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この9月、過去、約5年間、国相手に行ってきたPLC(電力線搬送通信)についての電波監理審議会への異議申し立て審理(行政不服審)が実質的に結審した。 今後、佐藤主任審理官が過去、実に21回も行った異議申し立て審理の内容をまとめ電波監理審議会の委員に意見具申するとのことである。 以下、PLC行政訴訟、電波監理審議会への異議申し立て問題について、概括しておく。 PLC(Power Line Communication)、電力線搬送通信は、電力線を通信回線としても利用する技術であるが、PLCにおいて家庭用の電力線(交流100V)は、高周波を重畳することを想定してはいなかったため、電力線に高周波を重畳すると、電力線がアンテナとして作用して漏洩電磁波が発生する。 またその周波数が短波帯の電波と重なるため、短波ラジオ、アマチュア無線、非常通信用無線などの無線通信、電波天文学などに影響が出る可能性がある。 PLC非推進派(短波放送聴取者・アマチュア無線家)は、2006年12月7日、アマチュア無線ユーザーと短波ラジオリスナーの一般市民114名が総務省にPLCの解禁やメーカーへの事業認可の取り消しを求めて行政訴訟を起こした。 さらに訴訟とは別にアマチュア無線家等115名は2007年1月15日に、他の無線通信機器や電気製品(家庭用の医療機器など)への影響の検証が不十分だとして、総務省によりPLC機器に対して交付された型式指定処分に対する異議申立てを行い、電波監理審議会で審理が進められてきた。 この紛争で、私たちは当初、東京地方裁判所に抗告訴訟として、国が行う電波法の省令改正を差し止める行政訴訟を提起したが、国(総務省)はすぐに行政処分、すなわち電波法の省令のなかでPLCを新たな通信方式として型式指定した。 そこで私たちは差し止め訴訟から処分取り消し訴訟に変更し、実質審議に臨んだが、東京地方裁判所の判事は、国側の言い分、すなわち前置主義、裁決主義を認め、本件は東京地裁ではなく、行政処分を行った行政庁である総務省が主管する電波監理審議会に異議申し立てをすべしと判決した。 私たちはこれを不服として東京高裁に控訴するとともに、他方、行政不服審査として電波監理審議会に異議申し立てを行ったのである。 それからすでに5年間弱が経過したことになる。 この間、電波監理審議会で行った審理は21回に及ぶ。しかし、何とこの間、電波監理審議会における審理に、電波監理審議会の委員は一度も出席すらしなかった、 この電波監理審議会審理を国は準司法などとしていたが、一体何が準司法なんだろうか? 審議会の委員は一度も参加せず、審理内容も聞かず、判事代わりの主任審理官が5年間弱、21回分の審理内容をまとめ委員に報告するというのである。 以下の電波監理審議会の委員リストを見ると、どうみてもPLC問題のかけらもまともに理解できそうな委員がいるとは思えない。 電波監理審議会委員一覧 (敬称略) 氏名 主要現職 会長: 原島 博 東京大学名誉教授 会長代理:前田 忠昭 東京瓦斯株式会社顧問 松崎 陽子 消費生活アドバイザー 山田 攝子 弁護士 山本 隆司 東京大学大学院法学政治学研究科教授 ちなみに、会長の原島博氏のプロフは以下の通りである。 情報工学者。1945年9月12日東京生まれ。1973年東京大学大学院博士課程修了。東京大学名誉教授。ヒューマンコミュニケーション工学、つまり「人間と人間の間のコミュニケーションを技術の立場からサポートする」ことに関心をもち、その立場から、「空間共有コミュニケーション」や「感性コミュニケーション」の研究を行っている。また、1995年に「日本顔学会」を発起人代表として設立、「顔学」の構築と体系化に尽力している。 総務省はあえて上記のような委員を置いているのだろう。 委員は国会承認事項となっているが、行政不服審査制度そのものは、司法救済をもとめる国民の権利を完全に遮断し、私たちに膨大な時間とカネを使わせ、結果的に棄却するための前置制度としかいいようがない。 原告団長の草野利一氏は、これについて、次のように述べている。 電波とは全く無縁の人達ばかりじゃないですか!委嘱する総務省の方は、無知の人の方が御しやすいわけで、それ自体はわかりますが、引き受ける方のモラルが大問題です。 まさに至言である。 この9月上旬、異議申し立て審理の最終弁論が終わったので、この5年間弱を総括する動画を制作しようということになり、環境総合研究所のビデオスタジオで、仕事の同僚である池田こみちさんが、PLC問題について一項目ずつ質問を出し、私(青山貞一)が回答する一問一答形式のビデオ収録を行った。 一般人でもある程度理解可能なように、配慮したこともあるが、概要ビデオの収録は何と約2時間かかった。 今後、年内に佐藤主任審理官が電波監理審議会の委員に21回の審理内容、準備書面、証拠、参考人証言内容などを報告するとのことだが、委員リストにある委員が、どうみても実質審理の内容を理解し、私たちにとってまともな判断を示すとは思えない。 草野さんはこれについて次のように述べている。 裁判員裁判だってプロの裁判官は含まれていて、プロの裁判官の意見が多数に入っていないとダメじゃないんですか? 電波に関して一人も専門知識がある委員がいないなんて、佐藤主任審理官は、私が決めるのではないなどと言っていましたが、間違いなく100パーセント佐藤さんの報告に依存するでしょう。これでは詐欺ですね。 これも至言である。 以下に制作中のビデオにおける池田さんの質問内容を示す。 Q 0. PLCは何の略ですか? 1. PLC(広帯域電力線搬送通信)って何んですか? 2. PLCモデムはどこで売っているの? 3. いくらくらいで売っているんですか? 4. PLCの何が問題なの? 5. なんで家庭用の100Vの電線を使うの? 6. PLCは実際にどうやって使うの? 7. 家庭用100Vの電線を使うのになんで障害となる電波を出すの? 8. 短波の電波って何に使われてきたの? 9. PLCによって影響、被害を受ける可能性があるのは誰ですか? 10. では実際に家庭に設置し、短波の電波をラジオで受信し障害を聞いてみましょう! わたくしたちが行った関東各地での実験の映像 千葉県成田市 千葉県佐倉市 群馬県嬬恋村(北軽井沢) 横浜市金沢区 11. すごい雑音ですね! 海外放送が聞こえなくなっている! 12. PLCなんか使わなくたって無線LANがあるんじゃない? 14. こんな障害が発生するPLCを国(総務省)は何で許可(実際は型式指定による電波法省令の改正)したのですか? 15. 事前に調査や見当は行ったはずですよね? 16. 委員会って学者、研究者が多数で開くんでしょう? 17. 委員会とともに各種の実験をしたんではないでしょうか? 18. 委員会で議論し、実験を行ったにもかかわらず、なんで障害がでるんですか? 19. NHKや日経ラジオは反対しなかったのですか? 20. 気象庁など短波を使っているところはどうですか? 21. なぜ、アマチュア無線家やSWLは強く反対してきたのですか? 22. 日本アマチュア無線連盟はどうでしたか? 23. マスコミはこのPLC問題をどうあつかいましたか? 24. あまり扱わなかった理由はなんでしょうか? 25. 国が強引に許可(免許)したのはなぜですか? 26. PLC雑音は解決できないのですか? 27. しかし、なんで裁判まで起こしたのですか? 28. 裁判を起こした人たちはどんな人? 29. どんな裁判なのですか? 30. 電波監理審議会への異議申し立てって何なの? 31. 裁判官に相当する主任審理官ってどんな人? 32. どこで審理は行われたの? 33. 傍聴は認められるの? 34. 1回の審理は何分くらい行われるの? 35. 発言はどうやってできるの? 36. 弁護士さんの役割は? 37. 裁判とどこが違うの? 38. 審理の方法は? 39. 何回くらい審理をしたの? 40. 参考人尋問ってなんなの? 41. 出し合う書類はどんなものがあるの? 異議申し立て書 準備書面 証拠 証拠説明書 意見書 陳述書 など 42. 共同実験をしたのですか? 43. 審理の結果はどうなるんですか? 44. 電波監理審議会の委員は審理に参加したの? 45. 参加しない委員は何をもとに判断するの? 46. 審議会で審議したら、そのあとどうなるの? 47. 法律改正を 行った総務省の大臣がPLCに問題があったとしてそれを止めるなんでできるの? 48. PLC異議申し立ての結果はどうなったの? |