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第四権力の横暴!?

鉢呂「脱原発」大臣辞任劇
青山貞一
 

掲載月日:2011年9月14日
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 これほど不可解きわまりない新任直後の大臣辞任劇もないだろう。
 
 昨日、大学の同僚と昼食をともにしたとき、鉢呂前経産大臣の辞任劇が話題となった。昔から大マスコミは第四権力と言われるが、今回の辞任劇ほどマスコミの横暴が顕著に現れたことはないと言えるのではないか?

 自民党時代を含め、この5年で6人の総理が替わったこと(以下参照)や多くの大臣が辞任に追い込まれた背景に、本来国民にとってそれほど本質的な問題でないことを、ある大マスコミがことさら大々的に報道することで、結果的に他の大マスコミが追随し、与野党間での政局化を恐れることで辞任に追い込まれることが多い。

安倍晋三   2006年9月26日- 2007年9月26日 366日
福田康夫   2007年9月26日- 2008年9月24日 365日
麻生太郎   2008年9月24日- 2009年9月16日 358日
鳩山由紀夫  2009年9月16日- 2010年6月8日  266日
菅直人     2010年6月8日- 2011年9月2日  452日
野田佳彦   2011年9月2日-

 とくに今回の一件は、きわめて不可解である。

 たとえば、福島原発近くの町に何度となく足を運んできた筆者にとって、鉢呂前大臣の「死の町」発言は、まさに言い得て妙である。前大臣は本当のことを素直に表現したに過ぎないのである。

 それを文脈のあるフレーズだけをえぐり出し、ことさら大仰に報道したことこそ問題ではないか。しかも鉢呂前大臣は、何も福島県民を死の底に追いやったわけでもない。実直に現実を表現しただけである。

 もとより、鉢呂前経産大臣の言動を見ていると、松下政経塾系の幹部政治家らが表向き脱原発をにおわす発言をしながら、その実、自民党別働隊として原発騒動が一段落すれば原発を推進するような政治家であるのとは、違うように見える。

 鉢呂前大臣は、かなり本気で脱原発を考え、政策化しようとしていたのである。

 そのために、経済産業省の組織や「原子力村」に象徴される強引な原発推進研究者らによる今までの体制を本気で改革しようとしていたことが、会見はじめさまざまな言動から推察できる人物である。

 となれば、鉢呂前大臣の脱原発本気度を察知した既得権益の上にあぐらをかく「政官業学報」の先兵、そして第四権力の大マスコミが、前大臣を何とかして陥れようと虎視眈々、前大臣の言質をとろうとしていたことは想像に難くない。

 これは自民党の河野太郎議員の以下の言葉からも明らかであろう。

 鉢呂経産相は、野田総理の原子炉の新規立地はしない、耐用年数が来たものは確実に廃炉にするとの方針を着実に進めようとしていたし、それを実現するためのかなり大胆な人事を考えていた。

 経産省内外の抜擢すべき人物の発掘を多方面に依頼していたし、ガンとよばれる幹部の異動も考えていたふしがある。

 個人的にはかなり期待していただけに残念だ。


 河野議員は周知のように、自民党にはいるが、反原発、脱原発を永年、旗幟鮮明にしている点を割り引いても、鉢呂議員がどんな人物なのかを知るには十分な発言内容である。

 一方、 鉢呂経産相の辞任について、和順庭の四季おりおりというブログに筆者は次のように述べている。

 記者へ放射能をなすりつけたとか、「死の町」発言によるとか言われているが、辞任まで追い込んだのが、どこの誰だか調べてみても、はっきりしない。

 ........

 オフレコ出席できるのは、クラブ詰の記者だけである。極端な話、記者全員が一致団結して大臣のコメントを捏造することさえ可能だ。本来オフレコのはずの、それも真偽の定かでない発言が表に出てきたのが不思議である。

 鉢呂氏の辞任会見を聞いても、言ったような言わないようなと、はっきりしない。結局、辞任理由ではっきりしているのは、辞任会見で本人が認めた「死の町」発言だけ。

 ........

 この辞任記者会見では、鉢呂氏が今までどれだけ一生懸命原発問題に取り組んできたかということが印象づけられ、質問している記者の横柄さばかりがめだつ。こんな記者たちに言葉じりをとられて辞めるより、被災地の苦しむ者たちのために、続けてもらいたいとだれもが思ったことだろう。

 脱原発の旧鉢呂大臣と原発再稼動の新枝野大臣。安全デマの大臣に変えたことが野田政権にとって、今後どのようになっていくか。前途多難の道のりとなることだろう。


 まさにその通りである。

 大マスコミだけのなれ合い記者クラブでは、以前からオフレコでの大臣の発言をめぐり何度となく、どこかの記者が記事を飛ばすと、およそ裏取り、事実確認がないまま、他社もメディアスクラム的、一方的に記事化し、その流れが津波となり、結果的に事実関係はうやむやのままで辞任に追い込まれることが少なくなかった。

 今回の一件ではっきりしているのは鉢呂前大臣が、「記者へ放射能をなすりつけた」という発言内容を認めていないことである。

 もとより、日本固有の大マスコミによるギルド、談合、護送船団的な記者クラブの存在そのものが大問題であるが、さらに懇談会でもオフレコ談義も問題である。大マスコミがまさに談合すれば、どんなことでも捏造しかねないからである。

 結局、今回の一件は大メディア政治部が気に入らない政治家を各社がスクラムを組むことで辞任に陥れる、まさに第四権力の横暴を大いに危惧する。

 もちろん、政治家が既得権益の上にあぐらをかき、虎視眈々と落とし穴をあちこちに掘る大マスコミにはめられないためには、紛らわしい発言や不用意な発言、また大マスコミ以外の者がいない場所での発言に十二分に注意すべきことは言うまでもない。 

 さらに言えば、最低限常時、ICレコダーを持参し、自分の発言を録音しておくことである!