やっとのことで、JALとANAの燃料サーチャージが値下げられることになった。しかし、値下げは、北米で10月1日より片道で3万3千円だったものが2万2千円となるだけで、原油や灯油価格の激落状況を考えると、まだまだ不十分だ。
燃料サーチャージ、一万円余値下げ 日本航空と全日空は、原油価格が下落していることから燃料代に応じて加算している「燃油サーチャージ」と呼ばれる国際線の特別運賃を1年8か月ぶりに来年1月から最大で片道1万円余り値下げする方針を固めました。 航空会社の国際線は、航空機の燃料代の増加に応じて「燃油サーチャージ」と呼ばれる特別運賃が通常の運賃に加算されます。 |
先に筆者がJALとANAの燃料サーチャージ批判を書いたのは2008年の10月25日だった。そのときの灯油の1ガロン当たりの価格は2.077米ドルだった。下図を見れば分かるように、この時点でも2008年7月のピーク時に比べれば、約半分まで下がっている。にもかかわらず、JALとANAは10月1日から燃料サーチャージを最値上げした。
現在、灯油価格がどうなっているかというと1ガロン当たり、1.87米ドルと、10月25日時点よりさらに下落している。にもかかわrず、両者はじめ航空会社は燃料サーチャージを値下げしていなかった。
国土交通省が国民の立場に立ってしっかり行政指導していれば、10月初旬の段階で大幅に燃料サーチャージを下げされていて当然だが、燃料の急激な下落にもかかわらず、航空各社は燃料サーチャージを大幅に上昇させていた。
今回のJAL及びANAの北米路線の燃料サーチャージの値下げはわずか1万1千円だが、今年の3月時点での北米路線の燃料サーチャージは往復で3万5千円前後であったから、6万6千円(現在)を4万4千円とする(来年1月から)は、燃料の下落レベルからするときわめて不十分だ。片道で最低でも1万5千円下げるべきである。
なお、灯油価格が1.87ドルの水準というのは、以下の図を見ればわかるように2005年の水準であるから燃料サーチャージは2005年時点の水準にもどすべきである。となると、たとえば北米路線の現行の燃料サーチャージ(往復で66000円)は、往復で25000円程度まで上げなければならない。
航空会社と国土交通省は、消費者、国民に対し、この夏の燃料高騰を理由にいつまでも便乗値上げや詐欺的行為をするのか? 今後は燃料価格に連動したサーチャージ料金システムを構築すべきである。
それにしても、これほど重要な問題をマスコミ各社は、この間まったく国土交通省や航空各社を批判してこなかったのは大問題である!
出典:米国燃料情報局
以下は、2008年10月25日の筆者のブログ。
2008年10月に入ってからWTI先物原油の価格は暴落が続いている。
2008年7月、1バレル当たり147ドルまで上昇した先物原油は、下の表にあるように10月21日現在、1バレル当たり66〜71ドルと、7月の半分まで下落している。
1バレル当たりの原油価格 単位:米ドル
Crude Oil | 10/14/08 | 10/15/08 | 10/16/08 | 10/17/08 | 10/20/08 | 10/21/08 |
---|---|---|---|---|---|---|
WTI - Cushing, Oklahoma | 78.69 | 74.38 | 69.81 | 71.9 | 74.08 | 71.29 |
Brent - Europe | 74.98 | 66.86 | 64.14 | 66.05 | 67.45 | 65.99 |
NY原油、64ドル台に下落 原油需要減少の思惑で 【ニューヨーク=米州総局】24日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油相場は大幅反落。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で指標となる12月物は前日比3.69ドル安の1バレル64.15ドルで取引を終えた。石油輸出国機構(OPEC)が減産を決めたものの、世界景気悪化で原油需要が減少するとの思惑から売りが続いた。取引時間中に一時、62.65ドルまで下げ、約1年5カ月ぶりの安値を付けた。
(10:15) |
以下はジェット燃料に近い灯油の価格の推移を示したものだ。2008年7月1ガロン当たり4.2ドルまで上昇した灯油の価格は2008年10月13日に2.5ドルとピーク時の62%まで下落している。
さらに、下図を見れば分かるように、10月23日には1ガロン当たり2ドルと7月のピーク時に比べ半分以下まで下落している。
一方、2008年10月に入ってから円高が急激に進んでいる。
10月24日には、ついに1米ドルが90円台、1ユーロも120円台に突入した。今後、歴史的な円高となる可能性もある。
過去3ヶ月の米ドルの推移 右側の軸が米1ドルに対する円
出典:Yomiuri Online
にもかかわらず、JALやANAは、2008年7月に値上げしたばかりの航空運賃の燃料サーチャージ価格を10月21日発券分からさらに18%も値上げした。
※JALの燃料サーチャージ案内の詳細
※ANAの燃料サーチャージ案内の詳細
本来、日本の航空会社は円で決済できるのでジェット燃料は円高のメリットを最大限生かせるはずである。
燃料は上の図から明らかなように、2008年の7月をピークに8,9,10月と激落している。さらに、このところ円が独歩高となっており、日本の航空会社は好条件となるはずである。
なのに、この10月21日からJAL、ANAは欧米などの往復便で6万6千円の燃料サーチャージをとっている! これではまるで詐欺である。
■速報!10月1日から値上げされる航空会社燃油サーチャージ一覧
※以下はあくまで片道のサーチャージ料金。往復の場合2倍となる。
航空会社/行き先 | 9月30日発券分 までの燃油 |
10月1日発券分からの燃油 |
---|---|---|
日本航空/北米・メキシコ・欧州・中東・オセアニア | \28,000 | \33,000 |
全日空/欧州・北米・中東 | \28,000 | \33,000 |
仮に成田・ロサンゼルス往復エコノミーの格安チケットを5万円で購入しても、燃料サーチャージが6万6千円、それに空港利用料(税)などが6000円程度かかり、合計で12万2千円となってしまう。
そもそも米国系又は欧州系キャリアーと比べても超円高の日本のキャリアーであるJALやANAの燃料サーチャージが高いのは異常である。ちなみに欧州系キャリアーでは往復で4万円以下の航空会社が多い。
気になるのは米国系のキャリアーで日本との往復がJAL、ANAと同じ6万6千円が多いことだ。アライアンスなどとの関連で談合している疑いもある。
以下の表にあるように、またそもそも日本のキャリアーが燃料サーチャージの高騰を先導している可能性も高い。
さらに燃料サーチャージはあくまで距離に比例するのに、北米で一括しているのもおかしい。西海岸とフロリダとでは大幅に飛行距離が異なる。
■日本〜欧米の新燃料サーチャージ概要一覧 (日本との間の2008年10月21日以降の往復料金)
※ 欧米系経路以外を含めた航空各社の燃料サーチャージ |
いずれにしても、最も国民、消費者に身近な国際航空運賃に付随する燃料サーチャージを10月21日から大幅に値下げすべきなのである。にもかかわらず、さらにJAL,ANAは18%も値上げするのはトンデモないことだ。
所管する国土交通省は何をしているのか!
これも一度決めたら状況がいくら変わってもテコでも変えない日本の官僚機構、国土交通省のなせるわざなのか? 政官業癒着のなせるわざなのか?
いずれにせよ、早急に、燃料サーチャージを適正化しなければならない。