「ならず者国家」、イスラエルは いかに軍事大国化したか? 青山貞一 掲載日:2009年1月12日 独立系メディア「今日のコラム」特集:ガザ問題 |
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最先端の戦闘機や戦車などで武装し、何かと暴力や軍事力を行使する「ならず者国家」、イスラエルはどのようにして、これほどまでの軍事大国となったのであろうか? 事実、対GDP軍事支出額(2005年度)で見たイスラエルは世界で第2位である。
イスラエルの軍事費や経済力をその周辺諸国と比べると次のようになります。ただし、データの出典年度などに違いがあ る。
国防費は他の4カ国の合計約38億ドルより遙かに多い約80億ドル。またGDPも他の4カ国の合計に匹敵しています。しかも、イスラエルの軍備は、たえず最新鋭の装備となっている。 イスラエルとパレスチナとは比べようもないものだ。まさに「タケヤリ」と最新ジェット戦闘機ほどの差がある。まさに雲泥の差である。 ガザ地区を攻撃するイスラエル空軍のジェット戦闘機 ガザ地区への地上侵攻準備を整えるイスラエル陸軍 イスラエルと言えば、1939年から1945年にかけ行われた第二次世界大戦で欧州全体で約600万人がナチス・ドイツによって親族、民族が虐殺されたユダヤ人がつくった国である。 いうなれば民族全体がジェノサイドに歴史的遭遇した、これ以上ない悲惨な歴史をもつユダヤ人が、結果として目と鼻の近さにある地域に生活する幼児、子供、お年寄りを殺している様は、どうみても合点が行かない。 イスラエルの攻撃で新だ幼児を痛む家族 イスラエルの攻撃で傷つき怯える幼児 なぜ、かくも悲劇を体験したユダヤ人が地上最大の軍事暴力をもって子供らを虐殺するのか、虐殺ができるのかである。 その背景として、ひとつ事実として言えることがある。 それはイスラエルには戦後、ドイツから膨大な額の賠償がおこなれており、同時に米国からも過去から現在まで巨額の援助が行っていることがある。 まずドイツです。いうまでもなく1939年から1945年まで欧州各地ではナチス・ドイツが後のイスラエル国家の中心となった膨大な数のユダヤ人を強制収容し殺した。 ドイツがイスラエルに行っている戦後の賠償などについて触れた次のような重要な論考がある。 世界シオニスト機構の議長を務めたナフム・ゴールドマンは、『ユダヤの逆説』の中で、次のような事柄を率直に述べている。 「ドイツは総額8000億ドル支払うことになった。イスラエルが国家としてスタートした最初の10年間、ドイツからの賠償金がなければ、現在のインフラの半分も整備されていなかっただろう。 イスラエルの全ての鉄道・船・電力設備・産業基盤はドイツ製である。その上、生存者に支払われる個人賠償があった。イスラエルは現在、ドイツから毎年何億ドルの賠償金をドイツ通貨で受け取っている。 もう数年経てば、イスラエルがドイツから受け取った賠償金の総額は、宝石売却による資金の2倍、もしくは3倍になるだろう。この賠償に現在、不服を言う者は誰もいない。」 出典:「400万人」が「150万人」に訂正された「アウシュヴィッツ記念碑」 注)アウシュビッツT、U、Vの強制収容所における犠牲者数は、当初600万人、次いで400万人、さらに250万人と減少しており、1995年にアウシュビッツ-ビルケナウ博物館の入り口にある碑には、150万人(About one and a half million men, women, and children mainry Jews from various countries of Europe)と刻まれている。 ドイツからイスラエルへの賠償交渉が行われた際の代表団の首席だったナフム・ゴールドマン氏はその、『自伝』の中で、次のように述べている。 ドイツからの賠償金引き渡しは、最近のイスラエルの経済的発展にとって、決定的な要素だった。 もしもドイツが約束を果たしてくれなかったならば、その経済が何度か直面した危機に際してのイスラエルの運命は、どうなっていたであろうか。 鉄道網、電話、港湾設備、灌漑施設、すべての産業分野と農業は、ドイツの賠償金なしには、現在の水準に達することはできなかった。 その上に、何十万人ものナチズムの犠牲者のユダヤ人が、最近、賠償法にもとづいて、しかるべき金額を受け取っている.... 出典:http://www.jca.apc.org/~altmedka/nise-29.html ドイツによるイスラエルへの巨額な賠償は歴史的経緯からして、やむをえない面があるとしても、その後、米国が過去巨額な援助をしてきたことが問題といえる。それらの資金の多くがジェット戦闘機はじめ軍事装置と軍事を最大優先した道路などのインフラに費やされてきた事実がある。 米国は今回もそうですが、国連の安保理事会でイスラエルが行う暴力行為、戦争行為、侵略行為に関する停戦決議などにいつも拒否権を発揮してきた。 その一方で米国は世界の警察官を自認し、あちこちに介入してきたのである。仮に百歩譲って米国が世界の警察官を自認するなら、米国が積極的に介入し、問題を解決すべきは、いうまでもなくイスラエルとパレスチナの間での紛争であろう。 しかし、現実を直視すれば米国はたえずイスラエルを軍事、経済の両面で支援しつづけて来たと言える。 その結果、テロがテロを呼ぶ悪の報復のスパイラルが現出している。毎日のように、子供を含む多くの民間人が紛争、テロの巻き添えとなり犬死にしている。ここでも米国のかかげる「正義」がいかにご都合主義であるか、自分のことをすべて棚に上げての「正義」であるかが分かる。 米国の対外援助の実に3割近くはイスラエル一国に集中している。この援助は第二次世界大戦終結後の1948年から開始され、その後増加している事実がある。 援助額は1949年から19988年に総額840億ドル(約11兆円)にのぼっている。イスラエルは米国のこれら巨大な援助を背景に強大な軍事力を構築し、パレスチナへ軍事占領を行っているのだ。さらに違法な入植地建設を進めてきた。同時に、パレスチナは米国の各種最新兵器の実験場となってきたのである。 さらに下の図を見ていただきたい。米国がイラクに踏み込んだ理由はイラクが大量破壊兵器をもっているからということであった。いうまでもなく、最大の大量破壊兵器は核兵器である。イラクは核兵器はもっていなかった。しかし、米国が起こしたイラク戦争で約10万人の民間人が殺傷されている可能性が高い。 出典:Iraq Body Count 最近の米国の報告書によればイスラエルの核兵器は200基から400基に保有数が増加したとされている。 その米国はイスラエルが核を有することを容認してきた歴史がある。具体的には米国のニクソン政権が非公式に容認、事実上の“お墨付き”を与えたとされている。
なぜ、かくも米国はイスラエルを支援するのか。 この問題について、毎日新聞の「民主帝国、アメリカンパワー」は、「力増すユダヤパワー」と題する特集で、次のように指摘している(記事要約)。 米国のユダヤ系市民は総人口の2〜3%に過ぎないが、米国政治に大きな影響力を持つ。 とくに9.11の同時多発テロ以降、ユダヤ系の資金収集活動が活発化した。昨秋までの1年間に従来の約2倍の96億円に急増した。ユダヤ系の資金は昨秋の中間選挙でも威力を発揮した。 「親イスラエル候補」全米40州で80人にユダヤ系資金援助が集中したという。ニューヨークにあるユダヤ系団体の創設者は、「米国にはイスラエル支援の義務がある」とさえ述べている。 さらにワシントンにあるユダヤ系シンクタンク「高等戦略政治問題研究所」が1996年に出した政策提言、すなわち「フセイン政権を倒し、イラクにヨルダンのハシム家を復活する」ことにまで言及している。 これに対しバージニア軍事研究所のクリフォード・キラコフ教授は、「実現性はともかく、これを書いた人物が現政権にいることが問題だ」と強い疑念を見せたという。 出典:2003年1月3日、毎日新聞朝刊 これらは、特定の民族と宗教が、米国の世界覇権のありように強く関連していることを示すものだ。 |