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★1.炉心に巨大な落下物〜原子炉で一番してはならないことが起こった! 2010年8月26日(木)「もんじゅ」で炉内作業中、炉内中継装置と呼ばれる燃料交換用の装置を原子炉容器内に落としたと発表した。 この装置は全長12メートル、直径55センチメートル、重さは3.3トンで、燃料交換作業時にのみ炉内に入れられ、運転中などには引き上げられている。この装置を引っ張りあげている時に約2メートルほど引き上げた時点で落としたとされている。 原子炉で一番してはならないこと、それは炉心に損傷を与えることだ。もちろん炉心とは主に核燃料を指す。 しかし核燃料の健全性を支えるのは原子炉圧力容器を始めとした炉心構造物だ。その構造物に損傷を与えることになったら、補修もしくは交換可能な部品でなければ原子炉は使用不能となる。 今回「もんじゅ」で発生した事故は、その炉心部に3.3トンの重量物を落下させるというものだ。 ★2.東電などが運転する軽水炉の場合、原子炉圧力容器には多くの構造物があるが、燃料交換時には圧力容器の蓋を開放し、燃料取り替えや機器を置くプールの高さまで水を張り、上部格子板の位置まで空っぽにする。 そこに何かを落下させれば、燃料には当たらないが、燃料を支える格子やその外周にあるシュラウド(注)、あるいは圧力容器本体に損傷を与える可能性がある。 このような場合はまず目視点検をし、傷の存在を確認する。その後取り外せるものであれば交換し、外せないものは損傷の大きさを測定する。果たして使い続けられるかどうかは別としても、受けた影響を調べることは出来るだろう。 (注)シュラウド=炉心部を構成する燃料集合体や制御棒を内部に収容する円筒状の構造物。 ★3.「もんじゅ」はどうか〜詳細な調査ができない構造 「もんじゅ」の圧力容器には冷却材のナトリウムが満たされており、これは不透明な液体金属なので内部の装置のうち外せないものは目視は出来ない。そのうえ酸素や水と接触すると爆発的に燃焼するため、蓋を開放しての作業は出来ない。 「プラグ」という小さく穴の開いた装置を介して、全ての作業は行われる。また液体ナトリウムの中で行うように設計されているため、外観検査などを目視確認で行うこと自体が想定されていないのだ。これは致命的である。 今回の事故に関連して目視検査を開始しているが、ファイバースコープ越しにCCDカメラに依らざるを得ない。これでは詳細な調査など出来ない。 目で見て確認さえ出来ずに、損傷の有無を調べることは不可能であろう。たとえなにがしか調査をしたとして、見落としがないかをどうやって保証するのであろうか。 なんでもそうなのだが、「有る」ことを証明できても「無い」ことを証明することは難しい。これだけ大く重たい装置が落下をして、損傷が「無い」ことは事実上証明不可能なのだ。 ★4.ツメでつかむ構造〜理解できない構造 炉心上部でつり下げを伴う作業は、常に落下の危険と隣り合わせだが、このような装置にもかかわらずツメでつかむ構造というのは理解できない。今回の原因が何であれ、外れることを想定していない。 そのまま落下するのは当たり前だ。 このような構想であるならば落下防止のための装置が必ず必要だ。 実際の「もんじゅ」がどうなっていたのかは説明を読んでもはっきりしないが、少なくても止め金具が外れただけで落下したようにしか読み取れない。このような単純な構造では、地震などで揺さぶられても簡単に落ちてしまう。 全く異なるメカニズム(たとえば補助のワイヤや電磁石を使うなど)で、ツメが外れても容易には落下しない設計にすべきだったし、原発の場合はそうなっている場所も多い。 真下がナトリウムの満たされたタンクで、もし落ちたら容易に目視点検も出来ない場所だと言うことに何の緊張感もない。 「ツメが外れるはずがない」思い込みとしても実に低次元で安易だ。 もんじゅの設計は随所にこのようなずさんな部分が目立つ。 世界で最も制御が難しく危険な原子炉の安全設計は、世界で最もずさんだというのだから、言語道断である。 このような原子炉を動かし続けてはならない。 「もんじゅ」は廃炉しかない。 |