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このブログは2009年12月に執筆したものです。 この春、ポーランドにナチスドイツによる強制収容と虐殺に関連した現地調査でポーランド西部に出かけたとき、絶えず気になっていたことがある。それはポーランドの隣国であるウクライナとベラルーシュである。 言うまでもなく、この2国は1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原子力発電所(英語で Chornobyl Nuclear Power Plant)の立地域(旧ソ連、現在のウクライナ)そして最も著しい影響を受けたとされる地域(ベラルーシュ)である。 私達はポーランドの現地調査でポーランド最西部でウクライナやベラルーシュに接するザモシチやプレジミールまで車を飛ばした。そのすぐ西は、まさにチェルノブイリ原子力発電所爆発大事故の影響を受けた地域であった。 下は、エレナさんのゴーストタウン・チェルノブイリの最後に出てくるのチェルノブイリ原発事故からの放射能の影響汚染分布図(コンター図)である。 ※エレナ(ウクライナ):ゴーストタウン・チェルノブイリの映像 出典:エレナさんのゴーストタウン・チェルノブイリ 私達が現地調査で訪問していたのは、上の分布図の左端(西端)であった。 その昔、本橋成一さんが監督し坂本龍一さんが音楽を担当した「アレクセイの泉」というチェルノブイリ原発事故による放射能汚染を描いた映画を見たことがある。その映画の舞台こそ、ベラルーシュの一寒村であった。 以下は「アレクセイの泉」の概要だ。 1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発(旧ソ連・現ウクライナ共和国)の爆発事故で被災したベラルーシ共和国東南部にある小さな村ブジシチェにある。この村の学校跡からも、畑からも、森からも、採集されるキノコからも放射能が検出されるが、不思議なことに、この〈泉〉からは検出されない。「なぜって?それは百年前の水だからさ」と、村人たちは自慢そうに答える。この百年、人間は何の豊かさを求めてきたのだろう。《水の惑星=地球》の強い意志のようにこんこんと湧く〈泉〉は、私たちに“本当の豊かさとは何か”を静謐に語りかける。 以は、アレクセイの泉の監督、本橋成一さんとお会いした日(2002.12.21)の深夜に書いたブロブである。
今回たまたまエレナさんのルポルタージュ、ゴーストタウン・チェルノブイリを読む機会を得た。 ※エレナ(ウクライナ):ゴーストタウン・チェルノブイリの映像 まさに彼女がバイクを飛ばした地域は、上の地図に示される赤とオレンジを含む甚大な影響を受けた地域であり、おそらく等ルー酒東南部の「アレクセイの泉」の舞台となった地域も含まれる。 エレナさんのルボルタージュと写真は、まさに欧米日本のどのマスコミも、ジャーナリストも伝えてこなかったチェルノブイリ原発事故の後遺症を余すことなく伝えている。もちろん、未だ高濃度の放射能が残る地域のこと、命がけのルポである。 私達がこの春ポーランド西部を車で飛ばしたときも似たような荒涼とした風景に出くわしたが、少なくともポーランド側にはどこにも人が住んでいて、ゴーストタウンなどではない。 機会があればぜひ、現地近くに出かけてみたいと思っている。 ところで、この際、グーグルアースやグーグルマップを使ってチェルノブイリを上空から見て見ようと考えた。ご承知のように、グーグルアースやグーグルマップは、全体としては解像度が低い画像だが、世界遺産やプラハ城のような建築物などがある場所、さらに東京23区では、数mの解像度で表示されるはずだ。 実際にトライしてみると、チェルノブイリ原発地域以外は、おおまかな精度でしか表示されななかったが、原発立地域だけはかなり高精度で表示された。 以下がグーグルで見たチェルノブイリ原発である。事故後、ロシア、ウクライナ、ベラルーシュは、地図上からチェルノブイリを消し去ったが、原発施設だけはあまりにも高濃度の放射能が残り、未だ生命に危険が及ぶ放射線が検出されることもあり、物理的に消し去ることは出来ない。 いずれも今となっては消し去れることのない貴重な衛星写真である! Aがチェルノブイリ原発の位置(ウクライナ)。すぐ北はベラルーシュ、北西はロシア。左端はポーランド。南はモルドバである。私達が訪問したルブリン、ジェシェフの地名がある。訪問したザモシチ、プリジミエルはさらにウクライナとの国境沿いの町である。風向きが東だったら間違いなくそれらポーランドの町は高濃度の放射能に覆われたことになる。 出典:グーグルマップ ウクライナ北中部にあるプリピャチとチェルノブイリ原発。この地域には多くの河川とその支流が集中している。ウクライナは世界有数な肥沃な土壌をもつ農地がある。大事故により農地の土壌汚染の影響は計り知れない! 出典:グーグルマップ チェルノブイリ原発のすぐ東に人造湖がある。 出典:グーグルマップ チェルノブイリ原発の主要部分。事故を起こした原発は西側(左側)にある。 出典:グーグルマップ 事故を起こした原発の拡大写真。排気口の影が見える。 出典:グーグルマップ 事故を起こした4号炉。現在は石棺と呼ばれている! 出典:エレナさんのゴーストタウン・チェルノブイリ 以下は最新のグーグルアースで3次元グラフィックス展開したチェルノブイリ原発である。 出典:グーグルアースで3次元展開し作成 出典:グーグルアースで3次元展開し作成
少々古いデータだが、ロシアを含めた東欧には以下のように沢山の原発がある。チェルノブイリ原発事故は決して他人事ではない。 出典:Overview of U.S. Cooperative Safety Work さて、問題は日本だ。当然、日本も人ごとではない。 政権を奪取した民主党は、こと原発問題について押し黙っている。 日本は別だと考えているのだろうが、これだけ狭い国土に50以上の原発を抱え、六ヶ所村に核廃棄物処理施設を途方もない費用で建設している日本で、ひとたび大きな事故が起きたら大変なことになる。 人口密度から単純にリスクを想定すれば、事故時の風向きにもよるが、長期的にはおそらくチェルノブイリ事故の想定死亡者である数10万人レベルにとどまらず、最悪一桁多い規模の犠牲者が出る可能性がある。 最後に、民主党はさらなる原発の推進で2020年にCO2排出量を25%削減なんていわないだろうね。洒落にもならない。 東京電力、関西電力、中部電力などの電気事業者に気をつかい、原発事故報道ですら満足にしない日本の大メディアは、メディアの社会的役割を全く果たしていない。 大メディアは民主党の原発政策について質問すらしないが、いつまでもタブー視ではすまされないだろう! |