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米国地方議会の
議員数と年俸


青山貞一

再掲載日:2006.12.12
初出:2004.7.24

 少々古いデータではあるが、以下は米国カリフォルニア州サンフランシスコに永住していた友人の岡部一明氏(現在大学教員)から伺った話をもとにした、「米国における地方議会の議員数及び報酬の実態」の報告である。

 日本の地方議員の数とその報酬は、世界一多く高いと聞いていたが、何と、あのサンフランシスコ市議会ですら、以下の写真にあるように、わずか11人の議員しかいない。しかも年俸は当時わずか250万円程度、現在でも450〜500万円とのことだ。さらに、私たちが3年前に現地視察したミネソタ州議会の場合でも州議会議員の年俸は日本円に換算し400万円ちょっとであった。 

参考 スウェーデンの地方議員
「スウェーデンは大きな政府」と言われるが、正確には「小さな中央政府と大きな地方自治体」と言える。 スウェーデンの地方政治家のほとんどが「政治家」とは別にそれぞれの職業をもっている。つまり、兼業議員が多い。(国会議員は半分がフルタイムで働く)政治家としての給料は、公的な会議へ出席した時間で計算される。市議会は月に1度、各委員会の会議が毎週あるとしても、政治家だけの給料ではとても生活できない。

  出典:『スウェーデンの政治 〜デモクラシーの実験室〜』
        (岡沢・奥島編、早稲田大学出版部)

 米国における地方議会議員、とくに市町村議員は日中は議員活動以外を行い、夕方以降に議会活動をすることが一般的となっている。

 
従来から日本では量,質、機能の3面から行政改革が大きな課題となってきた。しかし、本連載コラムで詳しく見たように、財政悪化の原因と責任は地方行政とともに、地方議会にあることは明らかである。

 21世紀の地方議会は、自立と自律、すなわちいかに国に依存せず、地方の将来を自らの頭で考え持続的可能な経済社会を構築するか、それも自然と共生し、資源を循環させながら構築するかが問われる。

 日本では自治体改革とともに地方議会改革が必要不可欠であることが分かるだろう。この一年、衆議院議員、参議院議員の選挙では、国会議員の資質、能力はもとより、改革に寄せる志の高さなどが国民、有権者の大きなな関心事となってきたが、地方議員の場合にあっても同じである。 


サンフランシスコ市議会の市議会議員、全部で11人、年俸は約250である。


ミネソタ州議会の前で。撮影:青山貞一
左は池田lこみちさん(環境総合研究所副所長)、
右は福井秀夫さん(政策研究大学院大学教授)

 


市議はボランティア   岡部一明
                   
初出:Fri, 22 May 1998

はじめに


 米国の地方議会、とくに市議会の議員数は、表1にあるように通常5〜6人、よほどの大都市でも10〜20人だ。報酬も何と数万円のところが多い。その実、市議会議員はボランティアに近いところが多いのである。

 米国には日本のように地方自治法がない。連邦国家であることもあり、州ごとの地方自治が行なわれていると言ってよい。だから「米国ではこうだ」と言えない。

 たとえば、カリフォルニア州では政府法(Government Code)が自治体や地方議会について規定している。ただし、カリフォルニア州内にある約500の自治体のうち、大都市を中心とした約2割の自治体は独自の市憲章をもっている。残り8割の自治体は市憲章をもたない「一般法準拠市」(General Law City)となっている。

(1)市議会議員数

 カリフォルニア州の政府法は、市議会議員数を5人と規定している(Government Code, Sec. 36501)。大都市の憲章市の場合、例えばロサンゼルスが15人、サンフランシスコが11人、サンノゼが10人などである。残りは全部10人以下となる。一般的に言うと人口数10万規模の自治体では7〜8人、10万以下になると5人が標準となる。

表1 米国市議会の市議数
'90 '87
 都市名         人口   市議数
ニューヨーク 7322564 51人
ロサンゼルス 3485398 15
シカゴ 2783726 50
ヒューストン 1630553  −
フィラデルフィア 1585577 17
サンディアゴ 1110549 8
デトロイト 1027974 9
ダラス 1006877 11
フィーニックス 983403 8
サンアントニオ 935933 10
サンノゼ 782248 10
インディアナポリス 741952 29
バルチモア 736014 19
サンフランシスコ 723959 11
ジャクソンビル 672971 19
コロンバス 632910 7
ミルウォーキー 628088 16
メンフィス 610337 13
ワシントンDC 606900 13
ボストン 574283 13
シアトル 516259 9
エルパソ 515342 6
ナッシュビル 510784 45
クリーブランド 505616 21
ニューオリンズ 496938 7
デンバー 467610 13
オースチン 465622 6
フォートワース 447619 6
オクラホマシティー 444719 8
ポートランド 437319 4
カンサスシティー 435146 12
ロングビーチ 429433 9
ツーソン 405390 6
その他            
Atlanta, GA 394017 19
Oakland, CA 372242 7
Sacramento, CA 369365 8
Minneapolis, MN 368383 13
Honolulu CDP, HI 365272 9
Miami, FL 358548 4

 市議の数が少なくなると、市議会の性格が変わるように思う。米国の市議会は、日本の市議会に比らべると「裁判所」のような感じがする。市民が「証言」としていろいろな発言し、それをじっくり聞いて前に座った裁判官のような市議が「判決」を下す、と言うように市議会の決議をしていく。場合によるが、市議会の半分は市民の発言する時間といってよい。

 日本で住んでいたある小都市で1回だけ市議会の傍聴に行ったことがあるが、10万程度の街でそこには25人の市議が居て、私が傍聴席に入って行ったらいっせいにジロッとこっちの方を見た。他に誰も傍聴者がおらず、あやしげなおっさんたちが、隔離された場所で何かやっている、という印象をもった。つまり、日本の市議会(一般に議会)は市民参加の場所ではなくて、特別の集団が集まって何かやっている場所であった。むろんこう対極的に言うと語弊はあるが、比較するとそんな違いがあるように思う。

(2)市議会議員の給料

 サンフランシスコの11人の市議の年俸は24000ドル(正確には23924ドル、日本円にして約250万円である)。この額は、1982年から変わっていない(それ以前は年9600ドル。日本円にして110万円程度)。市の憲章で市議の給料は「ハーフタイム」(フルタイムの半分の勤務)の給料と規定されている。

 カリフォルニアの政府法では、市長・市議の給料を下記資料(Government Code, Sec. 36516)のように規定している。次の基準に基づいた給料にして、この枠以上の給料にする時は住民投票が決めなければならない、ただし年5%以下の増額にする場合は市議会決定でもよい(市議の中から選ばれる)市長への特別手当は市議会決定でもよい、などということのようだ。

人口35,000人以下の市      
人口35,000-50,000人の市   
人口50,000-75,000人の市   
人口75,000-150,000人の市  
人口150,000-250,000人の市
人口250,000人以上の市    
月$300以下
月$400以下
月$500以下
月$600以下
月$800以下
月$1,000以下
註:日本円に換算すると、月給として3万3千円〜11万円と言うことになる。