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あのPC通販旗手、
PCサクセスが倒産!?


青山貞一


2007年2月3日


 秋葉原に本社を置くPCなどのIT系機器、部品、ソフトを直販及び通販するサクセス(東京都千代田区)が、2007年1月31日に事業を停止し、翌、2月1日東京地方裁判所に自己破産手続きを申請した。

 負債総額はおよそ30億円と推定される。

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 サクセスの売上高は、2002年10月期に約55億円だったが、2003年10月期には約109億円に倍増した。さらに2005年10月期には約181億円と毎年倍増を繰り返すなど、IT関連直販及ぶ通販の旗手として、知る人ぞ知る存在であった。


店舗販売で製品を入れお客に渡していたサクセスの「青いポリ袋」

 しかし、サクセスは設立当初から財務内容に課題が指摘されていた。そして、2005年秋、決算の一部に不明な点があることが判明し、関連金融機関への返済も滞っていたとされる。

 東京・秋葉原のサクセス本社前には1月31日夕から、月末締め支払いがなかったことから債権者が詰めかけたが、すでにシャッターが閉じられていた。

 サクセスは1999年8月、ラオックスのザ・コンピュータ館、初代店長杉浦敏雄氏が設立したが、その名を全国区としたのは、言うまでもなく「激安」さにあった。

 製品別、店舗別に実販売価格の比較表示を毎日単位で行うことで有名な価格コムECナビでも、いつも上位にランキングされていた激安常連ショップであった。

 調べによると、サクセスの商品点数はソフト系、家電系を含め約35万点、また月間のユーザーが数100万人を超える国内有数の通販会社にまでのしあがっていた。

 今回のサクセスの自己破産手続きの原因は、ひとことで言えば資金繰りの悪化であろう。

 推定では、

 @販売価格を”激安”とすrためには、売れ筋を現金で大量に仕入れる。
 Aしかし、近年のPC、IT系機器は賞味期限が短い。
 Bそのため、仕入れた製品を売り切る前に、次の廉価な製品が市場に出回ることが多々ある。
 Cその結果、在庫が過剰となる。
 D資金繰りが悪化する。
 E仕入れ先のメーカーへの支払いが滞る。
を繰り返すことになったのではないか。

 もちろん、メーンバンクの支援がしっかりしていれば、激安と言う知名度があり、販売実績もあったので、運転資金である短期借入金が可能であったはずである。

 しかし、実態は必ずしも上記だけが原因ではないようだ。

 PC部品などは、かなり専門性が高く、オタク度も高いひとが購入することが多い。そのためこれだけ通販の量販店が全国各地にあっても、アキバの直販店が繁盛している。

 逆に言えば、通販で日本中どこからでも同じ製品が激安で買えると言っても、現金取引による直販と違い、通販の場合、いつ物が自分のところに届くかが大きなポイントとなる。

 早く確実に届くこと、それに梱包が親切で丁寧な対応となっているかどうかがリピータを増やすポイントとなる。
 
 たとえば、次のブログを読んで欲しい。

 ◆パソコン通販PC-Successでの被害

 私(青山)は、2年前からPC関連でよくサクセスを利用していた。大学の同僚教授から知らされ、WEBで確認した後、電車で約30分で行けるアキバでサクセス本社のショップで購入していた。

 私がよく購入したものは、ハードディスク、液晶ディスプレー、プリンター、プロジェクターなど、いずれも現物が店にあったものばかりであり、通販の場合とは異なっていた。

 ただし、店にものがあっても、持ち帰るには重くて無理なものを宅急便で送ってもらうことは何度かあったが、それほど遅れたり、梱包がいい加減であったことはなかった。

 これらサクセスを実際に経験した私の感想として言えば、サクセスはアキバに星の数ほどあるPC、IT系ショップとして何ら問題、課題があるとは思えなかった。敢えて言えば、店員のお兄さんが一様に愛想がなかったことぐらいか。

 ただ、この分野いくら愛想があっても、価格が高かったり、技術的知識がなければ何にもならない。

 ......

 私が今回のサクセスの倒産を察知したのは、実は価格コムの口コミ情報を見ていたときのことである。

 サクセスは価格に関しほとんどどの製品で上位にランキングされていた。しかし、価格コムにある店舗の「評価」、すなわち

またこのショップを利用したいですか?

では、何と大部分の製品でこのショップを再度利用したいと言うひとは良くて30%程度であったのである。

 以下はその一例である。

 註:価格コムはすでにサクセス関連情報をすべて削除している。

 

出典:価格コム


 業界新聞などでは、月間のユーザーが400万人を超える国内有数の通販などとかき立てていたが、ここ1年の実態はと言えば、全国の通販ファンやオタクから、サクセスは、かなり早くから見放されていたのではないかと思える。

....

 2006年9月、サクセス支援のため、創始者の杉浦氏が再度社長に就任し経営の立て直しをはかるため、まず取引先と銀行に支援を要請し、資金繰りの改善に尽力したようだが、構造的な課題は改善されることなく自己破産を決めた模様だ。

 現金で大量に仕入れることで激安とする方法は、秒進分歩のIT業界ではいわば時代遅れであり、リスクが大きすぎるからだ。 

 言えることは、製品が同一で価格の激安さで競っている現在のPC・IT量販店の場合、いかに売れ筋を読むかが大きなポイントとなる。また、上述のように、直販はもとより通販の場合でも、購入者はいかに早く手元に製品、部品が届くか、すなわち価格とともに安全、安心がきわめて重要な要素となっている。

 ただ安くでもやたら時間がかかったり、何度となく「そば屋の出前」を繰り返す量販店は、二度と使いたくなくなるのである。

......

 とはいえ、どだい自分のところで製造しているわけでなく、IT時代の流通業者に過ぎない量販店にとって、人件費、管理費などで合理化したとしても、製品価格を激安とすることには限界があることも確かである。

 製品価格を下げている大きな理由は、もちろん大量生産、大量販売によるコストダウンにあるが、ここ数年、台湾、韓国、香港などのアジアNICSに加え、中国が本格的にこの分野に参入しており、まさにとどめのない価格競争時代に入っていることがある。

 しかも、価格コムなど、製品別、店舗別の実販売価格が毎日、消費者に表示されることが当たり前となっている。

 今後、サクセスのように資金繰りが悪化することで倒産する通販店が増える可能性もある。ただ激安だけでなく、消費者の信頼をいかに得るかが問われるだろう。そのなかには、今まで述べてこなかったが、不具合製品、部品への対応、修理への対応などが含まれることは言うまでもない。