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「崖っぷちの世界」
金融資本主義終焉の
はじまり(2)

青山貞一
掲載月日:2008年10月10日


日本への影響

 本来、サブプライムローン問題は日本にまったく無関係の問題であった。しかし、G7諸国を中心に世界経済がグローバル化され、国家が相互に国債や証券、債権、株を持ち合う相互依存性が極度に増していることから、各種市場を通じ、ストレートに日本にも甚大な影響を及ぼしている。

 本独立系メディアでも何度も特集したように、この危機は一向に改善に向かっていない。米国で発火した金融危機は、米国からら欧州、日本、アジア諸国へと瞬く間に飛び火した。すでに日本の日経平均株価は、史上3番目の下げ幅となった。

◆青山貞一:どうにも止まらない!10月8日日経平均株価、記録的大暴落

 さらに10月10日朝には日経平均株価が9000円を割った。

 もちろん、サブプライムローンが当初から債権化された時点から野村證券はじめみずほHD、三菱UFJ関連会社等、日本の投資・金融・銀行も数兆円規模で債権を購入している。

 問題は野村、みずほ、三菱などサブプライムローン関連債権を大規模に購入した日本企業の損失にとどまらない。国際的株式市場における株価の大暴落を通じ、ニューヨークやロンドンだけでなく東京の株式市場でも実体経済を担う国際的製造業に大きな影響を与えている。

 その背景には基軸通貨としての米ドルが信用、信頼を失ったことがある。今の金融危機はとなるとドル安、円高を促す。急激な円高は自動車など輸出産業にとって深刻な影響を及ぼす。事実、10月8日の日経平均株価では、トヨタ、ソニーと言った国際的大企業の株も大暴落している。

 下の表は少々古いデータであるが、10月6日時点での日経平均株価でみた日本を代表する企業の直近高値を対象とした下落率である。トヨタはじめ多くの国際的な優良企業の株価が半分(50%)以下となっていることが分かる。

 10月10日現在で下落率を計算するとさらに下落している。たとえば、トヨタは10月10日午後3時現在、3230円であるから、下落率は61.3%となり10%弱さらにさがっている。日産は584円から478円となっている。


出典:日刊ゲンダイ 2008年10月8日号

 したがってこれらの国際的優良企業の株を大量に保有し運用している生保などは、株の資産が半分に目減りすることになる。

 他方、あまり報道されていないが、日本を含むG8各国の政府や関連組織は、いわゆる社会保険資金の運用先として株や先物、FXなどを大量に購入してきた。日本では今や犯罪者(組織)となっている社会保険庁も、おそらく大量の株、債権、証券、先物、FXなどを運用しているはずである。となると今回の世界的金融危機によって、運用していた組織は膨大な損害を被っているはずだ。

 当然、暴落した企業の株を保有している生命保険などは、経営破綻に追い込まれる。事実、中堅の生保である大和生命が破綻した。これは人ごとではないだろう。

 ※大和生命が自力再建を断念、金融危機の影響で国内初の破綻 IBTimes

 さらに、さもなくとも経営危機に陥っていた不動産、中堅ゼネコンなどは、株価の急激な低落で倒産に追い込まれる可能性が大となるだろう。下の表は、株価の下落率が上位の不動産会社である。

    下落率が上位の不動産会社

出典:日刊ゲンダイ 2008年10月8日号

 当然のこととして、これだけ株価が下がると、証券会社は薄商いとなり開店休業状態となる。今後は一般向け小口商いは止め、自らディーリング業務に力を入れる会社が増えるだろうが、果たしてそれだけでどうにかなるかは? である。

 気になる地方銀行、信金などはどうか?

 ここでは株式だけでなく米国などの債権を保有し運用益を確保している。しかし、当然のこととして株価だけでなく、債権も下落しているからよほど体力がある地銀や信金以外は単独で生き残れるかどうか? となるだろう。

 では生保はどうか? すでに大和生命が経営破綻したが、他はどうか?これらの会社はたんまり株を保有している。したがって、当然のことながら経営危機に陥ってもおかしくない。事実、大手の生保、すなわち明治安田生命、日本生命、大同生命、太陽生命、第一生命、富国生命、三井生命、住友生命、朝日生命の大手9社のうち、4社が含み損状態になっている。


出典:日刊ゲンダイ 2008年10月10日号

 含み損を起こしている派、朝日、住友、三井、富国の各生命保険会社だ。しかし、これは日経平均j株価が10000円を割るかどうかの水準での話しなので、9000円すら割りつつある状態では、第一生命でも含み損とならないとはいえない。


つづく