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東京地検特捜部リークによる
大メデイア小沢報道の奇

E顕示された事実の真実性を探る
解明の視点(6)支出項目〜


青山貞一
17 Jan. 2010
独立系メディア


 ここでは、小沢氏(あるいは陸山会)側が購入した土地と建物が政治資金収支報告書のなかでは、一体何の支出項目となっているのかについて言及したい。


●政治資金規正法における支出項目

 最初に政治資金規正法における支出項目を示す。

 支出項目は大別して「経常経費」と「政治活動費」の2つがある。「経常経費」にはさらに、@人件費、A光熱水費、B備品・消耗品費、それにC事務所費がある。

 また「政治活動費」には、@組織活動費、A選挙関係費、B機関紙誌の発行その他の事業費、C調査研究費 、D寄付・交付金 、それにEその他の経費がある。

政治資金収支報告書の支出項目(改正法)

経常経費

@人件費
 政治団体の職員の給料や諸手当、健康保険料

A光熱水費
 電気、ガス、水道の使用料及びこれらの計器使用料等

B備品・消耗品費
 机、コピー機、自動車、封筒などの購入費や、新聞・雑誌代、ガソリン代

C事務所費
 事務所の賃料損料(地代、家賃)、公租公課、火災保険金等の
 各種保険金、電話使用量、切手購入費、修繕料その他これらに
 類する経費で事務所の維持に通常必要とされるもの


政治活動費

@組織活動費
 行事費や組織対策費、交際費

A選挙関係費
 公認推薦料や陣中見舞いなど選挙関連の経費

B機関紙誌の発行その他の事業費
 機関紙誌の材料費や印刷代、発送費、パーティー開催費

C調査研究費
 研修会費や書籍購入費

D寄付・交付金
 政治活動における寄付や会費

Eその他の経費
 借入金返済や貸付金


●何年のどの支出項目で土地と建物を購入したか?

 本シリーズの第三弾の「現金主義」では、土地購入代金及び宿舎建築物の建築費用は次のように書かれていた。 


4)平成17年に土地購入代金342百万円及び宿舎の建設費用23百万円を
  支払い、「事務所費(経常経費)」として処理した。


 すなわち、上記4)では、土地購入代金及び宿舎建築物の建築費用は、陸山会の平成17年の政治資金収支報告書のなかでは、、「経常経費」の「事務所費」に相当する費目として処理されていると説明している。

 もちろん、果たしてこれが事実かどうか、またその処理が正しいかどうかが問題となるが、ここでは支出項目について、収支報告書に示される既存データから解明を試みる。

 本シリーズの第二弾の基礎データに掲載した下表(表1)のうち平成17年の支出勘定の「経常経費」を見ると、確かに「4億2千9百万円」(429,030)が支出されており、さらに「事務所費」として「4億1千5百万円」(415,254)が支出されていることが分かる。

 表1を見ると、平成17年の「経常経費」は平成16年〜平成20年のどの年の支出額と比べても突出して多いことがわかり、平成17年の「経常経費」、そのうち「事務所経費」で、土地購入代金及び宿舎建築物の建築費用を払ったことが推定できる。事務所費は表1中、ピンク色の部分に相当する。

 さらに小澤氏個人と陸山会代表の小沢氏との間で取り交わされた以下の確認書をが平成17年1月となっていることからも確認できる。

 これに対し、故中川昭一氏を信奉するあるひとがブログで「小沢代表の資産管理団体である陸山会が、13カ所に合計10億2000万円相当の不動産を政治資金で買い漁っている。しかもこれらの不動産がすべて小沢代表本人の名義になっている問題です。要するに、小沢さんが自分のポケットマネーではなく、政治資金を使って蓄財しているという問題です」と書いている。

 しかし、土地と建物の名義が小澤一郎(個人)となっているのは、以下の確認書で明確に理由を述べている。確認書の法的効力については疑問があるが、小澤氏自身の言い分からは、政治資金で小澤氏個人の資産をむやみに増やしているものではないことが分かる。




確認書を説明する小沢一郎幹事長

 なお、上記の確認書は以下の不動産にもある。BとCが今回の直接対象物件(東京都世田谷区深沢8-28)である。

@ 仙台事務所
所在地:仙台市青葉区錦町1−3
登記日:平成15年4月30日
確認書日付:平成18年9月14日

A 盛岡事務所
所在地:盛岡市開運橋通3
売買日:平成15年3月18日
確認書日付:平成18年9月14日

B 深沢事務所・土地(476平米)
所在地:世田谷区深沢8−28
登記日:平成17年1月7日
確認書日付:平成17年1月7日

C 深沢事務所・建物
所在地:同
登記日:平成18年6月6日(池田秘書は登記が事務的に遅れたためと説明)
確認書日付:平成17年9月14日


D チュリス赤坂事務所
所在地:赤坂2−17
登記日:平成6年1月25日
確認書日付:平成7年1月25日

E 水沢事務所
所在地:岩手県奥州市水沢区袋町6
登記日:平成11年11月30日
確認書日付:平成18年9月14日

F 政策事務所
所在地:赤坂2−17
登記日:平成6年2月22日
確認書日付:平成6年12月22日

G 赤坂事務所B
所在地:赤坂2−8
登記日:平成13年1月18日
確認書日付:平成18年9月14日

H 赤坂事務所A
所在地:赤坂6−1306
登記日:平成11年3月4日
確認書日付:平成18年9月14日

I 元赤坂事務所駐車場
所在地:元赤坂1−7
登記日:平成6年11月24日
確認書日付:平成6年11月25日

J 保管事務所(資料と機材の保管用)
所在地:赤坂2−14
登記日:平成6年12月22日
確認書日付:平成6年12月22日

K 南青山事務所
所在地:南青山2−2
登記日:平成13年12月22日
確認書日付:平成18年9月14日

L 元赤坂事務所
所在地:元赤坂1−7
登記日:平成6年11月24日
確認書日付:平成6年11月25日
 
上記の確認書の出典:http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/121253/

 つまり、これは陸山会が小沢氏個人あるいは銀行から借入した4億円及びその返済金とは別に、土地購入代金及び宿舎建築物の建築費用のために「経常経費」の「事務所経費」として支出されたものと推察できる。事務所費は表1中、ピンク色の部分に相当する。

表1 陸山会の平成15年〜平成20年の政治資金収支概要<単位:千円>
平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
収入 379,048 580,024 339,099 151,609 103,854 163,035
 寄付金 320,285 177,143 334,386 128,981 86,504 52,590
 (うち政治団体) 307,146 157,100 309,060 111,640 70,000 37,020
 借入 56,500 400,000 0 0 0 0
 *一新会からの寄付 0 0 0 17,023 0 0
 その他 2,262 2,880 4,713 5,605 17,350 110,445
支出 387,627 121,202 679,964 342,414 115,060 170,6164
 経常経費 111,253 44,766 429,030 74,123 56,182 36,094
 (うち事務所費) 99,119 38,355 415,254 58,351 46,505 26,085
 政治活動費 276,373 76,436 250,933 268,290 58,878 134,522
差引 -8,580 458,821 -340,865 -190,805 -11,207 -7,582
前年繰越 159,808 151,229 610,051 269,186 78,382 67,176
次年繰越 151,229 610,051 269,186 78,382 67,176 59,594
出典:総務省公式ホームページにある官報 

上記を表に書き込むと以下のようになるものと思われる。


●政治資金で土地と建物を購入してよいのか?

 次の課題は、次のようなものであろう。

 すなわち、多くの民間企業経営者や会計担当者は、土地や建物などの資産となる物件を経常経費の事務所費でなぜ払えるのかと思われるだろう。

 周知のように、株式会社がこの種の土地や建物を購入するときは、一度に経費化することは出来ず、何年(何10年)にわけ経費化される。

 しかし、政治資金規正法では、以下にあるように平成19年8月6日以前にあっては、資産となる土地や建物の物件を事務所費でいっぺんに購入することができたのである。

 小沢氏も「何で建物を事務所経費で借りられるのに、事務所の建物を買うことはおかしい」のという趣旨の発言をしているが、少なくとも平成19年以前には、政治資金で土地や建物を購入すること、それも一括して現金で支払うことが容認されていたことになる。

●政治資金規正法における土地・建物等の所有の禁止に係わる法律改正について

 政治資金規正法では「土地・建物等の所有が禁じられている」(第19条の2の2)があるが、本改正が施行される平成19年8月6日以前に取得した物件については対象外とされている(平成19年7月6日法律第107号・附則第2条1号)。

 陸山会関連では平成19年(12月末)時点で所有する土地・建物の最新の物件は平成19年4月11日のものであり、上記改正法の適用除外となる。

 このように、平成19年8月6日以前にあっては、たとえ高額であっても、当時は土地と建物を政治資金規正法の範囲内で購入することが許されていたことになる。

 したがって、たとえば平成18年の陸山会の治資金収支報告書にある以下の土地や建物を資産として政治団体がもつことは何ら違法性はないことになる。

平成18年:資産(土地)一覧(対象物件:世田谷区深澤8丁目28番5号)


平成18年:資産(建物)一覧(対象物件:世田谷区深澤8丁目28番5号)



●借りた金は何年のどの支出項目で返済したか?

 ちなみに土地建物購入のために借入した4億円の返済は、平成17年と平成18年に下にあるように小澤一郎氏(小沢氏個人)への借入金の返済としてそれぞれの年に2億円ずつ、都合4億円が支払われていることが分かる。上の表1中、グリーン部分がそれに相当する。

 ただし、現在公開されている総務省の政治資金収支報告書では、平成18年以降しか詳細データがないので、平成17年分は示せないが、表1の「政治活動費」を見れば平成17年に2億5千万円、平成18年に2億6千800万円が支出されていることから、平成17年にも平成18年同様、小澤一郎氏に2億円が返済されているものと推定できる。

平成18年:小澤一郎への借入金返済(返済金額2億円


 以下は上記の2億円の借入金返済を含む政治活動費報告である。「2.政治活動費」の(6)に「その他の経費」があり、そこに2億3600万円の支出がある。これに上記小澤氏への2億円の借入金返済が含まれると推定される。 これは冒頭に示した支出項目に照らして妥当である。



 以下は上の(6)その他の経費の拡大表示である。




●領収書必要性の有無

 では政治資金の支出に関連し、領収書添付の必要性はどうなっているのだろうか?

 表2は政治資金収支報告書の経常経費と政治活動費に関連した支出に領収書が必要とされるかどうかを示したものである。

 表2では、経常経費は領収書を必要とせず、政治活動費については、<支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日>と<領収書の添付>が必要であることが分かる。

表2 支出に伴い必要とされる領収書などの書類
分類 項目 報告内容及び領収書の添付の必要性
経常経費 @人件費
A光熱水費
B備品・消耗品費
C事務所費
政治活動費 @組織活動費 支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日

領収書の添付が必要
A選挙関係費
B機関紙誌の発行その他の事業費
C調査研究費
D寄附・交付金
Eその他の経費

 これも株式会社の会計からすると信じがたいことではあるが、経常経費については報告内容及び領収書の添付の必要性がないことになる。

 したがって、平成19年以前にあっては、領収書がなくとも「経常経費」の「事務所経費」で土地と建物が買えたことになる。


つづく