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昨日、東京都が東北地方被災地の瓦礫処理を引き受けることを発表し、それをきっかけに全国各地で瓦礫を焼却、埋め立てさせるため、環境省が都道府県、政令市などを集め、昨日、細野大臣がその方針を伝えていました。 瓦礫を撮影する筆者 宮城県山元町にて 撮影:鷹取敦 宮城県山元町にて 撮影:鷹取敦 東京都は今のところ、宮古市の瓦礫処理を受け持っているようですが、放射性物質に汚染された災害廃棄物(瓦礫)を焼却処理すると、セシウム137などによる高濃度の焼却灰が生成されます。 横浜市などでは、東北の瓦礫処理以前に、横浜市内の下水道汚泥がかなり放射性物質で汚染されており、それを環境省の暫定指針(すなわち、8000Bq/kg以下は通常の管理型処分場にそのまま埋め立ててよい)で焼却し埋立することをめぐり、処分場周辺市民などが大反対しており、汚泥は仮置状態となっています。 その背景には環境省や国土交通省は、さしたる実証実験データもないまま、既存のバグフィルター付き焼却炉(溶融炉)で放射性物質に汚染された瓦礫を焼却(溶融)しても、問題ないという結論を出していることが、環境行政改革フォーラムによる国への情報開示請求結果で分かっています。 環境省は、上記に関連する検討会を非公開とし、環境省は環境行政改革フォーラムの議事録の開示請求に対し、当初30日間で開示決定をせず60日に引き延ばしてきました。60日後にやっと開示してきましたが、開示されたのは第四回までの検討会議事録で、電話連絡では、その後については議事録をとらないことをにおわせるなど、本件について環境省の対応からできるだけ情報公開したくない態度がミエミエでした。 ◆災害廃棄物安全評価検討委員会(第1〜4回)議事録−情報開示− http://eritokyo.jp/independent/eforum-col102.htm ◆環境行政改革フォーラム事務局:環境省の信頼性を損なう正当性のない意思決定手続き〜放射性廃棄物の処理方針の決定〜 http://eritokyo.jp/independent/eforum-col101.htm ところで、上記の東京都が引き受け民間の産廃業者が焼却処理することになる瓦礫は、どうも東京電力の子会社が業務で請け負うことになりそうです(以下参照)。 ◆東京都内で1日100トン以上の処理能力を持つ産業廃棄物焼却処理業者は 東京電力の子会社 - 2011年10月2日 http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/10/blog-post_01.html 通常、産廃業者は、産廃処理(処分)は一トン当たり数万円(1−3万円)で引き受けますが、東北地方の瓦礫をJRコンテナで東京に送る費用を含めると、当然さらに高額となるはずです。 マスコミは上記の背景を取材もせず、東京都の方針を東日本大震災復旧・復興への全面協力のような報道の仕方をしていますが、その実、この瓦礫の広域処理(焼却、埋め立て)は、全国各地への放射性物質の汚染拡大と利権のにおいがする「東電の救済」となる可能性が高いと感じます。 産廃業者が焼却した後の焼却灰は、おそらく東京都の中央防波堤にある一般廃棄物管理型最終処分場に廉価ないし無償で処分される可能性があります。これも東電救済策の一部となる可能性が大です。 以下は、放射性瓦礫の放射能(Bq/kg)と空間放射線量(μSv) の相関関係に関する私見です。 放射性物質に汚染された汚泥やそれを焼却した後に残る焼却灰の扱いの判断基準として、当初、環境省は8000ベクレル/kg以下は通常の管理型埋処分場への立処分が可能、それを超える場合は管理型処分場内にいわゆる遮断型処分としています。 その後、環境省は焼却残渣の処分について、第七回検討会で事実上10万ベクレル以上のものも管理型処分場に遮断型処分して良いという方針が出されたとのことですので、事実上何でもアリ状態のようです。その詳細は議事録を見ないと分かりませんが、上記のように開示後は議事録を作成しているのかどうかもわからず、議事概要すら出ていません。 報道では、「外部に放射線が漏えいしない対策を取った上で管理型最終処分場に埋め立てることを容認する方針で一致した」と伝えています。 ◆環境省報道発表資料より(平成23年9月16日) 第七回災害廃棄物安全評価検討会の開催について(お知らせ) http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/07-mat_1.pdf http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14222 上記の会議後の報道記事を以下に掲載します。
ところで放射性物質に汚染された土壌の放射能(Bq/kg)と空間放射線量(μSv)の間には高い相関があることが青山・池田・鷹取による研究で明らかになっています(環境アセスメント学会誌(2011))。かの武田教授も土壌のセシウム合計で6000Bq/kgはほぼ空間線量で0.8μSv/h程度と述べています。 ◆青山貞一・鷹取敦・池田こみち:福島原発事故に起因する放射性物質 による地域汚染の実態解明と汚染構造の把握(速報), 環境アセスメント学会誌、2011年 Vol.9 No.2 http://eforum.jp/aoyama-takatori-ikeda_assess_society-2011-9.pdf 以下に関連部分を示します。 放射性物質に汚染された瓦礫やそれを焼却処理した場合の焼却灰の放射能(Br/kg)と空間線量(μSv/hなど)の相関分析結果はあるものの下水汚泥についてはほとんどありませんが、同一のBq/kgなら土壌より下水汚泥の方がμSv/hがやや高いと推察されます。 理由は下水汚泥の方が均一に放射性物質が入っているからです。土壌の方がやや深いところに放射性物質が少ない部分がある、つまり分母がその分大きくなって薄められる(=Bq/kgが小さめになる)のではないかと推察されます。 その後、以下のURLにある原子力安全基盤機構 廃棄物燃料輸送安全部による「災害廃棄物の放射能濃度の推定方法について」平成23年6月19日という報告を見つけました。 http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/03-mat_2.pdf 上記の報告を見ると6000Bq/kgで約1μSv/hとなっており8000Bq/kgだと1μSv/hを超えることが分かりました。 仮に上記の土壌に類すると仮定すると8000Bq/kgは1μSv/hを超えることになります。 そもそも、環境省は、これについての実証分析を行いデータを公表していないことが問題です。 上記の仮説がそこそこ正しいとすると、国や自治体が汚泥や焼却灰を8000Bq//kg以下だから管理型処分場に処分してもよいというのは、きわめて乱暴な話となります。まして10万Bq/kgも管理型処分場に処分できるとなったら大変です。 というのも、処分した汚泥や焼却灰が乾燥し、管理型最終処分場から放射性物質を含むあるいは付着した粒子状物質再浮遊すれば近くの住宅地の大気や土壌、植物を汚染し、その空気を吸った住民はもともと地面から受ける放射線に加え、それらの放射線の曝露を受けることで簡単に8000Bq/kgで年間8760μSv超、になります。 8000Bq/kgで年間8760μSv/hとしたら8万/kgだと88mSv/h、約10万Bq/kgだと約110mSv/h超となります。 いずれにしても、国がやっていることはドロナワでその場しのぎのことであって、一つ間違えば放射性物質で汚染された瓦礫などを全国規模で焼却、埋め立てすれば、汚染の全国的な拡延となりかねません。 もとより大気汚染防止法、廃棄物処理法、水質汚濁防止法にも放射性物質が指定物質として設定されていないことから分かるように、環境行政は過去完全に放射線、放射能とノータッチとされてきたのです。 その環境行政が経済産業省や文部科学省の下請け、尻ぬぐいをさせられ、それも実証的な分析やデータがほとんどないところでさせられていることが問題です。 一部の専門家(?)が非公開の検討会で、せっせと朝令暮改的な暫定基準をつくっているさまは滑稽です。もちろん滑稽ですむ話ではありませんが。 |