|
ブログ炎上の悪質な書き込みに警察がついに摘発に乗り出した。お笑い芸人スマイリーキクチ(37)のブログに「人殺し」「死ね」と書き込んだ男女18人について警視庁は名誉棄損容疑で書類送検する。ヘンな正義感を振り回す者もいるが、その多くは軽はずみな誹謗中傷だ。名誉棄損は3年以下の懲役か禁固、または50万円以下の罰金……代償は大きい。 2009年02月06日 日刊ゲンダイ お笑い芸能人のブログ上で、「死ね」など誹謗中傷したとしてブログに書き込みをしていたと思われる18名が逮捕された。 警視庁は著名人などのブログに悪意の書き込みが集中して閉鎖に追い込まれたりする問題に関連し、男性タレント(37)のブログを攻撃した17〜45歳の男女18人を名誉棄損容疑で刑事責任を追及することを決めたという。 まず今回の逮捕劇を法の面から見てみみよう。 今回の逮捕は以下にあるように刑法にいう名誉毀損がその根拠となっている。刑法の名誉に対する罪は親告罪である。したがって被害を受けた者が刑事告訴するなり被害届を出すことからすべてははじまる。名誉毀損でいきなり逮捕はあまりないが、被害届がでていたのとよほど悪質なことが、その背景にあると思える。 以下は関連法規の抜粋 刑法 第34章 名誉に対する罪 (名誉毀損) 第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。 2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。 (侮辱) 第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。 (親告罪) 第232条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 第35章 信用及び業務に対する罪 (信用毀損及び業務妨害) 第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 (威力業務妨害) 第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。 名誉毀損と信用毀損の違いは、前者が主として個人、後者は主として会社など組織を対象としている。 刑法第34条の捜査は警察や検察が被害者からの刑事告訴や被害届を受けたときから始まる。実際、今回の事件では件のお笑い芸人は所轄の警察署に被害届を出していた。 日本社会では、ブログへの書き込みは<2ちゃんねる>だけでなく匿名、すなわち自分の名前を出さず、それが故に言いたい放題、誹謗中傷し放題の状態が続いている。ちなみに、私は現在「独立系メディア」以外に7つのいわゆるブログを設置、運用しているが、すべて実名である。 実際、本件に関してはブログだけでなく、2ちゃんねるでもスマイリーキクチ氏への各種誹謗中傷、侮辱が書き込まれている。 日本人の多くは、実名では何も言わない、言えないくせに、匿名だととんでもない誹謗中傷、侮辱的な発言をするひとが多いのは実に恥ずかしいことだ。その匿名性をあたかも日本文化であるかのごとく吹聴していた者さえいる。その典型は2ちゃんねるだ。現在多くのブログ、とくに激しい右翼的発言をしているブログはその大部分が匿名サイトとなっている。 ■なぜ情報発信者が特定できるか! その昔は、匿名書き込みなら、自分のメールアドレスやドメインでない掲示板からの書き込みなので、いくら誹謗中傷や侮蔑、罵倒など刑法に違反する内容を書き込んでも、自分のことはわかるはずがないと思っていた。 だが、通称、プロバイダ責任制限法、正確には以下の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)が制定されたことで、上記の刑法犯罪のうち、凶悪犯罪や親告罪相当の事件や当該分野での権利侵害事件については、当事者から警察や検察に刑事告訴などが出され受理されると、捜査当局がプロバイダーやサイトの設置責任者、サーバ管理者・運用者などに当該サイトやブログの実際の設置者の名前、住所等を知らせることができるようになった。 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 目的 特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」という。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。 内容 (1) プロバイダ等の損害賠償責任の制限 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときに、関係す るプロバイダ等が、これによって生じた損害について、賠償の責めに任じない場 合の規定を設ける。 (2) 発信者情報の開示請求 特定電気通信による情報の流通により自己の権利を侵害されたとする者が、関 係するプロバイダ等に対し、当該プロバイダ等が保有する発信者の情報の開示を 請求できる規定を設ける。 もちろん、この法の実際の適用は、被害者からの刑事告発などに基づく犯罪捜査に関連してのものが中心である。盗聴法同様、通常のインターネット上での情報の流通に関しては個人情報保護及び企業の営業上の守秘などから行えない。 現在、警視庁には上記の法などに対応する目的で電子情報・通信ネットワークに詳しい捜査官が約100名配置され、この種の犯罪を常時関しているとも聞く。 当然、この種の監視はひとつ間違えば、ビッグブラザース(ジョージオウエル1984年)の相互監視社会に通ずる可能性もある。あまりにも酷い言いたい放題状態もきわめて問題であることは言うまでもない。 だが、日本社会のブログ上で常套化している自分の名前を出さなければ、自分のアドレス、ドメイン、URLでなければ他人の誹謗中傷したり侮辱しても分からない状態はないと認識すべきである。 出典:政府広報より ■違法なソフトダウンロードも摘発される 次の話題に移ろう。 日本社会でも、市販の映画DVDや音楽CDなどをウィニー、シェアーなどの無料ファイルシェアーソフトを用いてダウンロードし使っている人が後を絶たない。 日本の著作権法で権利侵害と見なされる行為を以下に列記する。違法なダウンロードあるいは複写で映画DVDや音楽CDを得ることはむろん違法行為である。さらに後に示すが、それらを有料で第三者に頒布する行為には現在、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金など日本でも厳しい罰則がかけられることになる。
著作権法違反の罰則規定を以下に示す。 十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金と非常に厳しい。
さらに法人に関しては、以下にあるように三億円以下の罰金刑がかけられるようになっているので、個人とは別に違反行為者を出した法人の管理責任が厳しく問われることになる。 以下抜粋
ところでファイルシェアソフトであるウィニーなどを使っているひとがウィルスに感染し、重要なファイルやいかがわしい写真などをばらまいていることがよく新聞等に掲載されている。自衛隊からはイージス艦などの重要文書が外にばらまかれている報道もあった。 上記はあくまでウイルスに感染したために起きていることだが、問題は誹謗中傷同様、自分のアドレス、名前、所在などが分からないとしてウィニー、シェアーなどの無料ソフトを使い、DVDやCDをダウンロードしている場合でも、ここに来てその所在がDVDやCD作成者(会社のセキュリテー問題の代理人等)に分かるようになってきた。 これは米国の映画会社や音楽関係の事業者側が違法にDVDやCDを上記及びそれに類するソフトを用いてダウンロードした場合、犯罪者のIPアドレスなどをたとえば欧米からでも取得することが可能となってきたことによる。また新手の無料シェアソフトには、マッチポンプ的にダウンロードした者が使っているPCのIPアドレスが映画会社や音楽関係の事業者側で博できるようにしたものもあるだ。 したがって、違法にダウンロードし、第三者に有料で頒布するなどとくに悪質な者については、著作権法及び刑法により懲罰的な対応をとるだけでなく、民事的にも超高額な損害賠償を請求してくる可能性がある。 ということで、匿名性に紛れて誹謗中傷、侮辱をしたり、違法に知的財産ソフトをダウンロードし利用したり頒布することに、今後、欧米はもとより日本でも司法が厳しく対応する可能性がある。 いずれにせよ、匿名性をいいことに、他人の権利を侵害する行為は厳に慎まなければならないということであり、軽はずみの代償は大きい!! |