諫早湾開門差止仮処分判決の 背後には農水省の不作為!? 青山貞一 東京都市大学名誉教授(公共政策論) 掲載月日:2013年11月12日 独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁 |
2013年11月12日、長崎地裁で以下のような諫早湾開門差し止め仮処分を認める判決が出た。 非常にわかりにくい判決である。すでに開門調査は、別の裁判により国(農水省)がすることを決めていたにもかかわらず、農水省が3年近くもたもたしているうちに、今回の真逆の判決がでたのである。
<長崎新聞号外2013年11月12日> http://www.nagasaki-np.co.jp/press/gougai/date/20131112.pdf 閉鎖後の長崎県諫早湾 出典:グーグルマップ 以下にこの問題の経過を示した。経緯にあるように、諫早湾干拓事業について福岡高裁で開門調査裁判が確定したのは2010年12月6日、その直後に菅総理(元)が上告を断念し、開門調査は確定している。 それから今日まで、約3年間、農水省はのらりくらり、開門調査を先延ばしにしてきた。あたかも、民主党政権から自民党政権に変わり、今回の判決を待っていたかのようにである。 2010年12月6日、福岡高等裁判所は佐賀地裁の一審判決を支持し、「5年間の潮受け堤防排水門開放」を国側に命じる判決を下した[5]。判決は潮受堤防の閉め切りと漁業被害との間に因果関係を認め、沿岸の防災上やむをえない場合を除き、水門は常時開放されるべきとした。 2010年12月15日、菅直人内閣総理大臣は、福岡高等裁判所の判決について上告を断念すると表明した[6]。これに対して長崎県は、事前の連絡などが一切なかったとして不快感を示している[7]。 2011年4月19日、長崎県諫早市側の干拓地の入植者や後背地の住民、長崎県農業 振興公社ら352の個人と団体が、国を相手に開門の差し止めを求める訴訟を長崎地方裁判所に提訴した[8]。 2012年11月2日、農水省は、この事業で閉門中の水門の開門調査を2013年12月から実施する方向で長崎県側と最終調整する方針である事を発表した。これは前述の福岡高裁の判決が2013年12月までに開門調査を始めるようにと命じたものであることによる措置[9]であり、それまでに開門による影響を最小限に食い止める対策として1日計約40,000tの淡水を供給できる海水淡水化施設を諫早、雲仙両市に6カ所設置し[10]、また、それぞれ貯水用のため池も併設することを検討しているとも発表している[9]。尚、一部報道では、漁民側の働きかけによって、2013年12月の開門予定が早まる可能性もあると指摘されている[10]。 (註) 6) “菅首相、諫早湾干拓訴訟の上告断念を表明”. 日テレNEWS24 (日本テレビ). (2010年12月15日) 2012年11月4日閲覧。 7) “長崎県知事臨時記者会見「諫早湾干拓事業の福岡高裁判決に対する国の上告見送りについて」” (プレスリリース), 長崎県, (2010年12月15日) 2012年11月4日閲覧。 8) “諫干開門差し止め求め国提訴 県公社など長崎地裁に”. 2011年4月20日閲覧。 9) “諫早干拓、来年12月開門で調整 農相、スケジュール提示へ”. 西日本新聞. (2012年11月3日) 2012年11月4日閲覧。 10) “諫早、海水淡水化に349億円 開門へ農水省が5水源案”. くまにちコム. (2012年11月4日) 2012年11月4日閲覧。 出典:Wikipedia やはり農水省は開門調査確定後、もたもたしているうち、というか故意に不作為を決め込んでいるうちに、今回の開門差止仮処分が訴訟が2011年4月19日に提起された。 2012年11月2日、農水省は、この事業で閉門中の水門の開門調査を2013年12月から実施する方向などと宣言したものの、その実、敢えて開門調査を先延ばしし、仮処分の様子を見ているうちに、昨年末、自民党政権となった。 そして自民党政権下で今回の仮処分の判決を待っていたとしか言いようがない。明らかに農水省の不作為であろう。 農水省の対応のひどさはどうしようもない! いずれにせよ、何ともいやな感じがする経過である。 <参考> ◆環境総合研究所による諫早湾干拓事業関連自主調査研究(概要) |