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福島県川俣町山木屋の

産廃問題シンポ参加記

青山貞一
19 April 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


 この土日(2010年4月17-18日)は、福島県川俣町の「産廃シンポジウム」にでかけてきました。

 4月下旬だというのに土曜日は東京でも雪でしたが、川俣町は福島県の北部しかも標高が500mもある地域なので、積雪が多いところでは15cm、まるで2月の雪景色でした。

 当初、私はつくばエクスプレスでつくば駅に行き、坂本さんの車で現地入りする予定でしたが、前日からの雪で高速が一部通行止めという情報が坂本さんから入り、東北新幹線で福島駅に行き迎えに来てくれた川俣町議らの車で現地に向かうことになりました。

 シンポ会場がある福島県川俣町は、福島駅から南相馬市の方角(太平洋側)に向かい車で30−40分も行かねばならない東北地方でもかなり人里離れた地域で広い面積に1万7千人しか住んでいません。

 しかも産廃処分場がありシンポジウムの会場がある山木屋は、川俣町の南東部にあり、川俣町の東1/3の面積に人口がわずか300人しか住んでいないという超過疎地域です。もっぱら、こういうところが産廃処分場に狙われるのです。

 下は川俣町の位置を示すグーグルマップです。福島市、南相馬市、二本松市のいずれからも30km〜50km離れており、いずれも川俣町に通ずる鉄道はありません。


福島県川俣町の位置  出典:mapion

 私たちは福島駅から114号線でひたすら南東に走りました。


福島県川俣町山木屋地区


福島県川俣町山木屋地区。道路以外は10cm以上の積雪があった

 土曜日、東京駅から東北新幹線(やまびこ61号)で福島駅に午後6時10分到着、迎えに来てくれた川俣町議はじめ主催者3名と一緒に車に乗り、川俣町に唯一ある旅館に着いた。時間は午後7時ちょっと前でした。

 旅館の1階には、すでに山木屋地区に11ある区長の10人と自治会長、副会長らが私と坂本弁護士を待っており、自己紹介後、3時間半ほど産廃問題について議論、懇親しました。終了後、坂本さんそして二本松から来た渡邊さんの3人で風呂に入りました。

 午後11時30分、部屋に戻りBS2のNHKで秩父の旧吉田町の番組をみて午前1時に就寝。

 翌4月18日日曜日は午前7時に起床、午後8時に旅館で朝食。

 その後、川俣町山木屋地区の500mから600mの標高にある実質安定型産廃処分場を視察しました。


川俣町山木屋地区にある産廃施設(一部)



 産廃業者は昨年秋、不法投棄で有罪判決を受け、その後、福島県は4つの「業」の許可及び5つの「施設」の許可のすべてを取り消しており現在操業はしていません。

 この川俣町にある巨大な産廃処分場問題の核心は、許可取消後に処分場に不法投棄されている廃棄物の撤去問題、実質安定型処分場の汚染浸出水問題などがあります。


処分場の前に立てられた看板。管理型最終処分場とは書いていない!

 過去埋め立てられた産廃はすでに35万立米とされていますが、計画では5期で127万立米しかも期間は平成20年までと書かれていることから見ても、最低でも70万立米、さらに多くが埋め立てられている可能性がありそうです。

 事業者は管理型最終処分場と言っていますがが、操業開始が昭和61年と古く、遮水構造、遮水シート、水処理施設はほとんどなく、実質安定型最終処分場です。

 そこに特別管理産廃を含むありとあらゆる産廃を持ち込ちこみ、その多くは焼却処理後に処分してきたと推察されます。

 焼却炉はロータリーキルン形式1台、固定床方式1台の2台があります。排水は全て蒸発させ一切、排水はないなどと事業者は言っていますが、これはどうみても??です。


2つの焼却炉の許可項目を書いた看板

 現地は積雪がすごく革靴で歩くのは厳しかったのですが、車を降りてから300mほどの積雪10〜15mの坂道を歩き、処分場全体が見える地点まで行きました。


最終処分場の堰堤を視察しに雪深い山道を上がる


見えた第一堰堤。下は防災用調整池


見えた第2区の処分場ののり面。下は防災用調整池


防災用調整池の標識


最終処分場の写真。これはシンポジウム資料集の表紙にあったもの

 現地視察終了後、坂本さんと旅館に戻り昼食。

 12時過ぎに会場に向かいました。広田さんがいわきから到着し12時30分に私達に合流しました。

 シンポジウムの会場には川俣町長、南相馬市長(櫻井さん)、川俣町議長、川俣町議4人、福島県議4人はじめ地元の新聞、テレビなども取材に来ていました。シンポジウムの題は、「もうゴミはいらない!」です。

 このシンポジウムは、主催が川俣町の山木屋自治会、講演が川俣町、川俣町教育委員会、川俣町農業委員会、JA新ふくしま、山木屋地区公民館です。

 小さな川俣町山木屋地区の公民館ですが、山木屋の町民の1/3にあたる町民らがシンポに参加しました。


会場を埋めた川俣町民

 午後1時に開会、町長、市長、議長、県議ら来賓挨拶につづき、川俣町にある産廃業者の最終処分場問題と不法投棄問題について以下の現状報告が行われました。

 菅野川俣町議:
   富岡鉱業(株)の自己及び処分等の経緯

 難波謙二(福島大学準教授):
   富岡鉱業産廃処分場と環境汚染調査

 現状報告の後、午後2時から以下の3つの講演を行いました

 青山貞一(東京都市大学教授):
   環境汚染から見た産廃処分場と不法投棄

 坂本博之(弁護士、ゴミ弁連事務局長):
   全国産廃処分場裁判の現状と課題

 広田次男(弁護士、ゴミ弁連副会長):
   福島県内におけるゴミ問題の現状について


講演する坂本博之弁護士


講演する広田次男弁護士



 講演後、福島県内、宮城県内各地他地域住民団体からの現地報告がありました。

 大留隆雄(産廃から命と環境を守る会会長):  
   福島県南相馬市原町共栄クリーン産廃処分場・焼却場問題
 佐藤正隆(竹の内産廃から命と環境を守る会代表):
   宮城県村田市の最終処分場問題
 渡辺正孝(二本松市・本宮市水を守る住民の会代表):
   福島県二本松の最終処分場問題

 最後に宣言を採択し終了しました。終了時間は午後5時半です。 最終的に終わったのは午後5時30分、都合4時間半の大シンポジウムとなりました。
 
 産廃シンポジウム終了後、一休みしてから町議の車で福島駅に行き、新幹線で青山、坂本は帰京、広田さんは自分の車でいわきにに戻りました。

福島県川俣町・産廃処分場シンポジウム 2010418

環境汚染から見た産廃処分場と不法投棄

     青山貞一 東京都市大学 環境情報学部教授

1.はじめに

2.廃棄物処理法と産廃

  2−1 廃棄物の種類と問題点

2−2 産廃に関連する許可(業・施設)の内容と問題点

2−3 産廃に関連する行政指導・処分(勧告・公表・命令)
      と問題点

2−4 立ち入り検査とその問題点

2−5 刑事告発

3.最終処分場の種類と構造

  3−1 安定型最終処分場と処分できる廃棄物(安定型5品目)

  3−2 管理型最終処分場(上記以外の焼却灰などを含む産廃
      と一廃棄)

  3−3 遮断型最終処分場(飛灰や特別管理廃棄物)

  3−4 廃棄物処理法施行前の処分場

4.有害物質と環境・健康への影響の経路

  4−1 地下水への浸透による汚染の流出

  4−2 処理水・浸出水による汚染の流出

  4−3 周辺地域への飛散による汚染の拡散

  4−4 農作物・魚介類への蓄積

  4−5 人体への摂取

5.有害物質による健康への影響

  5−1 有害物質の種類

焼却灰に含まれるダイオキシン類、重金属類など

感染症を伴う汚染物質(医療廃棄物)

揮発性汚染物質(VOC)、準揮発性汚染物質(セミVOC

農薬・殺虫剤・除草剤系有害物質、劇薬・毒薬

5−2 人体への影響

急性毒性、亜急性毒性

慢性毒性(発ガン性、催奇形性、生殖毒性、免疫毒性など)

  5―3 健康影響と健康被害

6.最終処分場に係わる汚濁物質・
  有害物質測定の種類と問題点


汚染、汚濁、有害物質などの測定は測定項目(水質、底質、土壌、大気測定場所、季節、時間、分析の方法(溶出分析、含有分析など)、さらに分析の技術的方法により、著しく結果が異なる。業者まかせの測定結果は信用できないことが多い。第三者によって住民団体立ち会いのもと客観的に測定し全面的に公表する必要性がある。

 6−1 水質測定の対象となる水

@公共用水域(河川・湖沼・海などの環境水)

A地下水(帯水層、井戸水など)

B浸出水(安定型処分場などからにじみ出てくる水)

C処理水(工場・事業所など)

D処理水(管理型最終処分場などの処理水)

Eその他  最終処分場内部の観測井戸水、
        最終処分場周辺の観測井戸水

6−2 処分場処理水、浸出水、河川水と底質中の
     有害物質の測定と基準


水とくに河川などの環境水は流れているのでサンプリング及び測定が非常に難しい。大雨の後では、希釈され非常に低くなることが多い。そこで川底などに溜まった泥(底泥、底質)中の汚染物質、有害物質を測定する。

6−3 処分場周辺の土壌中の有害物質などの測定と基準

最終処分場からは風、台風などにより汚染物質が周辺地域に飛散、拡散する。大気汚染の測定は難しいので、土壌中の有害物質を測定する。

6−4 国際標準からかけ離れた日本の分析方法の問題点

日本では、たとえば環境省告示で行われている重金属類の分析で欧米とかけ離れた方法で分析している。そのため分析値が著しく低くなる可能性が専門家から指摘されている。また日本独自の「計量証明」書は国際的には通用しないことが多い。それらの問題点を具体的に指摘する。

7.具体的事例

(1)茨城県竜ヶ崎市 (廃棄物処理法制定・
    施行以前、一般廃棄物焼却場+不法投棄)

(2)東京都日の出町 (管理型一般廃棄物広域
     最終処分場、約
260m3

(3)横浜市南部地域 (市民参加の土壌汚染調査)

(4)沖縄県読谷村  (安定型最終産廃処分場)

(5)福岡県筑穂町  (安定型最終産廃処分場)

(6)沖縄県宮古島  (安定型最終産廃処分場
     +焼却炉)

(7)香川県豊島・直島(廃棄物処理法制定・施行以前、
     産廃不法投棄+野焼き)

(8)滋賀県栗東町  (安定型最終処分場+焼却炉、
     約
70m3

8.今後の対応について 

   
公害調停、訴訟(損害賠償請求)、代執行


 以下は関連する新聞記事です。


河北新報 2010年2月23日社説