以下は昨日(8/21)、千葉地方裁判所であった千葉県が産廃業者に出した許可を取り消す行政訴訟(処分取り判決についての朝日新聞記事である。
管理型の最終処分場では、日本初の行政訴訟での勝訴、画期的な判決である。担当弁護士はゴミ弁連所属。ゴミ弁連は、約100名の環境弁護士により結成されている。青山は技術顧問。
◆千葉県の設置許可取り消す判決
産廃処分場めぐり千葉地裁
朝日新聞 2007年08月21日
千葉県旭市(旧海上町)、銚子市、東庄町にまたがる産業廃棄物最終処分場の建設計画をめぐり、周辺住民らが、県の設置許可の取り消しを求めた行政訴訟の判決が21日、千葉地裁であった。堀内明裁判長は「事業者に処分場を維持・管理する経済的基盤がなく、周辺住民が重大な被害を受けるおそれがある」と指摘し、県の設置許可を取り消した。環境省によると、知事が出した産廃処分場の設置許可を取り消した判決は全国で初めて。
判決は、事業者の収支計画では、埋め立て完了までに多額の赤字が発生すると指摘。資金のほとんどを借入金で調達しており、その返済を優先すれば、(1)遮水シートなどによる有害物質排出防止や維持管理に必要な資金が不足する(2)当初の計画以上の産業廃棄物の受け入れを行うなどの不適正な処分を行わざるを得なくなると判断し、「有害な物質が許容限度を超えて排出され、生命、身体に重大な危害を及ぼす災害を引き起こす事故が想定される」として、設置許可は「違法な処分と言わざるを得ない」と結論づけた。
同処分場設置をめぐっては、県が99年、処分場内の装置が計画通りに機能することが困難だとして不許可処分とした。しかし、事業者側の行政不服審査請求を受けて、当時の厚生省が不許可処分を取り消し、県は01年に建設を許可していた。
武蔵工業大学の青山貞一教授(環境政策)は「操業前に、県知事が出した許可を取り消すのは非常に画期的だ。今後、同様の裁判に与える影響は大きい」という。
県は「判決文を詳細に読んで、今後の対応を検討したい」としている。
同処分場は、汚泥など地下水を汚染する産廃を埋め立てることが可能な管理型最終処分場で、面積約6.7ヘクタール、埋め立て容量は約114万9000立方メートル。
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以下は裁判を担当した坂本博之弁護士からの報告である。
坂本博之です。
本日、千葉地裁で、千葉県海上町管理型処分場の設置許可処分取消行政訴訟の判決があり、住民が勝訴しました。
本年1月の業者相手の建設差し止め訴訟に引き続き、住民側勝訴です。争点は、@いつもの原告適格、A適用法令、B技術上の基準を満たしているか、C経理的基盤があるか、などでした。
@の点は、廃掃法は処分場周辺に居住し、当該施設から有害な物質が排出された場合に直接的且つ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命・身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含む渡海するのが相当として、飯岡台地に居住し(地下水が広くつながっているという理解)、住居や畑で焼却灰を含んだ大気を吸引する可能性がある者として、原告6名中2名に原告適格を認めました。
Aの点は、本件許可申請が平成10年6月8日、設置許可処分が平成13年3月1日だったので、平成7年法が適用になるのか、平成12年法が適用になるのかが問題となりました。なお、その中間に平成9年改正法があります。判決は、原則として平成7年法が適用となり、平成12年法で実質的に平成9年法を改正したものは平成12年法が適用になる、という非常にわかりにくい解釈をとりました。
Bの点は、技術上の問題点はないという判断です。
Cの点は、業者が事業開始資金として予定していた約70億円の外に、予定地についていた様々な担保権を抹消するために36億7200万円の資金を計上する必要があり、その資金調達の裏付けを欠いていたし、しかも、そのことは登記簿謄本を確認すれば容易に判ったはずなのに、千葉県は十分な調査を行わなかった、というものでした。
判決後の記者会見の後、県庁に行きました。堂本知事は不在で、副知事にも会えませんでしたが、担当課に「控訴するな」という申し入れをしました。取り急ぎ、ご報告いたします。
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