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沖縄選出の国会議員が
地元民を怒らせる罪深さ

斉藤貴男
日刊ゲンダイ

10 March 2010
独立系メディア「今日のコラム」

何が何でも沖縄に基地を残したい彼らの思惑は何なのか

 「代議士はテレビなどで“国外・県外移設は理想論に過ぎない。(自分が主張している)シュワブ陸上案こそが現実的だ”と繰り返している。でも、彼はキャンプ・シュワブ周辺の実態を何も分かっていません。現実を知らないのはあなた方。国民新党の方ではないか」

 大城敬人さんが喝破した。さる2月26日、那覇市内の下地幹郎事務所。

 米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)の問題をめぐり、シュワブ陸上案や米空軍嘉手納基地への統合案など、県内移設にこだわり続けてきた衆院議員の拠点を複数の市民団体や住民らが抗議に訪れていた。たまたま沖縄に居合わせた私も同行したので報告したい。

 彼らによれば、シュワブ周辺はただでさえ騒音に苛(さいな)まれ続けている。早朝から深夜まで、大型ヘリの離発着だけでなく、廃弾処理や爆破訓練のあおりで裂け目が入った家さえあるという。

 肝心の下地議員は東京にいたので不在。代わって応対した地元秘書の態度に業を煮やして、こちらは取材ではなく、明確に抗議団のメンバーとして参加していた芥川賞作家の目取真俊氏が言った。

 「ヤマトンチュー(本土の人間)は、そんな実態など知りません。沖縄選出の下地さんが、既存の基地なのだから問題ないなどとテレビで公言すれば、みんなそのまま受け入れます。やっておられることの罪深さを自覚してもらいたい」

 だが、何も変わらない。8日には政府・与党の沖縄基地問題検討委員会が開かれているはずだが、少しは人間らしい議論が交わされたのだろうか。

 おかしなことが多すぎる。

 実は海兵隊の沖縄駐留にこだわっているのは日本政府の側で、当の米軍は普天間基地の機能および全部隊のグアム島統合計画を2008年4月に発表済み(詳しくは吉田健正著「沖縄の海兵隊はグアムへ行く」高文研など参照)なのに、なぜか、報道されない。

沖縄の海兵隊はグアムへ行く 米軍のグアム統合計画

吉田健正著 高文研刊 
1,200円 (税込 1,260 円) 送料無料

注)先週日曜日、三鷹公会堂で開催された普天間飛行場代替施設を辺野古・キャンプシュワブに移設することに反対するシンポジウムで青山貞一が基調講演した際、筆者の吉田健正氏もいらしており、講演後ご本人から一冊謹呈いただきました。青山貞一
 シュワブ周辺には新たな基地利権をにらんだ政治家たちが絡む土地取得が目立っていると日刊ゲンダイ本紙が先に報じていたが、それだけではないかもしれない。米軍の戦争で儲けたい人々の哄笑(こうしょう)が聞こえてくるようだ。

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▽さいとう・たかお 1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「機会不平等」「『非国民』のすすめ」「安心のファシズム」など著書多数。

【斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」】より

(日刊ゲンダイ 2010/03/08 掲載)