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勝手な価値判断と憶測
時事通信の普天間移設
トンデモ記事
青山貞一
28 Dec. 2009
独立系メディア「今日のコラム」

 
 普天間基地をめぐる日本の大メディアの報道が、自民党やその系統の評論家、外務・防衛OBの意向を受けてか、なぜか辺野古への流れをつくっている。それがこのところより一層鮮明となっている。

 そんななか、インド訪問中の鳩山首相が行った記者会見に関連し、時事通信が以下の記事を日本に配信した。まずは、しっかり読んで欲しい。

米反発に方針転換か=普天間移設−鳩山首相

 【ニューデリー時事】

 鳩山由紀夫首相は28日、懸案の米軍普天間飛行場の移設問題で現行計画の履行を求める米国の意向を尊重する姿勢を鮮明にした。県内移設に反対する社民党に配慮し、新たな移設先を模索し始めたが、反発を強める同盟国の米国を前に、方針転換を強くにじませた。

 首相は今月半ばに、沖縄県名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設する日米合意の白紙化を米側に伝えた段階では「辺野古ではない地域を模索し、決めるという状況を何としてもつくり上げていきたい」と新たな移設先の選定に強い意欲を示していた。

 しかし、こうした鳩山政権に対し、米国は一層反発。クリントン米国務長官が藤崎一郎駐米大使を呼び出し、現行計画の早期履行を迫った。与党内からも日米同盟関係の悪化を懸念する声が上がった。

 普天間問題で首相は当初、明確な方針を示さず、混乱を招いた。2010年度予算編成でも指導力を発揮できず、自身の「政治とカネ」にまつわる問題で世論の批判を受けた。こうしたことが、内閣支持率の低下につながっているとの見方が与党内では支配的だ。

 首相は来年5月をめどに、移設先の最終結論をまとめる考えだが、社民党が現行案を拒否するのは明白で、政府・与党内の協議は難航必至だ。「米国の意向を無視した与党合意はあり得ない」とまで言い切った首相の指導力が今後、問われることになる。(2009/12/29-00:41)

黄色付けは筆者


 上の時事記事のなかで、「しかし、こうした鳩山政権に対し、米国は一層反発。クリントン米国務長官が藤崎一郎駐米大使を呼び出し、現行計画の早期履行を迫った。与党内からも日米同盟関係の悪化を懸念する声が上がった。」という下りがある。

 周知のように、インターネットメディアを中心に、クリントン米国務長官が藤崎大使を呼び出した事実はなく、藤崎大使が国務省に立ち寄ったことがほぼ間違いないものとなっている。

 その藤崎大使は、自ら普天間基地の移設先に関連し、米国側が怒りを露わにしたなどと外務省に伺いを立てることもなく、勝手に米国にいる日本のメディアにリークしていたことも明らかになっている。

 そのような中、時事の記事では、「米国は一層反発。クリントン米国務長官が藤崎一郎駐米大使を呼び出し、現行計画の早期履行を迫った。与党内からも日米同盟関係の悪化を懸念する声が上がった」と書いているのだから、何おかいわんやである。

 何と懸案の問題についてメディアとして事実を確認することなく、藤崎大使の言い分だけを一方的につなぎ合わせ使っている。

<参考>藤崎問題ブログ
・天木直人:藤崎発言騒動が寝た子をさますもう一つの醜聞
・外務副大臣が国務長官の大使呼び出し否定を否定!…ヤメ蚊
・やっぱり、国務長官が大使を呼び出したんじゃなかったでしょ〜普天間移転問題 ヤメ蚊
・クリントンから呼び出しデッチ上げ〜藤崎駐米大使はクビにしろ 日刊ゲンダイ
・またしてもNHKニュースで報道の名を借りた「世論誘導」 JanJan

 しかも、12月28日、小沢幹事長は、普天間基地の辺野古移設には否定的と述べている。

 もうひとつ大きな問題がある。

 首相は来年5月をめどに、移設先の最終結論をまとめる考えの延長で、「社民党が現行案を拒否するのは明白で、政府・与党内の協議は難航必至だ。「米国の意向を無視した与党合意はあり得ない」とまで言い切った」と言い切っているのも、時事の記者の憶測である。

 というのも、3党間で普天間基地施設問題の政調会長クラスの初会合を開いたのが、日本時間の12月28日、議事進行役の平野官房長官も、先の鳩山首相の抑止力からみてグアムへの司令部以外の基地移転は困難との発言を打ち消し、各党の代替案を持ち寄ることを確認したばかりである。 

 この時点で「社民党が現行案を拒否するのは明白」などと言えるのか? 社民党だけでなく、民主党も怒るだろう。記者が勝手に憶測するのは自由だが、明白などと書く事実、裏付けはないはずだ。

 この記事は、時事通信の首相随行記者が、12月月28日の初会合の内容を把握した上での記事なのか、それともインドでの首相会見だけで勝手に憶測し書いたのか波不明だ。

 しかし、冒頭に述べたように、競って普天間飛行場代替施設の辺野古移設に流れをつくりたい日本の大メディアのこと、あれこれ自分の考えて流れに沿わせる素材を集め、事実認識もなく価値判断だけで書いた記事と言わざるをえない。

 こんないい加減な記事だからか、記名がないのもメディアとして極めて不見識であり無責任である。

 ちなみに、とかく民主政権に勇み足や言わないことを勝手に書いたとインターネット上で激しい批判を受けている産経新聞のインドからの共同配信記事を見ると、以下のように事実報道に徹しており、上の時事の記事ような記者による価値判断による憶測記事の片鱗もない。

 一体、産経新聞顔負けの時事通信はどうなっているのか? 

鳩山首相、普天間移設で「米国の意向無視しない」5月までに結論

 インド・ムンバイ(共同) 【ニューデリー=田北真樹子】

インド訪問中の鳩山由紀夫首相は28日、ニューデリー市内のホテルで記者団と懇談した。首相は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、「当然、米国の意向を無視した与党合意はありえない。

 日米同盟、安全保障にとって、最も望ましい解決策を何としても見いだしていく」と述べ、米国の主張に耳を傾けながら与党間協議を進める考えを表明した。

 また、結論を出す時期について「来年5月」と改めて表明。「日米の中でも、5月という目標設定設定の下で、最終的な結論を出す」とした。

 さらに首相は「普天間問題では、私は常に一貫した発言を続けている。それを皆さん(マスコミ)が一部分だけとらえて(いる)。全体を聞いてもらえば何も揺れていない」と述べ、異例のメディア批判を展開した。