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自壊の道をひた走る大メディアH
〜草なぎバカ報道の愚〜
青山貞一
25 April 2009
独立系メディア「今日のコラム」


 SMAPの草なぎ(34)が、酔っぱらって全裸で逮捕されたが、大マスコミはこともあろうかこの騒ぎを夕刊一面に大きく掲載した。NHKですらトップでこれを報じた。

 だが、ジャニーズ事務所所属の人気芸能人ということを除けば、草なぎがしたことは、せいぜい一昼夜留置所(=トラ箱)に入れられ、警察官に説教を受け翌日釈放される程度の事件ともいえないものだ。

 おそらく身柄送検されてもせいぜい略式命令請求、いわゆる略式起訴され数万円から20万円でチョンだろう。

 もちろん、警察が尿検査し家宅捜査したのは、大麻など薬物を所持していないか常用していないかをチェックするためだが、薬物は一切検出されていない。

 となれば大メディアがこぞってトップ扱いしたのは何なのか? この日だけをとっても、大メディアが扱うべきもっともっと重要なニュース、問題はあったはずだ。

 しかし、よく考えれば、このこと自身、今の大マスコミ全体が、いかに劣化しているか、本来報道すべきことを報道せず、いわばどうてもよいことに血道を上げ、結果的に国民にとって重要なことから目をそらさせているかを象徴するような「事件」である。

 まず、この日に報道すべきことは、たとえば、通称、海賊退治法である。

 日本の憲法9条下でアフガン、ガルシア島、イラク派遣以上に自衛隊を海外派兵させる集団的自衛権の一環となる可能性が高い。

 また今後、自衛隊による海外での武器使用に通ずる可能性がある軍事出動法案がこの日、衆議院で成立しているのである。

 もちろん、参議院は否決されるだろう。しかし、いつもように麻生(アホウ)政権は再議にかけるだろうから、60日たてば自動的に日本の将来を占う重要な法案が成立してしまう。

 こんな重要な問題があるにもかかわらず、日本の大メディアは、草なぎ問題にうつつを抜かし、バカ騒ぎすることで、結果的に政府による情報操作による世論誘導に加担したことになる。


 ところで、草なぎといえば、多くのCMにでまくっていたが、そのなかに総務省の地デジ普及のCMがある。今後、草なぎの芸能活動自粛とともに、それらCMはすべてパーとなるだろう。

 周知のように国(総務省)とテレビメディア、家電メーカーが結託し、強引に地デジを推し進めてきたのは、当然その背後に地デジ利権があるからだが、今回の一件で全国のテレビ局127社が無償で垂れ流してきた年間12万8千本のテレビ広告もパーとなる。これを広告料に換算すると数100億円となるそうだ。

 かつて小池百合子衆院議員が環境大臣だったころボクシング亀田興毅選手を廃棄物リサイクルのキャンペーンに全面協力させポスターなどをたくさんつくって政府広報としていたとき、亀田自身が試合で問題を起こし、全てのポスターやCMを切り替えることになり、結果的に膨大な税金の無駄遣いとなったことがある。

 この手のことは枚挙にいとまがない。厚生労働省が国民に年金問題で使っていた江角マキコさんに民主党の菅直人が「自分自身が払ってなかったという」として大問題となった。関連するポスターは全て切り替えられた。ただこの問題では、厚生労働省の情報操作で菅直人氏が払っていないというのは事実でないことが分かっている。

 見栄え、人気だけで芸能人を政府広報に使とトンデモないことになるのだが、政府は懲りずにそれを繰り返している。

 政府と結託して強引に地デジ利権を推し進めてきたテレビ局や家電メーカーそれに政府にとって、今回のふってわいた草なぎ事件は、自業自得であるが、税金の無駄遣いだけは看過できない。

 政府の補正予算にあるエコ家電、地デジ、エコ自動車へのバラマキ支援の問題をまったく報道せず、NHKまでがこれでもかとアホな補正予算を大々的にニュースのトップで報道していたのも、大メディアが何ら本来の社会的役割を果たさず、政府広報になりさがっている実態を如実にしめすものであろう!!


参考:日刊ゲンダイ 2009年4月25日号