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国土交通省による平成22年度4月に実施した品木ダム関連水質調査結果から抜粋
上のデータを見ると、草津温泉を源流とする「湯川」の場合、中和前のpHが2.1、「大沢川」の場合、中和前のpHが3.0、「谷沢川」の場合、中和前のpHが3.0といずれも強酸性であることが分かる。 他方、石灰により中和処理後の「湯川」、「大沢川」、「谷沢川」のpHは、それぞれ5.8、4.7、5.3とかなり中和されていることが分かる。 さらに、「品木ダム」のpHは、湖心、放水口、放水口上流、放水六合下流でそれぞれ5.3、5.5、4.8、5.0であり、上記の各河川の中和直後の値とほぼ同じになっていることが分かる。 ここに大きな問題が横たわっていた! それは「品木ダム」では、定期的に中和処理に使った石灰と重金属を含む土砂を浚渫し、浚渫土砂を定期的に近くに国土交通省が群馬県の許可を得て建造した処分場(土捨場と言っている)に処分している。 だが、その浚渫土砂に基準(含有、溶出)を数10倍から数100倍も上回るヒ素が含まれていることが分かった。しかも、測定分析は国土交通省自身が測定業者に委託して実施している。 上の測定分析結果の一番下の段を見ると、ヒ素という項目があり、中和前の「湯川」で1.18mg/L、中和後でも0.932mg/L、さらに「品木ダム」の湖心で0.163mg/Lと河川水や湖水中のヒ素の濃度が非常に高いことが分かる。また「湯川」の品木ダムへの流入端水のヒ素濃度には、4.15mg/Lという高濃度も記録されている。実に環境基準の415倍である! ヒ素を含む河川、地下水の環境基準は0.01mg/Lであり、、飲料水のヒ素の基準も0.01mg/Lである。 河川水や湖水に含まれるヒ素の濃度がこれだけ高いのだから、それが「品木ダム」の湖底にヘドロ状となって沈澱している土砂(底質)には、非常に高濃度なヒ素が含まれることは容易に想像がつく。 ちなみに国土交通省が行った品木ダムの湖底をGLとし、そこから1m、2m、4m、6m、7mと掘った地点の底泥中のヒ素を含有量分析した結果をみると、800〜5300mg/kgと、まさに土壌汚染に関わるヒ素の環境基準(150mg/kg)、田の土壌中のヒ素の基準(15mg/kg)の数10から数100倍もヒ素が含まれていることが分かった。 ◆世界各国のヒ素(As)に関する基準一覧(pdf) 問題は、国土交通省が処分している高濃度の有害化学物質が含まれる浚渫土砂は、明らかに産業廃棄物であるにもかかわらず、素掘りの安定型最終処分場に処分されていることだ。 国の廃棄物処理法では、この種の汚染土砂は、ビニールシートなどによる厳重な遮水工と水処理施設がある管理型最終処分場にしか処分できないことになっている。 森林を伐採した土地に浚渫汚染土砂をダンプで移動し、素掘りの土地に処分すれば地下水や周辺の表流水を汚染することは目に見えている。 品木ダムとその周辺にある浚渫汚染土砂処分場(図中ブルーで表示) の位置図 出典:国土交通省 ひとくちで言えば、国土交通省自身が「不法投棄」をしており、本来それを取り締まるべき群馬県が違法に許可を与え、しかも何らまともな立ち入り検査も行政指導もしていないことになるのである。いわば国土交通省と群馬県は「不法投棄」問題について「共同正犯の関係」と推測できるのではないか!? 私たちの浅間山系の吾妻川と白根山系の白砂川で水質調査を行う目的は、上述してきた問題点を可能な範囲でできるだけ客観的(物理的、化学的)に検証するとともに、廃棄物処理法など司法面からも仮説を検証することにある。 下は、上記について取材した朝日新聞の記事である。 ◆八ッ場ダム上流で国交省、基準の370倍のヒ素汚泥を投棄 朝日新聞 2010年4月15日号 http://www.eritokyo.jp/independent/aoyama-col120367.htm つづく |