|
|
前原元国土交通大臣は、今回の一件で不愉快を示したという。
確かに政権交代草々に八ッ場ダム工事の中止を宣言したのは、民主政権の初代の国土交通大臣に就任した派江原誠司大臣だった。 しかし、政局化しているなかでのこの種の大臣らによる中止宣言は、落とし穴に入り込みやすい。 長野県の浅川ダムにおける田中康夫知事(当時)の場合もそうだが、前原国土交通大臣が中止したというのに、というのは、あくまでも「政治的発言」として中止を宣言しただけであって、行政手続的には実は何ら中止の手続をしていなかったのである。 つまり政治力学的に中止しても、正規の手続として中止をしていないと、大臣や知事が替わった途端、ゾンビよろしく事業が再開されるのである。 当時、私(青山貞一)や梶山正三弁護士も委員として出席していた長野県の公共事業評価監視委員会では、田中知事が浅川ダム中止を政治的に宣言したが、長野県土木部の官僚たちは、あたかも死んだふりをしながら粛々と事業を進めていたのである。まさに面従腹背である。 行政手続問題は複雑なので別途とするが、この種の巨大公共事業を本当に中止する場合は、財政面からの手続に加え、公共事業計画の行政手続上も明確に中止の手続きをとらなければならない。 行政側、官僚は死んだふりをしながら知事が替わったとたん、調査費や事業費などの各種補助、交付を含め当該ダム事業の再開することが可能であった。 これは大きな盲点で、田中康夫元長野県知事や前原誠司元国土交通大臣などの政治家はこの落とし穴にはめられたと言える。 政権を奪取した政党はもちろん、大臣や知事ですら、ただ政治的に中止を宣言しただけでは土木事業は止まらないのある。 先に触れた公共事業評価監視委員会は、もとはといえば国土交通省が要綱により各県に設置したいわば「時のアセス」である。同委員会での審議によって何年も事業が進捗していない土木系公共事業や不要と判断された公共事業はやめるか、あるいは規模を縮小する。 実際、私が委員だったときも、小さな道路や河川改修、橋梁などの土木事業のいくつかは、この委員会により中止となったり、規模縮小になった。しかし、国土交通省直轄事業や県単独事業であっても肝いりの事業は、この知事が中止を宣言しても、この委員会にはかけられず、最終的にゾンビのごとく名を替えて工事が再開されていたのである。 その典型が、当時、田中知事の脱ダム宣言で有名となった長野市の浅川ダムである。知事在任中、県の土木部は浅川ダム事業についてはまさに死んだふりをしていたのであるが、田中知事が知事選で村井衆院議員で元国会公安委員長に知事選で負け辞めた後、県の土木部は、浅川ダムの再開を公共事業評価監視委員会にまともにかけることなく、別途有識者会議を設置し、そこで必要性、妥当性などを審議させ、穴あきダムとしてダム事業の継続を決めたのである(唖然)。 この長野の経験からすると、まさに国土交通省が現在設置しているインチキ有識者会議がそれに相当するのではないだろうか? いずれにせよ、トウシローの政治家(大臣であれ知事であれ)がこの種の巧妙な手口で白昼堂々と公共事業を進める日本流の官僚システムを本質的に変革するためには、関連する実体法、手続法を誰でも読んで分かる行政法に全面的に変えるしかないと思う。 以下は私たちが直接係わった長野県の浅川ダムに関するブログである。 ■長野県長野市の浅川ダム 独立系メディア E-wave 公共事業 長野県公共事業評価監視委員会の委員リスト 長野県公共事業評価監視委員会(2008.3.28): 浅川ダムに関する意見 青山貞一:長野県の審議会事情(15) 浅川ダム問題で委員会、意見書を提出 青山貞一:長野県の審議会事情(14) 浅川ダム問題に関する個人意見 青山貞一:長野県の審議会事情(13) 不誠実な県を評価監視委員会が厳しく批判 青山貞一:長野県の審議会事情(12) 大詰めを迎える浅川水実質審議 青山貞一:長野県の審議会事情(11) 公共事業評価委、浅川水系を実質審議 青山貞一:長野県の審議会事情(10) 陳腐な温暖化防止県民計画改訂 青山貞一:長野県の審議会事情(9) 先祖返りの「廃棄物新条例」 長野県浅川ダム「議論すべき」8割 県公共事業評価監視委 青山貞一:長野県の審議会事情(8) 配布資料:浅川治水対策の主な経緯等 青山貞一:長野県の審議会事情(7) 浅川ダムは本当に一端中止されたのか 青山貞一:長野県の審議会事情(6) 浅川ダムに関する県との事前質疑応答 青山貞一:長野県の審議会事情(5) 県裁量でゾンビのごとく復活、浅川ダム 青山貞一:長野県の審議会事情(4) 見る影もないゴミ条例案〜 青山貞一:長野県の審議会事情(3) 公共事業評価監視委員会騒動〜 青山貞一・池田こみち:長野県の審議会事情(2)〜環境審議会〜 青山貞一・池田こみち:長野県の審議会事情(1) |