総合的環境安全と地域振興を考えるシンポジウム 廃棄物を資源エネルギー化し 脱焼却・脱埋立を実現する政策提案 in 沖縄県名護 青山貞一 東京都市大学名誉教授・環境総合研究所顧問 掲載月日:2013年10月22日 独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁 |
先ほど、沖縄県の名護から帰宅しました。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8
◆ゴミは資源、脱焼却・脱埋立に向けての戦略シンポジウム 今回は沖縄県名護市の市民団体が主催したゴミを燃やさず、安易に埋めないためには、どのような政策そして技術がありうるかについて講演し、議論してきました。主催者は名護市在住の営農者、研究者らです。 シンポジウムは、最初に青山貞一(東京都市大学・環境総合研究所)、芝原幸夫(バイオマス産業エネルギー研究所)が講演した後、地元市民団体の代表者らによる報告、その後、参加者を含めた全体討論を行いました。討論の司会は青山が担当しました。 シンポジウムでは、世界一ゴミを燃やしている日本の現状を批判的に総括するとともに、先進国で脱焼却を実現し、脱埋め立てに向かっているカナダ、ドイツ、イタリアなどの実例を紹介し、そこから地域の農業、経済と連携し、廃棄物を資源として活用する新たなゼロウエイストを政策提言するとともに、その実現可能性、費用対便益などについて詳細に検討、試算しました。 とりわけ、現在日本では自然エネルギーによる発電には固定価格買取制度(FIT)がすでに稼働しており、その制度と連携することにより、新たな農業エネルギー経営の可能性もでてきます。 まずは青山貞一による従来の日本型のゴミ政策とゼロウェイスト政策との違いについての問題提起です(以下)。日本型は中央集権的、技術至上主義的、談合体質的そしてハイリスク的といえます。 出典:青山貞一、池田こみち シンポジウムでは、非常に有意義な脱焼却炉・脱溶融炉・脱埋立の具体的方法の政策提言がなされました。 とくに生ゴミ、農作物廃棄物などを活用した堆肥技術、メタンガス発酵技術、さらに現在自然エネルギー分野で活発に使われている自然エネ発電の固定価格買取制度(FIT)にも着目しました。 以下は有名なカナダ・ノバスコシア州のシンプルな「ゼロ・ウエイスト政策」モデル。すでに10年以上が経過しています。 出典:青山貞一、池田こみち 出典:青山貞一、池田こみち 出典:青山貞一、池田こみち 出典:青山貞一、池田こみち カナダのノバスコシア州では、NPO/コンサルタントと行政職員がパートナーシップを組むことで、廃棄物として燃やされ埋め立てられていたゴミを身近な技術により廃棄物に転換(ダイバージョン)する政策、手法を「ゼロ・エミッションプラン」として練り上げました。 出典:青山貞一、池田こみち 出典:青山貞一、池田こみち 出典:青山貞一、池田こみち 次は、大阪から参加されましたバイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫氏による名護市を具体的事例とした詳細な政策提言です。 ◆FIT(固定価格買取制度)を生かした農業自然エネルギー開発 ゴミを燃やさず埋め立てず、有機物の家庭ゴミ、農業ゴミを原材料としてメタンガスを発酵させ、メタンガスで発電を行い、電気をFITを活用し、電力会社に売電することにより、一石二鳥、三鳥の農業経営や市町村経営についても政策提言しています。 シンポジウムでは、FIT(固定価格買取制度)を生かした環境エネルギー、農業自然エネルギー開発に連動した脱焼却、脱埋立の具体的な政策と具体的な方法、経営に踏み込んだ提案を名護市役所はじめ沖縄県各市町村に対し、政策提言することもできました。 下は、バイオマス産業エネルギー研究所の芝原幸夫所長が名護市に提案しているバイオマス資源を活用したエネルギー農業のスキームです。詳細な費用対便益も幾通りも計算されており、非常に高い実行可能性があるものと思えます。 出典:バイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫 出典:バイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫 出典:バイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫 下はメタン発酵用原料の種類とメタン発酵量についての原単位データです。 出典:バイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫 下は日本とドイツにおけるメタン発酵施設の普及の比較です。ドイツでは日本の10倍以上、農家の7割が導入しています! 出典:バイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫 下はエネルギー農業の効果の試算です。FITと連携することで大きな効果が期待できます。 出典:バイオマス産業エネルギー研究所 芝原幸夫 会場には環境省を退職したキャリアー官僚もきており、こんな忌憚のない歯切れのいい環境省の政策批判と政策提言ははじめてですと大喜びされ、懇親会まで参加していました。 また私が焼却、埋め立て主義の悪しき前例として事例発表した茨城県龍ケ崎、埼玉県所沢、東京都日の出町などのダイオキシン問題で10年以上前に一緒に闘った筑波の国立研究所にいた研究者がなんと沖縄に移住しており、おそらくFM放送かビラをみて会場に参加され、青山さんと呼びかけられびっくりしました! このシンポジウムは、反対運動の決起集会ではなく、あくまで脱焼却炉・脱溶融炉・脱埋立のための理念、政策、技術を東京と大阪から参加した2人の実務者が提案するものです。 自然エネ開発、FITを考慮した新たなまちづくりを提案するシンポジウムとなったことに大きな意義があると思います。 環境負荷、環境汚染がないだけでなく、エネルギー収支面、財政面、経営面などで持続可能な環境・農業・エネルギーシステムの戦略的な提案です。 実際、参加者の多くがこのようなシンポジウムははじめてだと言っていました! 以下は、2013日10月21日の琉球新報による開催記事です。写真はパネル討議、青山は左から二人目です。なお、本シンポジウムの詳細については、動画で報告します。 下の写真は、宿泊先ホテルから見た名護市の風景です。名護市には、過去6回ほど普天間基地の名護移設による環境問題に関連し6回行っています。 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 |