年6月20日午後1時から夕張市のアディーレ会館ゆうばり(以下、市民会館)で、ゴミ弁連と地元の夕張メロンと夕張川の水を守る市民ネットワーク(市民団体)の共催による産廃問題のシンポジウムが開催された。

 下の写真はシンポジウムが行われた市民会館である。市民会館は夕張市役所の隣にある。


シンポジウムの会場となったアディーレ会館ゆうばり
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10

 下は市民会館入り口に立つ筆者。


アディーレ会館ゆうばりの入り口にて
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10

 このシンポジウムには、地元夕張市の市民(団体)はじめ札幌市など北海道の他地域、それに本州各地の市民らが参加した。ゴミ弁連から梶山さん(ゴミ弁連会長、山梨県)、坂本さん(事務局長、つくば市)、河田さん(会員、岡山市)らが参加し、環境行政改革フォーラムから青山(東京都市大学、横浜市)、鷹取さん(環境総合研究所、東京)、さらに全国産廃問題ネットワークから藤原さん(市川市)らが参加した。

 下はゴミ弁連シンポジウム2010 in 夕張の開催プログラムである。



 シンポジウムの構成としては第一幕として、地元夕張及び北海道各地から現地報告が行われた。また第二幕として藤原寿和さん、梶山正三さん、青山貞一の講演が行われた。上記を受け会場との交流(質疑)が行われた。

 下は開会の挨拶をする坂本博之ゴミ弁連事務局長。



開会挨拶する坂本博之ゴミ弁連事務局長
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10

 現地からの報告では、産廃安定型処分場の計画地周辺には、レッドデータブックにあるような希少な生物が生息しているという熊谷泰昌・福本昭男両氏による「夕張産廃問題と希少生物」の報告がなされた。



 次に矢野牧夫氏による 紅葉山「産廃」処理場予定地の地質学的環境 がなされ、計画地周辺の自然・生態系・地質などの実態がよくわかった。


 下の図は計画地の地形、地質の想定される断面図である。計画地周辺は、河岸段丘となっており、棚田状態となっている段丘に処分された廃棄物の上に降った雨水や融雪水が地下水となって第一段丘から第二段丘、第二段丘から第三段丘へと流れ最終的に谷間を流れる川に合流することになる。


現地報告する矢野牧夫氏(元北海道開拓記念館学芸部長)
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10



 そして矢野氏は、以下のように推定している。



 計画されている最終処分場は先に述べたように、素掘りの安定型最終処分場であるから何ら遮水構造ではなく、しかも水質浄化装置がつかないから、廃棄物によって汚染された水は河川水を汚染することになる。また当該地域は地質学的に見て非常に脆弱な地域なので、崩落や地滑りにより廃棄された産廃が河川に流れ込む可能性も高いとされる。

 下は第二幕で講演する梶山正三弁護士。


講演する梶山正三氏

撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10


講演する梶山正三氏
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10

 また以下は梶山氏の講演要旨である。

北海道夕張市・産廃処分場シンポジウム 
於:夕張市民会館 2010年6月20日

    ゴミの埋立処分をめぐって
 
                 梶山 正三 

1 ゴミってなんだろう?
 (1) ゴミとゴミでないもの
  ・諸悪の根源(その1)〜有価物解釈

 (2) ゴミの分類に関する3つの視点
  ・ストリームとコンポーネント
  ・事業活動と家庭生活
  ・特別管理廃棄物

 (3) こんなに難しいゴミの分類〜できの悪い法律に現場は大混乱
  ・汚泥/残土の違い「くるぶし」基準
  ・出版社の紙くずとオフィスの紙くずはなぜ違うの
  ・発生主義と卒業拒否・・・乾燥しても、混ぜてもダメ
  ・廃タイヤは「ゴムくず」じゃない?
  ・全く同じゴミでも、産廃と一廃で取り扱いがこんなに違う
  
2 ゴミの「処理」の責任・許可制・費用負担
 (1) ゴミ「処理」の方法と原理
  ・再資源化も「ゴミ処理」
  ・中間処理と最終処分
  ・全ての道は不法投棄につながる
  ・サーマルリサイクルという名の不法投棄
  ・横行する「エセ堆肥」製造業

 (2) ゴミ処理の責任・許可・費用負担
  ・誰がゴミ処理の責任を負うの?
  ・許可制度は、こんなに悪用されている
  ・諸悪の根源(その2)〜自社処分
  ・マニフェストはこんなに欠陥だらけ
  
 (3) 家庭ゴミ「有料化」は根本的誤り
  ・誰が、ゴミ処理の費用負担をしているの?
  ・末端消費者に全てのツケを回す構造
  ・「有料化」は誰のため?

3 ゴミの「最終処分」のウソ
 (1) ゴミ埋立処分の本質
  ・埋立は化学変化・希釈・拡散の仕掛け
  ・悪化する埋立ゴミの質
  ・モニタリングが維持管理の要(かなめ)だが、最もなおざりにされている。

 (2) ゴミ埋立地の欠陥と危険
  ・20年間も放置された「ロクデナシ」埋立地
  ・管理不能の「管理型」、安定しない「安定型」
  ・しゃ水工は破損しなくても有害物質を透過する
  ・「遮断型」って何を「遮断」するの?
  ・収拾のつかない巨大処分場
  ・埋立地の危険性は、事業者と行政の「ウソ」に覆い隠されている。

 (3) 日本のゴミ行政は「埋立地至上主義」
  ・オオカミおじさんたちは何を言ったか
  ・埋立地過剰の現実
  ・「環境保全」とは建前論〜環境破壊施設としてのゴミ埋立地

4 ゴミ処理業者・監督行政・周辺住民の関係
 (1) 行政の決まり文句の大嘘
  ・基準を守れば環境を破壊しない?!許可せざるを得ない!?

 (2) 事業者と行政の二人三脚の実情
  ・警察官なのに「泥棒をたしなめる」だけ
  ・無許可設置の焼却炉も「許可をとりなさいね」とやさしい
  ・法違反の行為は、見ても見えず
  ・諸悪の根源(その3)〜行政基準(排出基準、環境基準、
   溶出基準、構造基準、維持管理基準)

 (3) 放置行政が招く実力対決
  ・法律はオレたちを守ってくれない〜実力行使に向かう住民
  ・合法的封鎖活動のススメ
  ・あり得る解決〜ゴミ埋立地管理における住民主権の確立

5 住民運動は甘ったれ
 (1) 住民運動と市民運動
  ・住民はむしろ旗を立てよ
  ・日本の市民運動は、傍観・慈善・観客?

 (2) マニュアルと書式
  ・ある電話から〜凄い人たち
 (3) 住民運動は「太ったブタ」?
  ・結局は、「行政依存」から一歩も抜け出せない。

 (4) 地域の生活環境の保全は住民の「自決」原理で
  ・住民がダメな地域は自滅すべし

                               (終)

 梶山氏に引き続き筆者(青山貞一)が講演した。


講演する青山貞一
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10


講演する青山貞一
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10

 下は青山の講演要旨である。

北海道夕張市・産廃処分場シンポジウム 
於:夕張市民会館 2010年6月20日

   環境汚染から見た産廃処分場と不法投棄
   
              青山貞一
              環境総合研究所所長
              東京都市大学 環境情報学部教授
  
1.はじめに

2.廃棄物処理法と産廃

  2−1 廃棄物の種類と問題点
  2−2 産廃に関連する許可(業・施設)の内容と問題点
  2−3 産廃に関連する行政指導・処分(勧告・公表・命令)と問題点
  2−4 立ち入り検査とその問題点
  2−5 刑事告発

3.最終処分場の種類と構造
  3−1 安定型最終処分場と処分できる廃棄物(安定型5品目)
  3−2 管理型最終処分場(上記以外の焼却灰などを含む産廃と一廃棄)
  3−3 遮断型最終処分場(飛灰や特別管理廃棄物)
  3−4 廃棄物処理法施行前の処分場

4.有害物質と環境・健康への影響の経路
  4−1 地下水への浸透による汚染の流出
  4−2 処理水・浸出水による汚染の流出
  4−3 周辺地域への飛散による汚染の拡散
  4−4 農作物・魚介類への蓄積
  4−5 人体への摂取

5.有害物質による健康への影響
  5−1 有害物質の種類
    焼却灰に含まれるダイオキシン類、重金属類など
    感染症を伴う汚染物質(医療廃棄物)
    揮発性汚染物質(VOC)、準揮発性汚染物質(セミVOC)
    農薬・殺虫剤・除草剤系有害物質、劇薬・毒薬
  5−2 人体への影響
    急性毒性、亜急性毒性
    慢性毒性(発ガン性、催奇形性、生殖毒性、免疫毒性など)
  5―3 健康影響と健康被害

6.最終処分場に係わる汚濁物質・有害物質測定の種類と問題点

   汚染、汚濁、有害物質などの測定は測定項目(水質、底質、土壌、
   大気)測定場所、季節、時間、分析の方法(溶出分析、含有分析
   など)、さらに分析の技術的方法により、著しく結果が異なる。業者
   まかせの測定結果は信用できないことが多い。第三者によって住民
   団体立ち会いのもと客観的に測定し全面的に公表する必要性がある。

 6−1 水質測定の対象となる水
   @公共用水域(河川・湖沼・海などの環境水)
   A地下水(帯水層、井戸水など)
   B浸出水(安定型処分場などからにじみ出てくる水)
   C処理水(工場・事業所など)
   D処理水(管理型最終処分場などの処理水)
   Eその他  最終処分場内部の観測井戸水、最終処分場周辺の
    観測井戸水

6−2 処分場処理水、浸出水、河川水と底質中の
    有害物質の測定と基準

    水とくに河川などの環境水は流れているのでサンプリング及び測定が
    非常に難しい。大雨の後では、希釈され非常に低くなることが多い。
    そこで川底などに溜まった泥(底泥、底質)中の汚染物質、有害物質を
    測定する。

6−3 処分場周辺の土壌中の有害物質などの測定と基準
    最終処分場からは風、台風などにより汚染物質が周辺地域に飛散、
    拡散する。大気汚染の測定は難しいので、土壌中の有害物質を
    測定する。
 
6−4 国際標準からかけ離れた日本の分析方法の問題点
    日本では、たとえば環境省告示で行われている重金属類の分析で
    欧米とかけ離れた方法で分析している。そのため分析値が著しく低く
    なる可能性が専門家から指摘されている。また日本独自の「計量証明」
    書は国際的には通用しないことが多い。それらの問題点を具体的に
    指摘する。
  
7.具体的事例
7−1  茨城県竜ヶ崎市 (廃棄物処理法制定・施行以前、一般廃棄物
     焼却場+不法投棄)
7−2  東京都日の出町 (管理型一般廃棄物広域最終処分場、
     約260万m3)
7−3  横浜市南部地域 (市民参加の土壌汚染調査)
7−4  沖縄県読谷村  (安定型最終産廃処分場)
7−5  福岡県筑穂町  (安定型最終産廃処分場)
7−6  沖縄県宮古島  (安定型最終産廃処分場+焼却炉)
7−7  香川県豊島・直島(廃棄物処理法制定・施行以前、産廃
     不法投棄+野焼き)
7−8  滋賀県栗東町  (安定型最終処分場+焼却炉、約70万m3)

 講演後、限られた時間であるが会場と質疑応答を行った。


質疑応答
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10


 シンポジウム終了後、夕張、札幌の市民団体と一緒に記念撮影。


シンポジウム終了後、夕張、札幌の市民団体と一緒に記念撮影
撮影:鷹取敦、Digital Camera Casio Exilim EX-H10

 そもそも安定型最終処分場に処分する産廃が夕張メロン栽培用のビニールハウスのビニール(廃プラスチック)なら、何も秀逸な自然を破壊し、清浄な河川の水を汚染してまで処分場を建設する必要はないだろう。

 下の写真は夕張メロン栽培用の大型ビニールハウスである。

夕張メロン栽培用ビニールハウス

 もちろん新技術による廃ビニールのリサイクルもある。また近くにある室蘭や苫小牧にある製鉄所などの高炉の還元剤として廃プラを使用する手もあるはずだ。そうなれば、廃プラは廃棄物ではなく有価物にもなるはずである。

 
ただし、これらはいずれの場合もビニールが「塩化ビニール」でない場合だ。

 もし、現在使っているビニールが塩化ビニールなら、素材を他のものに変える必要もある。

 いずれにせよ、「夕張メロン」をつくるためにすばらしい自然や生態系のなかに「産廃処分場」を建設するのはおかしいし、そぐわない。


 シンポジウム終了後、ホテルで懇親会を行った!

つづく