来週退陣するアメリカのブッシュ政権が掲げてきた「テロとの戦い」という概念について、イギリスのミリバンド外相は、異なる背景をもつ勢力をひとまとめにし、軍事力で抑え込もうとする誤った考えだったとして、アメリカの同盟国の閣僚としては、これまでになく強い表現で批判しました。
イギリスのミリバンド外相は、15日付けのイギリスの新聞「ガーディアン」に「『テロとの戦い』は誤りだった」と題する文章を寄稿するとともに、訪問先のインドでの演説で持論を展開しました。
この中でミリバンド外相は、アメリカのブッシュ政権がイラク戦争などで掲げてきた「テロとの戦い」という概念について、テロの脅威を強調するのに役立った面はあるものの、異なる背景や目的をもった勢力をかえって結びつけ、イスラム教徒の集結を狙う国際テロ組織アルカイダを利することになったと批判しました。
また、ミリバンド外相は、テロは軍事力で抑え込むべきだという誤った考えも広がったと指摘し、テロを封じ込めるためには暴力や弾圧に頼ることなく、法秩序を重んじながら個別に問題を解決していかなければならないと訴えました。
イギリス政府は、おととしのブラウン政権の誕生以来、「テロとの戦い」という表現を使うことを避けてきましたが、現職の閣僚がここまで強い表現で批判したのは、これが初めてです。