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2010 年3 月9日 地球温暖化対策としての原発推進に反対する環境NGO の要請書 原発の推進は持続可能な社会を実現しない 地球温暖化対策基本法案への明記は中止を! 現在、日本政府は、今国会中の成立を目指して「地球温暖化対策基本法案」を協議している。昨年9月に新しく誕生した鳩山政権は、日本の中期目標として25%削減を掲げるなど、旧政権下で他の先進諸国からはるかに後退していた日本の温暖化対策を、前向きに転換したかのようだ。 しかし、具体的施策を講じなくてはならないここへきて、次第にさまざまな矛盾が明らかになっている。特に迷走しているのは、温暖化対策の中心となるべきエネルギー政策についてである。 これまでも民主党の一部議員は原子力の推進を表明してきたが、政権取得以降は、温暖化対策と称して当然のごとく原発推進を公言する事態となっている。 経産省の政務三役の発言が目立つが、つい先日、鳩山総理も、まだ協議中の「地球温暖化対策基本法案」に、原発推進を書き込むことを明言するなど、新政権はこれまでの自民党政権よりもなりふり構わぬ原発推進にすらみえる。 原子力が抱える問題は、総理が言及した廃棄物や安全性に関してだけではない。 1990 年から日本の二酸化炭素排出を押し上げてきた最大の要因は、電力部門の石炭使用の増加であり、大規模電源のバックアップとして対になる石炭の利用は、原発推進が続く限り減らすことはできない。 現実にも、近年国内では事故や地震による原発停止が続き、化石燃料による発電で補充発電している現状があり、原発が安定的な対策でないことを露呈している。 省エネと自然エネルギーが普及した脱地球温暖化社会は、必然的に、地域が活力を発揮し都市と支え合う地域分散型となり、そうした社会では原子力のような巨大エネルギー供給システムは、逆に大きな不安定要素となる。 省エネや自然エネルギーの多くが極めて短期間で導入できるのに比べ、原子力の開発・運転開始には十年単位の時間がかかる。また、原子力に集中する膨大な資金は他の対策への投資を遅らせる。原子力を地球温暖化対策に据えることは、他の選択肢を無くすことであり、原子力では、深刻化する気候変動の速度には、到底追いつかない。 現時点では、社民党だけが基本法案における原発推進明記について反対を表明している。そしてこれを取り上げ、あたかもこの反対が基本法の審議遅れの原因であるかのような報道がなされている。 しかし、これは事実ではない。遅れの最大の原因は、産業界や経産省が、総量を規制すべきキャップ&トレード(削減義務付排出量取引)に、肝心の総量キャップを設けず、原単位制を導入しようとしているためである。 このような報道は、産業排出の総量規制が法案の最も重要な施策かつ争点となっているという事実を覆い隠してしまう。また、社民党の原発明記反対の主張に対し“民主党内から「閣内から去るべきだ」と反発の声も”あるという。 これは民意を反映した声とは言いがたい。原発推進が市民から広く支持されているかのような認識は、何を根拠としているのだろう。 わたしたち環境NGO は、現政権の中期目標などの温暖化対策を高く評価するが、今まで日本の原子力政策に対してずっと異議を唱えてきたし、温暖化対策としての原発推進に賛同したことはない。不偏不党を原則とするNGO としては、民主党内からも脱原子力を訴える声が上がることを強く望んでいる。 原子力への幻想とともに、化石燃料を主軸にしたこれまでのエネルギー政策が、日本における温暖化対策の失敗を招いている。 政府は、持続可能な社会の実現という環境政策の基本に立ち戻り、地球温暖化対策としての原発推進を撤回し、省エネルギーと自然エネルギーに基づく脱地球温暖化社会の構築に向けて、今すぐ舵を切るべきである。 |