高速電力線搬送通信(高速PLC)
高速電力線搬送通信(高速PLC)は、利用周波数帯を2MHz〜30MHzに広げて理論最大値が数十Mbps〜200Mbpsのデータ通信を可能にすることを目指して技術開発が行われている電力線搬送通信の新しい技術であり、既存の配線を利用することを生かした配線工事不要のブロードバンドインターネット接続のラストワンマイル(=ファーストワンマイル)として、また全ての電気製品がコンセントにつながっていることを利用したブロードバンド家電のインターネット接続回線として実用化が期待されていた。
一方で、電灯線は高周波を重畳することを想定した設計になっていないため漏洩電磁波が多く、またその利用周波数が短波帯の電波と重なるため、現在の技術水準では短波ラジオ、アマチュア無線、洋上管制に短波を用いる航空無線、防衛用無線などの無線通信、天文観測などへ重大な障害を引き起こしかねない(米国アマチュア無線連盟による警告ビデオ (18.2MiB MPEG-1 英語)、「PLCについて」(日本アマチュア無線連盟))など、解決すべき技術的なハードルも高い。
このような現状を打破するため、日本国内では2004年1月から高速電力線搬送通信設備に関する実験制度が導入され、電灯線からの漏洩電界低減技術確認のための実証実験が主に電力会社等を中心に行われている。
漏洩電界を低減するためモデムの改良や通信方式の工夫などの方法が使用され、以前に較べると漏洩電界の測定値は減少しているが、漏洩が起きる電力線をシールドする等の改良は行われていない。
一方、漏洩は電力線を含む水平面より上方に大きく生じるにも関わらず、漏洩電界低減技術実証実験における測定は主として水平面方向で行っている。このため測定値そのものに対する信頼度は低い。また漏洩電界は電力線に接続される機器の稼働状況によって大きく変化するため、上記無線通信に障害が出ないことを、どのような客観的事実によって証明するのかということ自体が、難しい課題となっている。
近年では高速ADSLやFTTHなどの普及が大きく進み、ブロードバンドインターネット接続(ラストワンマイル)の手段としての役割を高速PLCに期待する声は少なくなっている。
高速PLCをラストワンマイル用の手段として使うのではなく、FTTHの足回り(いわゆる「ラスト10メートル」)としてや、家庭内やオフィス内における通信手段として使うという考えもある(宅内系PLC)。
所謂ホームネットワークとしては、無線LAN、電話線によるもの(VDSLやw:en:HomePNA)、同軸ケーブルを使用するもの(c-LINK)もあり、宅内系PLCはこれらの一部と競合することとなる。新たな配線が不要という点はPLCの利点である。しかし配電盤には当然工事も必要で、かつ有資格者しか工事ができず導入にはモデム費用も合わさり割高になることが予想される。
一方、屋内の家電機器の稼働状況によっては、通信速度が遅くなるだけでなく、通信そのものができなくなる場合もあるということ、モデムが高価である(スペインにおける1セットの価格は約2万円相当)こと、屋内のあらゆる電力線から発生する漏洩電波により、屋内ではラジオなどが聞きづらくなるといったこと、屋外電力線への信号の漏れ出しを防ぐブロッキングフィルタが高価であること等が不利な点となる。
これらの問題は、今後は技術的にある程度解決される可能性もあるが、これらを全て考慮した上で、他の通信手段に対する競争力を持てるかどうかがPLCの課題となるであろう。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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