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諫早湾開門差止仮処分判決の

背後には農水省の不作為!?

青山貞一

東京都市大学名誉教授(公共政策論)

掲載月日:2013年11月12日
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁


 2013年11月12日、長崎地裁で以下のような諫早湾開門差し止め仮処分を認める判決が出た。

 非常にわかりにくい判決である。すでに開門調査は、別の裁判により国(農水省)がすることを決めていたにもかかわらず、農水省が3年近くもたもたしているうちに、今回の真逆の判決がでたのである。

◆諫早干拓、開門差し止め 長崎地裁が決定
2013/11/12 13:23 日本経済新聞

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、干拓地の営農者など約460の個人・法人が国を相手取って、潮受け堤防排水門の開門調査の差し止めを求めた仮処分申請で、長崎地裁(井田宏裁判長)は12日、開門の差し止めを命じる決定をした。国は仮処分の判断にかかわらず開門する方針で、異議を申し立てるとみられる。

 同事業では、12月20日までの開門を命じた福岡高裁判決が確定。開門時の農業被害などを防ぐ国の事前対策工事は、反対する住民らの抗議で着工できない状態が続いている。差し止めの仮処分決定を受け住民らの抗議が一層強まるとみられ、混迷に拍車がかかりそうだ。

 開門は有明海の不漁と干拓事業の因果関係を調べるのが目的。5月まで約1年半続いた仮処分の審尋で、営農者や周辺住民は「開門すれば甚大な被害が出る」と主張。淡水の調整池に海水が流れこんだ場合、農作物に塩害や潮風害が生じるほか、大雨時に湾近くの住宅地に浸水被害が起こる、などと訴えた。

 一方、国は「対策工事を行えば開門しても被害は発生しない。万が一、被害が出れば補償する」と説明。営農者らは「対策は不十分。被害は補償で回復できない」と反論した。

 審尋では、開門調査の公共性も争点になった。国は「確定判決に従い、干拓事業と漁場環境の変化の関連性を開門して調査する公益上の必要性は極めて高い」と主張。営農者らは「公共性は低い」と訴えていた。

<長崎新聞号外2013年11月12日>

http://www.nagasaki-np.co.jp/press/gougai/date/20131112.pdf


閉鎖後の長崎県諫早湾  出典:グーグルマップ

 以下にこの問題の経過を示した。経緯にあるように、諫早湾干拓事業について福岡高裁で開門調査裁判が確定したのは2010年12月6日、その直後に菅総理(元)が上告を断念し、開門調査は確定している。

 それから今日まで、約3年間、農水省はのらりくらり、開門調査を先延ばしにしてきた。あたかも、民主党政権から自民党政権に変わり、今回の判決を待っていたかのようにである。

2010年12月6日、福岡高等裁判所は佐賀地裁の一審判決を支持し、「5年間の潮受け堤防排水門開放」を国側に命じる判決を下した[5]。判決は潮受堤防の閉め切りと漁業被害との間に因果関係を認め、沿岸の防災上やむをえない場合を除き、水門は常時開放されるべきとした。

2010年12月15日、菅直人内閣総理大臣は、福岡高等裁判所の判決について上告を断念すると表明した[6]。これに対して長崎県は、事前の連絡などが一切なかったとして不快感を示している[7]。

2011年4月19日、長崎県諫早市側の干拓地の入植者や後背地の住民、長崎県農業
振興公社ら352の個人と団体が、国を相手に開門の差し止めを求める訴訟を長崎地方裁判所に提訴した[8]。

2012年11月2日、農水省は、この事業で閉門中の水門の開門調査を2013年12月から実施する方向で長崎県側と最終調整する方針である事を発表した。これは前述の福岡高裁の判決が2013年12月までに開門調査を始めるようにと命じたものであることによる措置[9]であり、それまでに開門による影響を最小限に食い止める対策として1日計約40,000tの淡水を供給できる海水淡水化施設を諫早、雲仙両市に6カ所設置し[10]、また、それぞれ貯水用のため池も併設することを検討しているとも発表している[9]。尚、一部報道では、漁民側の働きかけによって、2013年12月の開門予定が早まる可能性もあると指摘されている[10]。

(註)
6) “菅首相、諫早湾干拓訴訟の上告断念を表明”. 日テレNEWS24 (日本テレビ). (2010年12月15日) 2012年11月4日閲覧。
7) “長崎県知事臨時記者会見「諫早湾干拓事業の福岡高裁判決に対する国の上告見送りについて」” (プレスリリース), 長崎県, (2010年12月15日) 2012年11月4日閲覧。
8) “諫干開門差し止め求め国提訴 県公社など長崎地裁に”. 2011年4月20日閲覧。
9) “諫早干拓、来年12月開門で調整 農相、スケジュール提示へ”. 西日本新聞. (2012年11月3日) 2012年11月4日閲覧。
10) “諫早、海水淡水化に349億円 開門へ農水省が5水源案”. くまにちコム. (2012年11月4日) 2012年11月4日閲覧。

出典:Wikipedia

 やはり農水省は開門調査確定後、もたもたしているうち、というか故意に不作為を決め込んでいるうちに、今回の開門差止仮処分が訴訟が2011年4月19日に提起された。

 2012年11月2日、農水省は、この事業で閉門中の水門の開門調査を2013年12月から実施する方向などと宣言したものの、その実、敢えて開門調査を先延ばしし、仮処分の様子を見ているうちに、昨年末、自民党政権となった。

 そして自民党政権下で今回の仮処分の判決を待っていたとしか言いようがない。明らかに農水省の不作為であろう。 農水省の対応のひどさはどうしようもない!

 いずれにせよ、何ともいやな感じがする経過である。

<参考>
◆環境総合研究所による諫早湾干拓事業関連自主調査研究(概要)