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福島空港から
日本航空、全面撤退?


青山貞一


掲載月日:2008年7月31日



 このところ、地方空港や航空会社の経営問題に関わる取材が相次いでいる。また独立系メディアで何度か執筆した航空燃料費の超過燃料サーチャージ問題についても取材が来ている。

 私自身、決して空港や航空会社の経営問題専門家ではないが、以前から日本の異常とも思える地方空港の乱立による空港特別会計や地方在世の悪化について危惧してきたひとりだ。

 そんなこともあって、10年ほど前から立地や環境問題だけでなく、空港や航空会社の経営問題にも言及している。

 ごく最近では、大阪市の「都市問題研究」第60巻、第1号、通巻685号に以下の論文を書いている。

地方空港整備と財政・環境問題と解決の方向性
  青山 貞一(武蔵工業大学環境情報学部教授、
           株式会社環境総合研究所所長)


 ところで、皆さんは次のような事実をご存じであろうか?

 日本の面積と米国カリフォルニア州の面積がほぼ同じことはごぞんじであろうが、それぞれの空港の数についてはどうだろうか?

 日本は100空港以上あるのに、カリフォルニア州には16空港しかない。ただし、一部軍事専用空港は除外。

 日本には世界に冠たる新幹線や立派な高速道路がたくさんあるにもかかわらず、である。道路建設問題が囂しく論じられる割には、空港建設問題はそれほど論じられることもなく、地域的に批判されることはあっても、全国レベルでメディアが記事にすることも多くはなかった。

 しかし、上の数字が示すように、こんな狭い日本の中に民間空港が100もあること自体、到底信じられないことである。しかも、地方空港の多くは年間の乗降客が50万−60万人程度の物が圧倒的に多く、当然それらの空港の経営は実質的に破綻している。

 他方、航空会社にとっては、いわば「おつきあい」で地方空港に中型機などを飛ばしていたものの、ひところどこの地方空港も大型飛行機を! と滑走路延長を矢継ぎ早にしてきたことが、結果的に徒になっている。

 中型機でも採算が厳しいのに、大型機をこの狭い日本で飛ばすとなると、非常に経営が厳しくなる。そこにきて燃料費の異常な高騰である。もともと競争的体質からほど遠かった日本の航空会社にとって、今の状況は到底、おつきあいで飛ばすわけには行かない、そんなことをしていたら倒産してしまうまでに経営が深刻化しているのだ。

 自治体側でも、一般会計はもとより公債への負荷が高まり、第三セクターへの財政投融資も来年切れる。さらに空港の建設はもとより維持管理に関しても経営状態は限界にあるはずである。事実、空港を抱える政令市、基礎自治体、都道府県などの実質公債比率など、諸財政指標は悪化している。特別会計も地方での空港乱立で、羽田一極負担に限界が見えている!

 そんななかで私もその昔、空港騒音調査でよく出かけた福島空港から日本航空が全面撤退する最後通告を西松社長が出したそうだ。

 以下はそれを伝える毎日新聞の記事である。

 以下のインタビューでも申し上げたが、自治体側も航空会社に甘えるにも程があると言いたい。そもそも首都機能移転など、政府、自民党のいい加減な計画を真に受け、財政を顧みず、須賀川に空港を造ったのが間違いだが、造った数年後、滑走路を延長している。

 日本政策投資銀行からの財政投融資が切れる来年以降さらに、空港を巡る経営は一段と厳しくなる。
 
 

福島空港:日航撤退、
西松社長が“最後通告” 
知事訪問、路線廃止届け出へ /福島

 日本航空が福島空港からの撤退を表明した問題で、日航の西松遥社長が29日、県庁に佐藤雄平知事を訪ね、沖縄便は31日、大阪便は8月上旬に国土交通省に路線廃止を届け出る方針を伝えた。事実上の“最後通告”で、撤退が決定的となった。【西嶋正法、松本惇、坂本智尚】

 西松社長に加え、沖縄便を運航する日本トランスオーシャン航空の大森徹社長ら計3人が来庁した。面談後、西松社長は報道陣に「燃料高騰で(維持に向け)頑張れる余地がなくなった。県民には申し訳ない」とし、修学旅行については「チャーター便での対応を検討したい」と話した。また大森社長は「路線にかける福島、沖縄両県の思いは理解したが、我々もこのままでは持ちこたえられない。大変残念だ」と話した。

 佐藤知事は「撤退は県民への裏切り。最後の最後まで再考をお願いしたい」と述べ、30日に日航本社(東京都品川区)を再訪し、路線維持を要求することを明らかにした。

 この日、郡山、須賀川両市役所にも日航関係者が訪れ、運航休止の日程を伝えた。原正夫・郡山市長は「要望や署名活動をしてきただけに残念でならない。今後も路線維持に向け活動を続けたい」とコメントを出した。

   ◇

 原油高に端を発した路線撤退は、空港運営や県内経済に大きな打撃となる。武蔵工業大の青山貞一教授(環境科学)は「競争激化や燃料高騰で航空会社の経営が悪化の一途をたどる中で、赤字路線を切るのは当然の流れ。厳しい経営状況から目をそらしてきた福島県にも責任はある。今後は人の交流だけでなく、県産品をアジアに積極的に輸出するなど将来の産業構想をしっかり持たないと、地方空港の先行きは厳しい」と指摘する。

 また、一橋大大学院商学研究科の山内弘隆教授(交通経済学)は「福島は観光資源があり空港のポテンシャルは高いが、生かされていない。使用料減免を含め地元が積極的に支援に乗り出し経済を活性化させれば、利用者の需要を創出することは可能だ」と話した。

毎日新聞 2008年7月30日 地方版
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20080730ddlk07020217000c.html