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STAP細胞

刺激惹起性多能性獲得細胞とは

April 19 ,2014
Alternative Media E-wave Tokyo
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 以下は、STAP細胞及びNature誌問題について理解する上での基礎知識をまとめたものです。出典は、主に日本語のWikipeiaです。

STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞の概要   出典:Wikipeia
 (
Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells)

 STAP細胞は動物の体細胞に外的刺激(ストレス)を与えて分化多能性を獲得させた細胞である。

 小保方晴子(理化学研究所)らが、チャールズ・バカンティ(ハーバード大学)や若山照彦(山梨大学)と共同で発見したとして、現象を刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-triggered acquisition ofpluripotency cellから STAP)、得られた細胞をSTAP細胞と名付けた。

 STAP細胞に増殖能を持たせたものをSTAP幹細胞と呼び、医療への応用が期待されるのは、このSTAP幹細胞である。従来、動物の体細胞が外的刺激で万能細胞になることはありえないとされており、生命科学の常識を覆す発見とされたが、複数の疑義や問題点が指摘され、その事実が疑われている。



<性質>
 STAP細胞は胎盤を含むすべての細胞に分化できる。また、STAP細胞を胚盤胞に移植すると、キメラ個体を形成する。胎盤の形成は可能であるが胎仔を形成できない宿主の胚盤胞を用いた場合、注入されたSTAP細胞のみから胎仔全体が形成される。

<iPS細胞との比較>
 小保方らによる論文の発表直後から、マスメディアがiPS細胞と比較してSTAP細胞の性質について論じたものの、その報道の多くが、iPS細胞の発見者である山中伸弥により誤りだとされている。

 まず、生後1週のマウス脾臓のリンパ球を使用した場合のSTAP細胞となる確率は7-9%(2014年、論文発表当初)であり、これはiPS細胞の作製効率の1%未満(2006年、論文発表当初)よりも高い、と報道されていた。しかし、iPS細胞の作成効率は2006年の論文発表時から大幅に上昇しているとの声明がiPS細胞を開発した山中により発表された。

 また、STAP細胞の作製に要する期間は2-7日(2014年、論文発表当初)で、iPS細胞の2-3週間(2006年、論文発表当初)よりも大幅に短縮されたことから、iPS細胞よりも短期で作成できると報じられたが、山中の指摘によれば、イスラエルのグループによるiPS細胞の作製期間として7日が記録されており、最新の研究同士を比べると大差はない。

 遺伝子の導入に伴うがん化のリスクがないため、STAP細胞はiPS細胞に比べてがん化のリスクが低いとする報道もあった。しかし、論文発表当初の2006年にiPS細胞の作成に使われていた発癌に関連する遺伝子であるc-Mycを発癌性のない因子に置き換えることにより、iPS細胞の発癌性は大幅に減少している。山中は、半数以上の細胞が死滅するようなストレスが細胞にかかることから、STAP細胞の安全性について検証が必要だとしている。

マウスSTAP細胞の樹立
 研究の発端は「植物のほか、動物の中でもイモリは傷つけるなど外からの刺激を与えれば、万能細胞化して再生する。ヒトを含めた哺乳類でも同様のことが考えられないか」という素朴な疑問にある。

<仮説>
 小保方が大学院時代に留学したハーバード大学教授のチャールズ・バカンティらは、分化した組織内に小型の細胞が極少数存在し、これが休眠状態の多機能細胞ではないかとの仮説を唱えていた。小保方はこの研究室で組織細胞をガラスの細管に通すことで小型細胞を選別する実験を行った。

 この実験で小型の幹細胞は取り出せるが、元の組織に幹細胞が観察されないこと、繰り返し細管に通すと少しずつ小型の幹細胞が出現することなどを知った。小保方は「小さい細胞を取り出す操作をすると幹細胞が現れるのに、操作しないと見られない。幹細胞を『取り出している』のではなく、操作によって、『できている』という考えに至った」と話している

<立証>
 小保方らは、まず未分化細胞で特異的に発現するOct4遺伝子の挙動を観察した。Oct4プロモーターの下流にGFP遺伝子配列を繋いだコンストラクトをマウスに導入し、Oct4の挙動を可視化した。このOct4::GFPマウスのリンパ球を使用し、細胞外環境を変えることによる細胞の初期化の状況を解析した。

 細いガラス管に通すという物理刺激を与えたり、毒素(細胞毒素ストレプトリジンO)で細胞膜に穴をあけたり、飢餓状態にしたり、熱刺激を与えたりなどさまざまな方法を試した結果、小保方らは、酸性溶液による細胞刺激が最も有効であることを発見した。小保方らの試行では、生後1週のマウス脾臓のリンパ球をpH 5.7、37℃の酸性溶液に25分浸して刺激を与え、B27と多能性細胞の維持・増殖に必要な増殖因子である白血病阻止因子(LIF)を含むDMEM/F12培地に移して培養する方法が、最も効率的にSTAP細胞を作製できた。

 次に、小保方らは、生きた細胞を長時間培養しながら顕微鏡で観察するライブイメージング法(英語版)で7日間にわたって解析を行った。その結果、未分化の細胞は分化したリンパ球が初期化されたことによって生じたものであり、試料に含まれていた未分化の細胞が酸処理の影響で選択されたものではないことが示唆された。

 遺伝子解析(英語版)を実施してOct4陽性細胞を検証した結果、Oct4陽性細胞のT細胞受容体遺伝子に、リンパ球T細胞が分化した時に生じる特徴的な遺伝子再構成であるTCR再構成が検出された。

 このことから、Oct4陽性細胞は、T細胞に一度分化したリンパ球由来の細胞が酸性溶液処理により初期化されて生じたものであり、Muse細胞のような既存の多能性幹細胞が酸性溶液処理の影響で選択されたものではないことが検証された。また、このOct4陽性細胞は、Oct4以外にも多能性細胞に特有のSox2、 SSEA1、Nanogといった遺伝子マーカーを発現していた。

 さらにOct4陽性細胞は3胚葉組織への分化能を持っていた。その後、小保方らは、脳・皮膚・骨格筋・脂肪組織・骨髄・肺・肝臓・心筋などの組織の細胞についても同様に処理し、いずれの組織の細胞からもSTAP細胞が産生されることを確認した。

 また、LIFと副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を含む培地を用いることにより、多能性と自己複製能を併せ持つ細胞株を得る方法が確立された。これがSTAP幹細胞と呼ばれるものである。STAP幹細胞は胎盤組織への分化能を失っていたが、STAP細胞の培養条件を変え、栄養膜幹細胞の作製法と同様にFgf4を含む培地で長期間の接着培養することにより得られた幹細胞からは胎盤を誘導することができた。

<実験手技解説>
 ネイチャー掲載論文の実験手法要旨[15]に加え、2014年3月5日、実験手技解説が公開された。3月20日、チャールズ・バカンティが改善版実験手技を公表した。これに対し、カリフォルニア大学デービス校准教授のポール・ノフラーは「作製効率や検証方法が書かれておらず、筆者が誰かの明示がない。実際に作製できるかは疑問」と指摘した。

<追試>
 「理化学研究所によるSTAP現象の検証」も参照

<論文共著者>
 2014年3月5日、理化学研究所は、小保方が論文発表後、初めてSTAP細胞の再現実験に成功したことを明らかにした。ただし、3月14日の調査中間報告の記者会見の質疑応答では、竹市雅俊が「光り出すというところまでということで、全体的には再現できていない」と答えた。また、丹羽仁史が追試を行うことと、非公式に第三者に追試を依頼していることが述べられた。

<応用研究と課題>
 STAP細胞の開発で理化学研究所と協力したハーバード大学の研究チームによってサルの治療実験が行われ、脊髄損傷で下半身が不自由となったサルが足や尾を動かせるようになるなど一定の成果が出たため、近いうちに学術論文を発表する予定であるという。

 また、ハーバード大学の研究チームでは、人工的に気道の一部を損傷させたヒツジの気道の再生実験を始めている。論文発表当初にはまだヒトの細胞で作成可能かどうかは実証されていなかったが、2014年2月5日、バカンティ教授のチームがヒトとして初めてのSTAP細胞であるとみられる細胞の写真を公表した。

 ハーバード大学では、アメリカ国内で、ヒトへの臨床試験の申請に向けた準備を進めることにしている。今後の課題としては、細胞株の安定性や遺伝情報の維持に関して問題がないかどうか検証することが必要である。また、実験に生後1週のマウスを使用しているが、成長したマウスでは、STAP細胞のできる確率が下がってくるためだという。

<その他の会見要旨>
・理事長野依良治は、小保方について「1人の未熟な研究者が膨大なデータを集積し、極めてずさんな取り扱いをして、責任感に乏しかった」と指摘。
・小保方は、論文の見栄えを良くするため画像を加工したことを認め「やってはいけないという認識がなかった」と主張。
・調査委員長石井俊輔は、「研究倫理を学ぶ機会がなかったのか」と小保方の姿勢を疑問視。
・センター長竹市雅俊は、STAP細胞の万能性を示す画像が小保方の博士論文の画像と同一だった点について「論文の体をなしていない」と評価し、小保方を採用したことに関して「過去の(研究ぶりの)調査が不十分だったと深く反省している」と陳謝。
・論文を指導した笹井芳樹は、小保方と共同での論文作成に大きな役割を果たしており、これについて野依理事長は「責任は非常に重い」と批判。
・小保方は「(記者会見の場で)自分の気持ちを申し上げたい」と述べているが、心身の状態はよくない。
・小保方の研究チームは、現在もSTAP細胞を作成できたと判断している。

<経過と動向>
2014年
2月上旬-ネット上で疑惑が浮上
2月17日 - 理化学研究所、STAP細胞の疑義に関する調査を開始
3月10日 - 若山、「私はSTAP細胞について科学的真実を知りたい」とコメント
3月14日 - 理化学研究所、STAP細胞の疑義に関する調査の中間報告
3月17日 - 理学 発生・再生科学総合研究センター、STAP細胞の論文に
       関する記事を同センターのウェブサイトから削除
3月20日 - 下村文科相は理研に対し遅くとも4月中旬ごろまでに
       最終報告書をまとめるよう求める方針を明らかにした
3月25日 - 理研、「小保方がマウスから作製したとしていた”STAP細胞”のうち、
       2株の遺伝子を共同研究者が調べたところ、実験に使用しなかった
       はずの別の種類のマウス(B6系統、129系統とB6系統のF1=
       交配第1世代)の細胞だったことが分かった」と発表
3月26日 - 早大は博士論文の不正の有無に関し、外部の有識者を交え
       詳しい調査を開始
4月1日 - 理研、STAP細胞の疑義に関する調査の最終報告
4月7日 - 理研が検証計画を公表。丹羽は「一つの仮説として予断のない
       状況から」検証すると述べた
4月8日 - 小保方、STAP細胞の論文について研究不正があったと認定した
       理研の調査結果に対し、不服を申し立て
4月9日 - 小保方、STAP細胞の論文をめぐる問題について、大阪市内
      ホテルで記者会見
4月12日 - 理研、再調査するかどうかの判断材料として小保方に追加資料要請
4月14日 - 小保方と弁護団、「4月9日の記者会見に関する補充説明」文書を
       報道陣に配布
4月14日 - 理研、STAP細胞の論文共著者以外にも、部分的に再現した
       研究者がいることを明らかにした。一方で、「細胞の完全な作製
       に成功したとは言えない。その意味での第三者の成功は把握
       していない」との見解も公表。
4月16日 - 笹井、記者会見

出典:Wikipeia