広島市安佐南区 「山津波」の悲劇に想う 青山貞一 Teiichi Aoyama 東京都市大学名誉教授 株式会社 環境総合研究所顧問(東京都目黒区) August 24, 2014 Alternative Media E-wave Tokyo 無断転載禁 |
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日本海に延びた前線の影響で2014年8月22日、西日本を中心に各地で大雨となりました。気象庁のレーダー解析では、22日午前4時半までに広島県広島市、福岡県筑紫野市、同太宰府市などで1時間に約110ミリの大雨が降ったと見られると言っています。 昨今の日本では気候変動のせいか、台風のときはもちろん、台風を伴わない前線の位置や気圧配置によっても、局地的に大雨が降ることが多くなっています。 広島市でおきた大規模な土砂災害で、21日夜から22日朝にかけ、新たに安佐南区(あさみなみく)と安佐北区の一部に避難指示を出しましたが、広島県警によれば8月22日午前までに、安否が確認できない行方不明者は52人になったと明らかにしています。 広島市ではこの間、大雨が断続的に降り、広島地方気象台は8月22日午前5時ごろ、同市内に大雨警報を出し、土砂災害への警戒を呼び掛けました。 しかし、気象台が土砂災害への警戒を出す前、現地では「山津波」とも言える巨大な土砂崩れ、「土石流」が随所に起き、多くの死者、行方不明者を含め甚大は被害をもたらすことになったのです。 広島市安佐南区の位置 出典:広島市役所 広島市(政令指定都市)の概要
広島市災害対策本部によると、市内で少なくとも約170カ所で崖崩れが発生。道路や橋も290カ所で被害が確認されたとしており、気象台の大雨警報より前から、広島市は前日からの行方不明者の捜索・救助活動をしていたものの、21日夜の大雨を警戒して中断、22日午前に再開しました。 当初、広島県警は21日午後の時点で行方不明者は7人としていましたが、消防などが現地調査の結果を精査したところ、行方不明者は45人に増えました。また死亡者50人のうち、31人の身元が判明していますが、今後死者・不明者はさらに増える恐れもあります。 さらに被害が大きかったのは土石流、「山津波」が深夜に起きたためでしょう。一方、地域には幼稚園もあります。もし、日中だと幼稚園児が多数犠牲となった可能性もあります。 ところで1時間の降雨量が100mmを超す日が続くと、地盤の土が緩くなり、斜面崩壊や土砂崩れ、さらには土石流、「山津波」が起きます。 8 月19 日18 時から20 日6 時まで、「しずく(GCOM-W)」などで捉えた、 西日本の積算降水量 出典:JAXA なお、下の写真は、FNNのインタビューに答える広島市消防局の危機管理部長です。日時は2014年8月20日です。 出典:2014年8月20日 FNN報道動画より 現地取材キャスター 安藤優子氏 以下の画面から分かるように、広島市消防局の危機管理部長は「分析を謝った部分があるのは間違いない」と言明しています。これも日時は2014年8月20日です。 出典:2014年8月20日 FNN報道動画より 現地取材キャスター 安藤優子氏 下の衛星写真は、グーグル・ストリートビューからの撮影した写真ですが、大規模な土砂災害によりすでに80名以上の死者と行方不明者を出している広島市安佐南区の災害前のです。 出典:グーグルマップ (災害前の撮影) 以下はJAXAのレーダーによる広島県広島市の最も激しい土石流、「山津波」が起きた画像解析画面(3次元立体地形図)です。赤い○の部分が安佐南区八木三丁目に相当するはずです。上の平面図では分かりませんが、こうして3次元立体図とすることで、当該地域の地形が手に取るように分かります。 8月22日13時頃に「だいち2号」が観測した画像に、「だいち」が観測した 三次元地形情報を重ねあわせて作成した鳥瞰図 (※赤枠は発表画像に合わせて追加) 出典:JAXA 下の衛星写真は被害が最も多い広島市安佐南区八木三丁目のものです。衛星写真のちょうど真ん中より少し下に橙色の屋根の住宅が連棟している広島県営住宅があります。住宅から数10mのところに、斜面崩壊を起こした山林の最前線があります。 出典:グーグルマップ (災害前の撮影) 下の航空写真は、巨大な土砂災害後の広島県営住宅近くのものです。上の衛星写真の橙色の屋根の住宅団地のちょうど真ん中に土石流、「山津波」が流れ込んでいることがよく分かります。地番は上述のように広島市安佐南区八木三丁目となります。 出典:FNN報道動画より 下は上の写真で山側(北側、上側)から県営住宅を見たところのものです。 出典:FNN報道動画より 下はグーグルマップのストリートビューで見た、在りし日の広島県営住宅です。戸建ての連棟の前に駐車場があることがわかります。 出典:グーグルマップ・ストリートビュー(災害前の撮影) 上記の事実から、大降雨があったとはいえ、巨大土砂災害の最前線に県営住宅があったことから、広島県や広島市などの行政組織は、本来、住宅建設に対して立地規制すべき場所に率先して大規模住宅を開発していたことが分かります。 おそらく行政側にまったく危機意識がないからこそ、このような場所に県営住宅を開発したのです。さらに言えば、行政自らが県営住宅を開発しているくらいなので、もともと市街地調整区域であったはずの同地域において民間の不動産会社から「開発許可」の申請があれば、比較的簡単に許可を出したものと推察できます。 地形、傾斜度、地質、土質、植生、水象などから明らかに今回のような「山津波」が起こりやすい地域は分かっているはずなのに、そこに開発許可を出し、建築確認を出しているのは、いうまでもなく行政(市区町村、都道府県、国)です。 何のための「開発許可」制度なのか、ここで全国各地においてチェックする必要があります。 大事故後、専門家が当該地域一帯は火山岩の花崗岩とそれが風化した「まさど」が多いので、大降雨に弱いということを指摘していましたが、そうであるならなおさら、なぜ急峻な里山の麓まで開発許可(and/or)、建築確認を出したのかが問われます。 地形、傾斜度、地質、土質、植生、水象などのデジタルデータをGIS上でオーバーレイ(重ね合わす)ことにより、傾斜地崩壊だけでなく土石流、「山津波」の起こり易さが客観的に分かるはずです。 日本各地に似たような地形の都市が沢山あります。 たとえば横浜市、神戸市など政令指定都市にもあります。それら政令指定都市は、過去、人口の数を競ってきたところがあり、安易に市街化調整区域を開発許可により巨大住宅地としてきたことも、今回の悲劇の背景にあるのではないかと思えてなりません。 私見では、開発許可制度は、本来開発してはいけない地域を例外的に開発行為を許可するものですが、それがさまざまな理由でゆがめられ、本来開発してはいけない地域で開発を許可していることに問題の本質があると思います。
さらに、今回のうな場所は、どうみても本来、市街化調整区域であり、あのような大規模な住宅開発をしてはいけない地域であるはずです。 たとえば、都市開発業者や不動産業者が政治家に泣きつき、政治家が行政に「開発許可」を促し、住宅地として開発させている可能性も否定できません。このような開発許可により、いわば二束三文の土地が一気に坪数10万円の土地に変わり、不動産業者はウハウハ。当然、政治家に表裏で献金する。そういう構図が見えてくるのです。 以下は、3.11後、宮城、岩手そして福島を3往復現地視察し制作した動画です。この動画は海の津波についてのものですが、これは何も海の「津波」だけでなく、広島など一連の「山津波」にも妥当すると思います。 ◆青山貞一:繰り返される津波被害の半分は人災? E-wave Tokyo https://www.youtube.com/watch?v=ZeVrP2YTxAs 今後ますます、異常気象が頻発し,大降雨が全国各地で頻発し猛威を振るうことが十分予想されます。 3.11のとき国や東電が最初に何を言ったかと言えば、「想定外」の地震、津波と言いました。今回も広島県や広島市は、想定外と言うんでしょうか? 私見では、広島市の件は、半分以上が人災であると思います! 亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。 |