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31人が心肺停止、

御嶽山噴火と気象庁の

対応について


青山貞一 Teiichi Aoyama

September 28 ,2014
Alternative Media E-wave Tokyo
無断転載禁

 ここでは、2014年9月27日午前、噴火した長野県と岐阜県にまたがる通称、御嶽山の概要と気象庁による警報情報のあり方についての私見を述べるものとする。

 9月28日午後4時現在における最新情報として、「長野県警は28日、木曽郡王滝村と岐阜県境にあり、27日に噴火した御岳山(3067メートル)の山頂付近や登山道で心肺停止状態の31人を発見したと発表した。県災害対策本部によると、このうち4人を山麓に搬送中という。自衛隊、県警、消防などが28日早朝から、山中に取り残された登山者の救助を再開。県災害対策本部は午後2時時点で、骨折などの重傷者を含め計30人のけが人を確認したとしている。」(信濃毎日新聞)となっている。


出典:日刊スポーツ

 気象庁は、実際に噴火が起きるまで一切の入山規制についての情報を出していない。また今回の噴火は小規模であるとし、事前に警報を出すことは無理であると、他方、「想定外」に類することを報道関係者に述べている。

 だが、後述するように御嶽山は、1979年以降は断続的(1991年、2007年)に小規模な噴気活動が続いており、御嶽山には、気象庁により「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」に指定されていて、山頂周辺には火山活動の観測のための地震計、空振計、傾斜計、火山ガス検知器、GPS観測装置、監視カメラなどの観測機器が設置されている」という。いったいどうなっているのだろうか?

 9月27日の午前11時頃、長野県側そして岐阜県側から御嶽山に入山そして頂上をめざしていたひとびとが300人程度とすれば、その1割が9月28日夕方時点で心肺停止状態にあるのは、事前の入山規制などの警報がなければ、気象庁がいくら「今回の噴火は小規模である」と言明しようと、
多くの人命に関わる大事故となることを示すものである。

 以下は御嶽山噴火に関連した待避、避難小屋、走破ルートなどの情報である。


出典:長野県王滝村

 また以下は、9月27日当日の噴火による影響、被害に関する写真、動画情報である。


噴火後、下山途中で登山者が撮影した動画の一部を切り出した画像
下山する人たちの後ろに噴火による噴煙が迫っていることが分かる。


山小屋が噴火による灰により一面灰色となっている様が分かる
出典:朝日新聞


 なお、以下は、主にWikipdeiaによる御嶽山についての基礎的情報である。

◆御嶽山(おんたけさん)の概要

 御嶽山は、長野県木曽郡木曽町・王滝村と岐阜県下呂市・高山市にまたがり、東日本火山帯の西端に位置する標高3,067 mの複合成層火山である。大きな裾野を広げる独立峰である。

 日本では富士山に次いで2番目に標高が高い火山である。剣ヶ峰を主峰にして、摩利支天山(2,959.2 m) 、継子岳(2,858.9 m) 、継母岳(2,867 m) などの外輪山があり、南北約3.5 kmの山頂部による台形の山容である。


木曽町上空から望む御嶽山   出典:Wikipedia


信州松本野麦峠スキー場 から望む雲海に浮かぶ山頂部が広い御嶽山、
右端が「日和田富士」と呼ばれる継子岳       出典:Wikipedia


御嶽山の継子岳と三ノ池(火口湖)    出典:Wikipedia

 北端の継子岳は比較的新しい山体の成層火山で、北側山麓から見ると、他の峰が隠れて見えないためきれいな円錐形をしており、郷土富士として「日和田富士」とも呼ばれている。

 なお、長野県側に寄生火山として三笠山(2,256 m)、小三笠山(2,029 m)がある。

 最高点の剣ヶ峰は長野県に位置し、王滝口登山道の外輪山との合流部が「王滝頂上」(標高点2,936 m)、小坂口との合流部が「飛騨頂上」(標高2,811 m)である。

 火山灰の堆積した裾野は広く、長野県側の麓の傾斜地では濃い色の火山灰が耕地を覆っていて、高地の開田高原は蕎麦の産地として知られている。

 岐阜県側の地形は長野県側と比較して複雑で、平坦地が少なく、尾根筋が屈曲している。2007年(平成19年)5月10日に、日本の地質百選選定委員会により「日本の地質百選」の第1期選定(全国83箇所)のひとつに選定されている。


出典:Google Earth 及びWikipediaより青山貞一作成

◆御嶽山の火山活動

 御嶽山は東日本火山帯の西端(旧区分による乗鞍火山帯の最南部)に位置し、古生層と中生代の濃飛流紋岩類を基盤(基底部は17 km四方の広さ)とし、基盤からの高さが1,400-1,900 mのカンラン石、複輝石、安山岩などで構成される成層火山である。

 各方向に溶岩流を流れ出しているが、西に流れた摩利支天山第6溶岩流は、最も延長が長く約17kmに及ぶ。末端には安山岩の大岩壁巌立がある。一ノ池を中心として、摩利支天山、継母岳、王滝頂上を結ぶ外輪山の内側がカルデラであると推測され、カルデラ形成前の姿は、富士山に匹敵する高さの成層火山であったと推測される。

 大爆発によって崩壊した土砂は土石流となって川を流れ下った岐阜県各務原市付近の各務原台地には御嶽山の土砂が堆積しており、水流によってできた火山灰堆積物が地層となっている。この大爆発によって剣ヶ峰、摩利支天山、継母岳の峰々が形成された複成火山であり、その山容はアフリカのキリマンジャロ山に似ている。

 従来、最後のマグマ噴火は約2万年前で以降は水蒸気爆発と考えられていたが、2006年(平成18年)に行われた岐阜県の調査および2008年(平成20年)に行われた国土交通省多治見砂防国道事務所や産業技術総合研究所の調査によれば、約5200年前の火砕流を伴う噴火を含め、2万年間に4回(約1万年前以降、約1万年前、約9000年前、約5200年前、約5000年前)のマグマ噴火を起こしている。

 信濃毎日新聞の2007年(平成19年)4月30日の紙面に掲載された記事によると、岐阜県の調査によって、剣が峰北西6キロの下呂市小坂町内において、約5200 - 6000年前の火砕流が堆積してできた地層が発見され、五ノ池火口からの噴出物と考えられる火砕流の痕跡が確認された。最近の2万年以降の活動は水蒸気爆発と限定していた岐阜県・長野県それぞれにおいて、火砕流も想定しての、ハザードマップなど防災に関する見直しが行われる可能性が指摘されている。

 1979年以降は断続的(1991年、2007年)に小規模な噴気活動が続いている。

 気象庁により「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」に指定されていて、山頂周辺には火山活動の観測のための地震計、空振計、傾斜計、火山ガス検知器、GPS観測装置、監視カメラなどの観測機器が設置されている


 2001年から名古屋大学大学院環境学研究科が、「岐阜・長野両県における火山噴火警戒避難対策事業」として噴火の前兆現象を観測する地震計による御岳火山災害観測を行っている。

 1979年の水蒸気爆発の6ヶ月前に三ノ池が白濁し池の中から泡が噴き出す音が発生した現象と6時間前の火口直下での地震は、その前兆現象であったとみられている。2011年(平成23年)7月27日に「御嶽山火山噴火緊急減災対策砂防計画検討会」が開催され、御嶽山火山噴火緊急減災対策砂防計画が策定された。王滝頂上直下西面(八丁ダルミ付近)と地獄谷の噴気孔から硫化水素などの火山ガスを噴出し続けていて、噴気孔から発生する火山ガスの轟音が聴こえることがあるということだ。


◆浅間山登山の経験について

 私達は別荘が群馬県の浅間高原にあることもあり、浅間山の外輪山、たとえば黒斑山などに登山している。いわずと知れた浅間山は日本の火山を代表する大火山であり、江戸の天明3年には巨大な大噴火を起こし甚大な人的、物的被害を起こしている。

※ 青山貞一・池田こみち・鷹取敦:浅間山の外輪山、黒斑山に登る! 1〜3


出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦:浅間山の外輪山、黒斑山に登る!

 その経験からすると、浅間山の場合、かなりきめの細かな予報警報を関連県、市町村がWeb上で出すとともに、入山規制については現地でもその旨の情報を出していると感じているが、もちろん、常時、予報警報と実際に起きていることを監視しているわけではない。

 以下は長野県軽井沢町による噴火警報周知である。


出典:軽井沢町

◆保身に走る気象庁、火山予知関係者

 今回の御嶽山噴火では、9月27日はレベル1(平常)情報であり、待避、避難が遅れ多くの人的、物的影響、被害がでている。

 28日午前中の報道番組の中で、ある学者が「自然現象には予知できないこともあるので、市民の方も自分で事前に登る山について調べて・・・・」などと言っているのを聞いたが、事前に調べても気象庁や自治体が警戒レベル1とか出していたらそれ以上何をどうやって丸腰の住民が調べろ言うのであろうか。湯水のように税金を使っていながら「想定外」などを繰り返す気象庁や行政をそのままに、国民を馬鹿にするのもいい加減にしてほしいと感じた。ここでも3.11の原発事故同様、完全に学者、学界などは保身に走っているようだ。

 となれば、浅間山はじめ他の火山においても、気象庁やそれを受けての自治体の情報を鵜呑みにすること無く対応しなければならない。
 
 しかし、果たして上に示した軽井沢町の噴火警戒レベルで1(平常)となっているときに、一般市民、登山者がそれ以上の情報をどうやって得ることができるのか、非常に心許ないものがあるといえる。

 ましてや、今回の御嶽山噴火に関連し、登山者は自己責任でなどと言っている評論家がいるが、上述のようにこれはとんでもないことだと思う。

 もとより、気象庁により「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」に指定されていて、山頂周辺には火山活動の観測のための地震計、空振計、傾斜計、火山ガス検知器、GPS観測装置、監視カメラなどの観測機器が設置されている、など巨額の税金を投入し設置している機器や調査研究を活用し、行政組織が従前にも増して努力し、間違いなく警報を的確に出す以外に方法は無いと思う。

 知人等の中には、広島市安佐区八木地区などの大降雨後の巨大土石流被害に際し、気象庁だけにこの種の危機管理を任せていてはいつになっても、この種の被害がなくならないという者もいるが、さりとてこれ以上、行政組織を肥大化させても、組織相互の疎通が悪ければ、さらに状況が悪化するかも知れないだろう。

 一方、大災害が起きるたびに、行政や調査研究機関、大学などは調査費、研究費、対策費などで焼け太りとなる。これについても、いつまでもこんなことを繰り返していて良いのだろうかと思う毎日である。

 未確認情報だが、50年以上御嶽山に登っているひとが、噴火前に「くま」などが下ってきたという談話があった。 例年になく人里に多く降りてきていることも火山の爆発と関係があるのではないか、と話していた。

◆「想定外」ではすまされないのでは!?

 気象庁や予知関係者等は、水蒸気系火山噴火であり規模が小さすぎて「想定外」であったと、絶えず保身的対応に終始している。しかし、30人以上の登山者等が亡くなったとしたら、果たしてそれで済まされるのか?

 刑事事件としての追及は困難でも、気象庁や予知関連の関係者への追求がないとは言えないだろう。国家賠償訴訟はハードルが高いが、この際、永年、税金を使い調査研究を行い、高度なセンサーや監視モニタリングネットワークを構築している地震や噴火の関係機関を対象に、今回の一件は、半ば人災ではないかとして、本格的な国家賠償訴訟を仕掛けるべきかも知れない。

 はじめから、火山系山脈への登山は、何があっても登山者の自己責任とされているならまだしも、<噴火警戒レベル1>を信じ登山したひとたちにとっては、あまりにも気の毒である。大噴火が起きてから入山規制の<噴火警戒レベル3>に引き上げるだけなら、予知連絡会や気象庁は不要であろう。

 この種の巨大人身事故が起きると、たえず行政や事業者は言い訳と保身で逃げる。また行政が設置した連絡会や委員会の学者らを放置していていいものか、この際、徹底的にメスを入れるべきと思うのは、私だけではないと思う。

 これは今日本中で課題となっている原子力防災にもかかわる重大な問題であると思える。