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痴漢でっち上げ元甲南大学生と
女、虚偽告訴などで重罪に
青山貞一
掲載月日:2008年10月24日


 我が国の身近な冤罪事件として最も多いのが痴漢事件であろう。

 一旦、満員電車の中で女性に痴漢として手を捕まれたら最後、明白な第三者的な証拠がないまま警察に引き渡され、取り調べの中でいくら無実を主張しても、起訴され、公判に持ち込まれる。

 場合によっては起訴される前に、痴漢行為を認めれば略式命令請求、いわゆる略式起訴としてやるとか、さらには被害者との間での金銭的な示談をもちかけられたりする。示談に応じれば起訴猶予となる、とったこともある。

 しかし、本当に痴漢行為をしていない男性にとっては、略式起訴であれ、示談による起訴猶予はいずれもいたたまれないことだ。そこであくまで無罪を主張すると、検察に起訴される。

 しかも無罪を主張し続ければ、最大22日間拘置所に拘置され、連日連夜警察の厳しい取り調べを受けることになる。

 一旦起訴されると、弁護士をつけてがんばっても圧倒的大部分の痴漢事件は、執行猶予が付くにせよ有罪とされてしまう。

 今の日本では周知のように一旦、検察によって起訴され、公訴されると99.9..%が有罪となってしまうのである。

 もちろん本当に痴漢行為をしている場合には、略式命令請求に応じ科料を受けるあるいは被害者と和解し、起訴猶予となるのも選択の一つであることは言うまでもない。

 私の大学(武蔵工業大学)の附属中学、附属高校を卒業され立教大学卒業後、映画監督となった周防正行氏が制作した「それでもボクはやっていない」という映画はまさに、痴漢行為をしていない男性が逮捕、起訴され裁判に掛けられてゆく顛末を描いたものだ。

それでもボクはやっていない 通称、それボク

 周防正行監督がじっくり時間をかけて地道な調査活動を続けてきた監督が「どうしても作りたかった」という、日本の刑事裁判に疑問を投げかける社会派の作品。

 同監督は、2002年に東京高裁で逆転無罪判決が出された事件をきっかけに痴漢冤罪に関心を持ち始め、自ら取材した数多くの同種事件の実在エピソードを作品中に散りばめるなど、痴漢冤罪事件を通じて、日本の刑事裁判の実態を映像化している。

 2007年8月には、第80回アカデミー賞・外国語映画部門に日本代表作品としてエントリーされた。また、同年5月には、スイス・ジュネーブで開催された国連の拷問禁止委員会に合わせて現地で上映され、委員の過半数が映画を鑑賞したという。

概要

 フリーターの金子徹平は、朝の通勤通学ラッシュに大混雑する電車で就職面接に向かう際、女子中学生に痴漢と間違えられてしまう。

 無実の罪を被って示談で済ませるという妥協を拒み、あくまで濡れ衣を晴らそうとした徹平は、逮捕され、更には起訴されることとなる。そして、徹平と彼の支援者達の長い戦いが始まる。

 出典:Wikipedia


 ところで、皆さんは、この2月、こともあろうか甲南大学法学部にいた学生が交際相手の女性と組んで、痴漢をでっち上げ、通勤途中の男性から示談金をとろうとした事件を覚えているだろうか?

 この事件では、女性が痴漢をしていない男性を車中で痴漢呼ばわりし、その近くにいた法学部在学中の学生がしてもいない男性の目撃者となりすました。男性は逮捕され、留置場に入れられほぼ一昼夜拘束された。

 その後、女性が警察に自分は痴漢被害を装ったとして申し出たため、男性の冤罪は免れた。当然のこととして、その女性は虚偽告訴罪として逮捕、起訴され有罪が確定している。

 一方、痴漢のでっち上げをもちかけ、虚偽告訴などの罪にとわれた甲南大学法学部在学生(当時)の判決が大阪地裁であり、蒔田文幸被告に対し、懲役5年6月(求刑・懲役8年)の実刑を言い渡した。

 私はこれほど卑劣、そして極悪非道な犯罪はないと考えている。

 しかし、もし、女性が初期の段階で虚偽告訴を警察に申し出なかったら、おさだまりのように、警察、検察は無実の男性を起訴し、有罪にもちんだに違いない。まさに冤罪そのものである。

偽告訴罪 刑法第172条

 刑法で定める犯罪類型の一つ。

 1995年の刑法口語化改正までは誣告罪(ぶこくざい)と題されていたため、現在でもそう呼ばれることがある。

 他人に刑罰や懲戒を受けさせる目的で、虚偽の告訴・告発その他の申告をする行為(第172条)である。警察など司法機関に対する告発に限らず、行政機関に申告したり、弁護士会に対して弁護士の懲戒請求をする場合も本条に該当しうる。

 虚偽の申し出による被害者が存在する点で、虚偽の申し出における告訴・告発の対象が存在せず、また事件も存在しない虚偽申告(軽犯罪法第1条第16号)と異なる。

 法定刑は3ヶ月以上、10年以下の懲役

 ただし、告訴・告発した事件についての裁判が確定する前または懲戒処分が行われる前に虚偽であることを自白した場合には、刑が減免されることがある(173条)。

 虚偽告訴罪にいう「虚偽」の申告とは、客観的事実に反する申告を行うことをいう。申告者が自己の記憶に反して主観的に虚偽だと思って申告をしても、それがたまたま客観的事実に一致しているのであれば、国の捜査権が害されることはないので、罪にはならない。

 本罪の有罪判決のほか公訴棄却・免訴を含む本罪の「証明」となる確定判決は、本罪にかかる虚偽告訴によって有罪判決を受けた者について再審請求の法定事由となる(刑事訴訟法435条3号、「有罪判決を受けた者を誣告した罪」という形で本罪が引用されている)。


 
出典:Wikipedia

 しかも、その場合、無実の男性は一貫して「やっていない」と主張するだろうから、22日の拘留にとどまらず、下手をすると公判開始までの数ヶ月、拘置される可能性もある。

 実際、痴漢事件ではないが、私の大学の大学院生は、神奈川県警と横浜地検によって交通事故に関連して犯人隠避、教唆の罪状で逮捕
、起訴され約3ヶ月拘置された。裁判で警察、検察のきわめて杜撰な捜査、決めつけ起訴が、多くの証人の証言で明らかになり、横浜地裁で無罪となった。

 しかも、横浜地検、東京地検は控訴せず、完全無罪が確定している。

 だが痴漢事件では第三者の証人が多数いることはまずなく、結果として冤罪が仕立てられているのである。今日も、明日も...


 対策として女性専用車があるものの、わずか一両にすぎない。

 そこでプライバシー上の問題もないことはないが、電車の各車両にWebカメラを取り付け、事件が起きた場合アーカイブされた画像を証拠とするなど、何らかの具体的な対応がもとめられる!

痴漢でっち上げ:元大学生に懲役5年6月 大阪地裁判決

 示談金目的に地下鉄車内で痴漢をでっち上げたとして虚偽告訴などの罪に問われた元甲南大生、蒔田文幸被告(24)に対し、大阪地裁の樋口裕晃裁判官は24日、懲役5年6月(求刑・懲役8年)を言い渡した。樋口裁判官は「正義感の強い若者を演じて、困惑する被害者を窮地に陥れるなど、犯行は巧妙で悪質」と非難した。

 判決は、蒔田被告が交際していた無職の女(31)=虚偽告訴罪などで有罪判決=を利用してでっち上げを主導したと指摘。「警察官まで欺き、司法手続きを利用しようとした」と指弾した。犯行による影響にも触れ、「男性通勤客に深刻な不安を与え、痴漢被害に遭った女性にも申告をためらわせる事態を生んだ」と断じた。

 事件は、蒔田被告が「被害者と目撃者がいれば100%勝てる」と女に痴漢のでっち上げを持ちかけて実行。今年2月1日午後8時48分ごろ、大阪市阿倍野区の市営地下鉄車内で堺市の会社員、国分和生さん(59)に尻を触られたと女が騒ぎ、蒔田被告がうその目撃話をして、国分さんを警察官に引き渡した。

 判決後、国分さんが会見。ほぼ毎回、裁判を傍聴したが、「蒔田被告の反省の言葉や涙も演技にしか見えなかった」と話した。さらに「服役して反省してほしい」と述べた。

 国分さんは警察に引き渡された後、無実を主張したのに留置場で22時間にわたり拘束されたことが、今も心の傷となっている。現在も通勤で電車を利用するが、無意識に女性の近くを避けるようになった。「巻き込まれたら逃げようがない。警察も言い分を聞いてくれなかった。女の出頭がなければ、被告として無実を訴え闘っていたと思う」と悪夢のような事件を振り返った。【北川仁士】

毎日新聞 2008年10月24日 21時14分(最終更新 10月24日 21時18分