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2010年5月のゴールデンウィーク(以下、GW)中、数度、八ッ場ダム工事現場を視察した。 八ッ場ダムの関連工事現場には、ここ5年ですでに18回出かけているが、昨年8月30日の政権交代で前原国土交通大臣がダム本体の中止を明言した後に4600億円の予算の残りを使い果たすためか、本体以外の公共工事が一気に進んでいる。信じられない進捗状況である(笑い)。 ※ 八ッ場ダム問題、論争 たとえば昨年の秋と対比すると、吾妻川中流域の護岸工事、国道145号線、県道の工事(橋梁工事、トンネル工事など)、吾妻鉄道の付け替え工事(橋梁工事、付け替え駅工事など)、のり面防災工事、砂防ダム工事、移転住民の住宅建築工事、学校保育園などの公共施設工事などが急ピッチで進んでいた。 民主党の八ッ場ダム工事を中止するとした「公約」は、まさにダム本体の建設工事の中止だけを意味し、それ以外の道路、鉄道、護岸、住宅・学校・温泉移転などの各関連工事は目一杯進められているというのが実感である。 事実、前原大臣は昨年の宣言以降、有識者を集め、八ッ場ダムの再検討委員会を開催したが、この委員会のメンバーが実は、前政権時代の御用学者が多く残っており、再検討の名のもとで、またその裏でダム本体以外の各種公共工事がガンガンと進んでいる。
こうなると、前原大臣は機能不全、まさに死に体である! そして昨年秋以来あれほど騒いだ大メディアはこの現実を無視ししている! ●JR吾妻線付け替え橋梁工事 本来、ダム本体の工事が中止となれば、まったく不要となるはずの国道145号線とJR吾妻線の付け替え工事だが、下の写真にあるように、中流域で巨大な橋梁が3つ完成してしまった。手前の2つが道路用、背後左が鉄道用の巨大な橋梁群である。 長野原町の八ッ場ダム工事現場(橋梁)にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 長野原町の八ッ場ダム工事現場(橋梁)にて 撮影:池田こみち、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 景勝地にアグリーな橋梁工事現場(橋梁)が 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 長野原町の八ッ場ダム工事現場(JR吾妻線付け替え)にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 長野原町の八ッ場ダム工事現場(JR吾妻線付け替え)にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 長野原町の八ッ場ダム工事現場(JR吾妻線付け替え)にて 撮影:池田こみち、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 長野原町の八ッ場ダム工事現場(JR吾妻線付け替え)にて 撮影:池田こみち、Nikon Cool Pix S8 2010.5.2 周知のように高規格道路(145号線バイパス)、吾妻鉄道付け替えには巨額が投入されている。 ここ数年は、八ッ場ダム工事の関係車両が交通量を増やしていたが、交通需要から見ると、国道145号線や吾妻線はもともと草津温泉に行くひとたちのためにあるような道路や鉄道だ。観光との関連では、せいぜい秋の吾妻渓谷の紅葉見学で利用者がその時期増える程度だろう。 JR吾妻線は、下の地図の長野原草津口駅で大部分の乗客が降りる。その後は、群馬大津、羽根尾、袋蔵、万座鹿沢口と終点の大前駅しかない。しかも、JR吾妻線は平日はもとより土日休日でさえ、一時間に上り、下りそれぞれ一本ずつしかないのである!! 長野原町とJR吾妻線の駅。終点は大前(A点) 出典:グーグルマップ このように、本来廃線になってもおかしくないJR吾妻線に、巨額の国税、公費を投入し、まさに鉄とコンクリートでギンギン、ピッカピカの最新鋭のインフラにしても、観光需要、交通需要は増えるわけはない。 そもそも、国土交通省は、八ッ場ダムができると観光で年間100万人以上の観光客が見込まれるなどと資料に書いていた。 ダム本体工事がなくなれば、当然のこととしてダム湖がなくなるのだから、国土交通省が公言してきた「膨大な観光客」はもとより、自然を切り開き、破壊後の造成地に新規につくられる川原湯温泉への客が現状より増えるとは到底思えない(下の写真参照)。 川原湯温泉の移転先。この写真は2009年9月に撮影したもの。 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2009.9.18 もとより、川原湯温泉は鄙びた(ひなびた)歴史文化的な場所にあってナンボの温泉である。 それが下の写真のような造成地に移転しても客が増えるとは到底考えられない。温泉の源泉をパイプで引き込むことになっているが、温泉ファンは、鄙びた秘湯、秘境の歴史文化的な場所にある川原湯温泉こそ価値を感ずるのである。 国土交通省自身が公言していたダム湖ができると、という宣伝文句も以下のような造成地、それも対岸が川原畑のコンクリート護岸の醜い斜面造成地では、自然景観もへったくれもないものである。 川原湯温泉移転先の造成地の土地利用図 この真は2009年9月に撮影したもの。 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2009.9.18 しかも、草津温泉に行く観光客は、長野原草津駅からさらにバスやタクシーで30分以上標高差800〜1000m登らなければならないから、東京を中心に客は長距離バスを使い行き来している。これだと結果的に安く早い。 またJR吾妻線の終点ひと駅前の万座・鹿沢駅(終点は大前駅)は、かつてスキー客が乗り降りしていた。 しかし、これも駅に到着した後は、スキー場までの道のりを考えるとマイカー利用せざるを得ず、スキー客の減少と相まって利用客は激減している。 平日、土日休日とも1時間に一本しか走らないJR吾妻線、それも嬬恋村の大前駅で終点となる鉄道を何百億円かけ付け替えてどうなるのか? ●川原湯温泉峡の現在 以下の写真はいずれも移転前の川原湯温泉とその周辺。ダム湖ができると、温泉郷がダムに沈むことになっている! ※群馬県長野原町川原湯(青山) 川原湯温泉は1193年、源頼朝が狩をしている最中に発見したとされる。下の写真にある共同浴場の「王湯」にはそれに因んで源氏の家紋(笹竜胆【ササリンドウ】)が掲げられている。 由緒ある今までの川原湯温泉共同浴場、王湯 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10 2007.8 川原湯温泉地域では、ゆかけ祭りがおこなわれている。この祭は奇祭とも言われる。450年程前に源泉が一時枯渇し、鶏を生贄に祈願したところ湯が再び湧きお湯を掛け合ったとされることに祭りは由来する。 ゆかけ祭りは毎年1月20日の大寒の未明に行われ紅白を褌の色で区別し、2手に分かれ褌一丁で「お祝いだ、お祝いだ」と叫びながら、お湯を掛け合う。最後に鶏の入ったくす玉が割れ、鶏を捕まえた人は運が良いとされる。ちなみに「お祝いだ」の掛け声は「お湯湧いた」から変化したと言われているという。 下は川原湯温泉にある松尾芭蕉の俳句の碑。 川原湯温泉にある芭蕉の碑 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10 2007.8 不要な公共事業が、日本有数の歴史文化遺跡を破壊し、湖に埋めようとしたこと自体、大問題である。なぜなら、国土交通省自身、観光立国を担当している省庁であるからである。 今までの川原湯温泉、高田屋 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10 2007.8 川原湯神社にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2009.9.18 今回の現地視察では、群馬県西部、とくに長野原町、嬬恋村、草津町、六合村などこの地域一帯の水質調査(phと電気伝導度が主)を行った。 下は川原湯温泉の河川で測定を行っている青山貞一と池田こみち。草津側と異なり、浅間側の水質はph(酸性度),電気伝導度ともに良好。これについては、別途詳細な調査報告を準備中である。 川原湯温泉峡で水質測定をする青山貞一 撮影:池田こみち、Nikon Cool Pix S10 2010年5月5日 川原湯温泉峡で水質測定をする池田こみち 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2010年5月5日 つづく |