エントランスへはここをクリック   

上半期法人税大幅赤字で
前代未聞の深刻な税収不足に


青山貞一

初出:独立系メディア
掲載月日:2009年11月5日
無断転載禁


 日本の一般会計の予算規模を見ると、1990年時点で72兆円程度だったが、1998年には84兆円規模となり、2003年には82兆円規模となっている。

 日本政府は、バブル崩壊後の1992年以降、2003年まで自民党は都合12回、141兆円に及ぶ経済対策を行ったが、それらのほとんどの財源は国債などの借金であった。

 その結果、一般会計予算に占める税収の割合は、2003年当時、英国は99.8%、米国は91.2%、イタリア86.1%、ドイツ81.3%であったが、我が国は何と51.1%となっていた。

 一般会計予算に占める税収以外の財源が何かと言えば、国債、地方債などの借金である。

 2003年当時、自分の国の一般会計予算に占める税収が約50%となっていた先進国は、日本だけである。

 この事実ひとつを見ても、日本の財政構造が以上であるかが分かる。

 2004年以降は小泉政権となるが、日本の一般会計予算に占める税収は、上昇することはなく、50%前後をうろついていた。

.....

 周知のように米国のサブプライプローンシステム崩壊に端を発した金融危機は、2008年秋にいわゆるリーマンブラザース倒産により全世界規模の金融機器に発展した。

 その結果、日本の2009年春の日本企業の決算は、トヨタ、ホンダ、ソニー、日立など輸出依存の巨大企業はじめそれら外需依存の巨大企業の広告収入に依存してきた新聞、テレビに至るまで営業利益から経費を差し引いた粗利益が赤字となった。

 これにより2009年度から2010年度、とくに2010年度における我が国の一般会計に占める主要税収、とくに法人税収が大幅に減少することが想定されていた、最近明らかになったところによると、税収の減少は思いの他深刻であり、当初推定額を大幅に下回ることになった。

 下の図は、2003年度の一般会計予算に占める税収額を示している。単位は兆円である。総額は41.7兆円だ。2003年度の一般会計予算規模は、約82兆円であるから、そもそもこの時点ですでに予算の半分は借金であったことになる。

 税収合計=41.7兆円

 2003年度の一般会計に占める税収総額のうち法人税は9.1兆円であった。割合で言うと、21.8%であった。

 これが2009年度税収では、9.1兆円がゼロとなるだけでなく、何とマイナスとなるのである。

 理由は、法人税は毎年、法人が税を支払うとき、その税額の半分を前払いする仕組みになっているが、今回、巨大企業など日本の法人が軒並み赤字となったことで、すでに払い込んでいる前払い金を払い戻してもらうことになり、その影響で黒字企業による税収を打ち消すこととなり、全体として赤字となることが分かったのである。

 法人税の実質赤字は半世紀ぶりとのことだ。

 仮に2003年度の税収にこれを単純に当てはめると、法人税収をゼロとした場合、以下のようになる。


 税収合計=32.6兆円

 以下はそれを伝える中日新聞の記事である。

2009年度法人税収、1兆円のマイナス 上半期で初

中日新聞 2009年11月3日 朝刊

 2009年度上半期(4〜9月)の法人税収は、世界同時不況の影響で業績が悪化した企業への還付金が税収を上回り、1兆3075億円の“赤字”に陥ったことが2日、財務省のまとめで分かった。

 上半期に法人税がマイナスになるのは、記録が残る1960年度以降初めて。給料の減少で所得税なども低迷しており、09年度の一般会計税収は30兆円台後半にまで落ち込む見通しだ。

 上半期の一般会計税収は前年同期比24・4%減の10兆923億円にとどまった。法人税のマイナスに加え、所得税は14・7%減の5兆5472億円。消費税も7・0%減の2兆1958億円だった。

 この結果、09年度の税収は1985年度以来の40兆円割れが確実視されており、政府は12月に、09年度の税収見通し46兆1000億円を大幅に下方修正する。同時に10年度の税収見込みも示すが、国際通貨基金(IMF)は10年の日本の経済成長を1・7%と予想しており、税収の大幅な回復は望めない状況だ。

 法人税は、3月に決算期を設定する企業の多くが11月ごろに前期決算の実績に基づいて事前に納め、決算後に確定した税額との過不足額を調整する。昨秋のリーマン・ショック後の急激な景気の落ち込みで、企業の多くが事前に税を納め過ぎた形になっており、本年度に入って還付が相次いでいた。

 【法人税の還付】 企業が納め過ぎた法人税を国が払い戻すこと。3月期決算企業の例では、前の年度に納めた法人税額の半分相当を11月ごろに「中間納付」として納める。その後、3月期決算が減益になるなどして、通期の法人税額が中間納付額を下回った場合には還付を受けることができる。

 このように我が国の税収減は前代未聞となっている。

 しかし、2009年8月30日に政権交代した民主党政権は、財務省データによれば現時点で一般会計予算額は100兆円を超える状態になっている。もちろん、今後、絞り込むとしても民主政権が政権マニフェストに示した各種施策を実行するためには、かなりの予算が必要となる。

 日本ではここ10年以上、自分の国の一般会計予算の半分程度しか税収で賄えない異常な状態が続いてきたが、ここに来て「半分」どころか38兆円/102兆円=約38%と、実質的に「1/3」程度しか賄えないという異常な状態となる可能性が高い。

 このような異常事態を受け、さすがの民主政権もさらなる赤字国債やむなしの大合唱が起きつつあるが、他方で増税を求める動きも急となっており、政権とし正念場を迎える。

 下の図は財務省の一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移だが、法人税の激落を受け、グラフ中、一番右の平成21年度一般会計税収は、46.1%から38%程度に大幅な下方修正を余儀なくされそうである。

 いずれにせよ、ここ10年間、日本は一般会計予算の半分を公債という借金でまかない続けている異常な国家となっている。当然のこととして民主政権は予算額を小さくすることを前提としつつ、借金に頼らない財政構造を構築するか、そのために税制をどうするかが大きく問われている!!

一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移(出典:財務省)