細菌感染、放射線被ばく、喫煙、飲酒、 工場爆破などの「がんリスク」試算 青山貞一・鷹取敦・池田こみち 環境総合研究所(東京都目黒区) 掲載月日:2013年11月5日 独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁 |
国立がん研究センター(以下、JPHC)によるがん研究の成果に見るがんのリスク試算をもとに、福島第一原発事故による長期的な生涯外部被ばくによるがんリスクを推計するとともに、現地調査を実施した具体的な事例にあてはめてみました。 ここでは、JPHC研究の対象となっている主に細菌感染、放射線被ばく、喫煙、飲酒、工場爆破(ダイオキシン曝露)などを対象としがんリスクを推計しています。 JPHC研究成果の公表当初、NHKなどが報道しました。しかし、報道内容が非常にわかりにくかったことに加え、もともと難解であったため、この成果はほとんど無視されていました。 今回、環境総合研究所(東京都目黒区)の空間放射線(外部被ばく)の積算量推計システムを用いることで、視覚的にも可能な限り分かりやすく示すことにしました。 なお、表では、全部位と特定部位に分けて表示してあります。以下の表中、()の数字は、喫煙、飲酒、放射線被ばく、事故などがない場合に比べてのがんリスクの増大値です。 国立がん研究センターが参考にした事例は、全部位の放射線外部被ばくについては広島・長崎の原爆研究、職業曝露は、工場爆発事故(北イタリア・セベソ)のデータを、また特定部位の放射線被ばくはチェルノブイリ原発事故、さらに18歳以下の被ばく10-15年後を基にしています。 外部被ばくの積算線量は、あくまで生涯の積算線量ですので、ご注意ください。 表 細菌感染、喫煙、飲酒、放射線被ばく、工場爆破(ダイオキシン 暴露)など による生涯がんリスクの概要
以下に、環境総合研究所による外部被ばく積算線量推計システムを援用した生涯被ばく量の事例を示します。それぞれに対応した具体的事例についても合わせて示します。 ◆1年目の累積被ばく線量が20mSv/年の場合 放射線被ばく(外部被ばく、空間放射線量)の目安は、1年目の累積被ばく線量が20mSv/年の場合の70年の累積生涯被ばく線量200mSv/生涯。ただし、事故1年後の空間放射線被ばく線量は1.56μSv/h 出典:環境総合研究所(東京都目黒区) <参考例>:福島大学金谷川キャンパス
◆1年目の累積被ばく線量が50mSv/年の場合 1年目の累積被ばく線量が50mSv/年の場合の70年の累積生涯被ばく量500 mSv/生涯。ただし、事故1年後の空間放射線量は3.90μSv/h 出典:環境総合研究所(東京都目黒区)
◆1年目の累積被ばく線量が100mSv/年の場合 1年目の累積被ばく線量が100mSv/年の場合の70年の累積生涯被ばく線量1000mSv/生涯。ただし、事故1年後の空間放射線量は7.80μSv/h 出典:環境総合研究所(東京都目黒区) <参考例>飯舘村長泥の事例
上記の生涯被ばく量の推計では、幼児、高齢者による被ばくリスクに関する感受性は考慮していません。またほぼ同一場所に居住することを前提としています。 上記の研究成果で特徴的なことは、喫煙による特定部位(肺)におけるがんリスクが4.2-4.5 と生涯の外部被ばく積算線量の1000mSvクラス、すなわち1年目の外部被ばくの積算量が100mSv/年の場合に相当することです。逆説すれば、1日20本程度の喫煙者は、福島県飯舘村の長泥地域に事故直後から居住し続けることに相当するがんリスクがあるということです。 |