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民営郵政が始動 資産338兆円
 日本郵政と4事業会社に分社

出典【大前研一ニュースの視点】

掲載日:2007年10月12日


 以下は、━ 世の中どうなってんの…?大前さん!! 
━━発行部数 141,337部━ 大前研一 『 ニュースの視点 』  2007/10/12  #183 から民営郵政が始動 資産338兆円 日本郵政と4事業会社に分社を全文転載でたものです。

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 民営郵政が始動 資産338兆円
 日本郵政と4事業会社に分社
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●約束を果たすことなく、始動する郵政民営化

1日、郵政民営化がスタートしました。

独立行政法人の日本郵政公社は持ち株会社である日本郵政の下に4つの事業会社を分社し、

社員数24万人、店舗数2万4千店、金融2社の資産が338兆円という巨大グループに生まれ変わりました。

これは、1987年の国鉄以来の大規模な国営事業の民営化の例となります。

小泉内閣の目玉の1つであった郵政民営化がいよいよスタートしましたが、事前に民営化作業委員会で議論されていたことが実現されるのか、私は甚だ疑問に感じます。

1つには、民営化後も、裏では国債を購入し、結果として国の借金を国民に肩代わりさせる財務省の狙いには、以前と何ら変わりがないのではないかと思います。

また、先日発表されたように、金融庁は、ゆうちょ銀行に対し、新BIS規制に基づく監督を特例的に緩める方針を固めています。

貸出先債権を厳格に分類すると、結果として国の関連事業に関与している会社が破綻懸念先と評価される可能性が大いにあるからでしょう。

しかし、それを避けるがために、特例扱いにするというのも、理にかなわない話だと思います。

「民業を圧迫しない」「4つの郵政事業はそれぞれ独立させる」という点も含めて、私はあらゆる約束(前提)が守られないと見ています。


●民営郵政の真の問題点は、土地資産を国民に返却していないこと

日本郵政は、他の民間企業と比べて金融実務に関する実力が不足していると懸念している人も多いようです。

例えば、ゆうちょ銀行やかんぽ生命はデリバティブなどの高度な運用手法を取り扱えるよう監督官庁に申請をしましたが、

これまでほとんど国債しか運用したことがない両社が適切に運用できるのか懸念する声があります。

もちろん、このような一面はあると思いますが、私は心配していません。

ゆうちょ銀行社長の西川氏が、デリバティブなどの高度な業務を担当できる実力のある人材を揃えると推測しているからです。

むしろ、私は、土地という優良な資産をきちんと国民に返さずに、かつての国鉄のときと同じような有利な条件だけを手にして民営化が進んでしまうことを懸念しています。

東京中央郵便局をはじめとして、他の民間企業では考えられないような駅前一等地に優良な不動産を数多く抱えていますが、

本来、これらの土地は国民のものです。

本当の意味で民営化を実現するためには、まずはこれらの優良資産を売却することが必要なのです。

国鉄民営化の際にも、結局、土地という優良資産が国民に返却されることはありませんでした。

むしろ結果としては、国民は国鉄の借金だけを担がされました。

今回の郵政民営化も同じ構図です。同じトリックにはまらないために、土地・ロケーションという資産は国民に返すべきだと私は強く主張したいと思います。

                          以上

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 大前の視点いかがだったでしょうか。

 今からでもこの問題に対して、国民が主張をすることは 遅くないと思われた方も多いのではないでしょうか。

 本当に、その通りだと思います。

 国営化から民営化とはどんなことかを、正確な情報を集めて考え、そして本質的な問題を 国民1人1人がしっかりと理解することができれば、完全民営化する前にしなければならないことを、国民自ら、国に発信していくことができるのです。

 自分には直接関係なさそうな事であっても「本質を理解する」ことで、見えてくる範囲は大きいものです。